スキル

百人一首ってなんだ...?


「これにて、神授の儀を終了する。」

戸惑っている間に、神父さんは奥へと歩いて行った。


「スキル、なんだった?」

教会を出て歩きながら、アーニアはリックに尋ねる。

「百人一首って、知ってる?」

「知らなぁい、説明にはなんて書いてあるの?」


様々な情景を五七五七七で表す、趣の鏡。


この説明に頭を悩ませながら、家に着いた。

何はともあれ、スキルの鍛錬をしなければ。

2ヶ月後にはドミニオン学院の入学試験が待っている。


ドミニオン学院

このドミニオン大陸で最も大きな学校。

様々な分野で偉業を残した偉人たちはみなこの学院を卒業している。あの勇者ですら卒業生であり、今では入学することが働くうえで必須のステータスとなっている。


そんなドミニオン学院の入学試験は筆記と実践試験に分かれており、総合的に判断される。

実践試験に臨むため、皆スキルを発動して鍛錬を重ねる。スキルの成長は、スキルの使用によってのみ成長するからだ。


例えばアーニアの剣禅一致はスキルレベル0で「瞑想」を覚える。

瞑想を続けることでスキルが成長し、スキルレベルを上げると使用できる技が増えていく。


リックの百人一首はスキルレベル0で

「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花」を覚えた。

技の説明は、

「寒い冬を耐えて、今を盛りと咲き誇る花」

正直見当もつかない。


「リック、ご飯できたわよ。」

結局何も手掛かりを掴めないまま、夜を迎えた。

「リック、どんなスキルだったんだ?」

父が尋ねてくる。


アーマン・シュリンク

僕の父で、スキルは縮めるシュリンカー。特筆すべき技は無いが、アイデアと日々の努力で冒険者として活躍した。


「百人一首、だったよ」

「百人一首?なんだそりゃ?」

両親は首をかしげる。

「様々な情景を五七五七七で表す、趣の鏡。なんだって。」


その瞬間、2人は顔を合わせて大声で笑った。

「リックにピッタリじゃないか!」

「ええ、ピッタリよ!」

「よし、今日はめでたい日だ!もう一杯飲むぞぉ!!」


初めてのお酒は苦く、美味しいとは言えなかったが、父と交わす初めての酒に、心から酔いしれた夜だった。

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