9、入学式。そして部屋割り。
両親と別れた俺は受付を済ませ、席に座る。魔族も多くいて異世界なんだなと改めて思う。
そうして入学式は始まった。
「皆さん、はじめまして! 私は王都魔法戦術学園学園長のユーフォトレス・ダージアだ。」
学園長は青年だった。
「若造に見えるかもしれないが私はエルフでね。こう見えてもう2000歳だ」
エルフの学園長って大体女の人のイメージあるんだけど……。まぁいっか。
「皆さんは戦闘職を賜り、ここにいる。ここは魔法戦術学園だ。しかし、学ぶのは戦闘のことだけではない。皆さんには学園生活を通して自分の進む道を決めてほしい。私たち教員はそのための手助けをしたいと思う」
つまりはここでは戦闘職だけでなく生産職の知識も学べると言うこと。
「私たちは君たちを歓迎する! 自分の思う道へ進むがいい!……以上だ。」
拍手が響く。
「これで入学式を終了いたします。この後30分後に寮の案内がございます。それまでに生徒はここ、第一体育館に集合を、保護者の方々はおかえりいただけると幸いです」
入学式は終わった。
「ル゙ークゥゥゥ!! 俺と一緒に帰ろーよぉ!!」
父のキャラ崩壊。俺とか言っちゃってるし。ああ、他の人からの視線が痛い。マジで無視したい……。
ゴツん。
えげつない音と共に父が倒れる。
「ほんとごめんね。この人には言い聞かせておくから。……頑張って、応援してるわ。」
母は笑いながら白目を剥いて倒れている父を引き摺っていった。怖……。
母には絶対逆らわないと俺は今日、決意した。
――――――――
「では、部屋割りを始めます。ちなみにですが、この学校は貴族だけ特別扱いする予定はありません。よって寮は二人部屋ですが、貴族と平民の組み合わせもあり得ますし、平民同士、貴族同士になる場合もあります」
家の力で圧力をかけることはこの学園ではできない。圧力をかけそうな貴族は入学を拒否されるし、もしあったらすぐに退学となる。もちろん平民だって同じだ。
「このくじをひいて出た番号が部屋番号です。男女に分かれて並んでください。」
決めるのはクジなんだ。公平だなぁ。
一人一人クジを引いていく。俺の番になった。
俺の番号は、711だった。
「700番台の人はこちらに。」
よし、行くぞ。
俺の部屋は7階の角部屋だ。同居人は誰なのか。
はやる気持ちを抑え、俺はドアを開ける。
ガチャ。
ベットと机が一つずつ置かれた殺風景な部屋。
その真ん中に、黒髪で獣耳と尻尾がある男がいた。
男は振り向いて、俺に気づくと立ち上がっていった。
「どうも、フラメル・クンベです」
「ルーク・リコルドです」
フラメルは俺の名乗りに驚いたみたいで、俺に聞いた。
「リコルドと言ったらあの公爵家の?」
「おそらくは」
あの公爵家ってどの公爵家だよ?まあいいや。
「クンベ殿は魔族なんですね」
「ああ。俺、、私は黒狼族と人族のハーフだ……です」
黒狼族は人の言葉を話す(魔族だし当たり前だが)二足歩行の黒い毛並みの狼である。
「そうなんですね。……敬語使い慣れてないようですね」
「すいません。敬語なんて普段使わねー、、ないし、苦手なんです……」
わかる。俺も実は敬語はあんまり得意じゃない。なのに公爵家でしかも次期当主なんだから敬語で喋りなさいと父親から言われて仕方なく使っている。
「別に敬語なくてもいいですよ? そういうのは気にしないので」
「でも、リコルドさんは貴族だし……」
言い淀むフラメル。無理に敬語なんて使わなくてもいいんだけどな。同級生だし。
そうだいいこと思いついた。
「なら俺も敬語やめる」
「えっ!?」
目を見開いて驚くフラメル。
「俺もタメ口の方が話しやすい。それに君も気にしなくて済むだろう?」
「でも……」
律儀だなぁー。俺がいいって言ってんだからいいじゃん。
「この学園では貴族と平民で態度を変えないって話だろ?なら敬語だっていらないじゃないか」
フラメルは完全に沈黙してしまった。
「あと、俺のことはルークでいいぞ」
「……なら、俺のこともフラメルって呼んでくれ」
やっとタメ口で言ってくれた。よし!
「分かった。よろしくな、フラメル」
「……よろしく頼む。ルーク」
俺達は握手をし、笑い合った。
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