4、職業発表、めっちゃ緊張する…。byルーク



 時が過ぎるのは早い。

 俺が前世の記憶を思い出してから一ヶ月経とうとしていた。


「お誕生日、おめでとう!」

「ありがとうございます、母様」

 

 そう、今日は俺の誕生日。そして待ちに待った職業発表である。


「ご飯を食べられましたら、身を清めていただきます。それが終わり次第教会に行き儀式を行う予定です」

「はい、わかりました」


 メイドから今日を予定を聞きながら朝ごはんを食べる。

 ちなみにハンバーグではない。……ハンバーガーだ。しかも結構厚めのパティの。

 料理長は料理に肉を入れなきゃ気が済まないのだろうか?


「本日の料理はいかがでしょう?」

「……とても美味しいです」


 俺はもう諦めた。美味しいのは事実なんだけどなぁ。


「ふぅ……」

 

 ハンバーガーを食べた俺は身を清める。とは言っても普段より丁寧に体を洗えばいいらしい。

 ……どこまで洗えばいいんだろう? わかんね〜。とりあえず俺は普段の倍かけて体を洗った。

 

 風呂に入った後、俺は着物の様な服を着させられた。

 死人とか幽霊が着そうな服だな。なんか心配になってきた……。


 着替えた俺は、玄関へ向かう。そこにはすでに両親が揃っていた。すいません。お待たせしました。


「では行くぞ」


 父が玄関のドアを開けた。

 ドアの向こうにはアニメの未来の姿とかでありそうなタイヤがなく、少し浮いてる自動車があった。俺たちはその車に乗って教会へ向かう。この車、自動運転でしかも浮いているので揺れが全くない。めっちゃ快適!どんな理屈で動いてるのだろう?魔法?科学?気になるなあ。素材はなんなんだろう?

 

 そう考えているとあっという間に教会に着いた。いやあ、快適な時間だったな!


「いつ見てもここは綺麗ね」

 

教会はステンドグラスで彩られてとても煌びやかだ。前世だったら観光スポットになってそうだ。しかし父が言うには、ここは一般人は職業授与の儀式以外は立ち入り禁止とのこと。もったいない。

 

 母が突然こちらを見る。

 

「もしかしてルーク緊張してる?」

「……してます」


 気楽そうに見えるだろう。そんなことはない。内心ドキドキだ。

 

 「そんなに難しく考えなくていいんだぞ?」


 父が揶揄ったように言ってくる。

 無理だろ!将来に関わる大切な儀式だぞ?昨日だって緊張で全然寝付けなかったし。おかげで寝不足だよ!

 そんなことを思っているうちに儀式が始まる。ちょっと待ってよ!心の準備させてよぉー!

 

「今から職業授与の儀式を行う! ルーク・リコルド、壇上へ上がるように!」


 髭の生えたおじさん……ゴホン。聖職者の人がこっちを見てきた。

 俺は両親に生暖かい目を向けられながら壇上を上がる。ああ、緊張する……。


「ルーク殿は今から血をこの盃に入れていただく。そこに浮かび上がったマークが貴殿の適性職である」


 机にあるのはナイフと肩幅ぐらいある液体が満ちた大きな盃、そして水晶だった。

 俺はナイフを手に取ると親指に切り傷をつける。後は血を盃に垂らしたら完了だ。

 ピチョン……

 血を垂らした瞬間、盃の中の液体が真っ赤に染まる。

 

「戦闘職、か……」


 赤なら戦闘職、青なら生産職と言う風に液体が染まることになっている。その後が職業発表だ。職業のマークが水面に浮かんでくるらしい。

 俺はゆらゆらと揺れる水面をじっと見つめた。

 その水面に少しずつ何かが浮かび上がってきた。


「弓……!」


 そう。揺れる水面には弓のマークが浮かんでいた。

 

「ルーク・リコルド! 貴殿の職は『弓使い』である!」


 聖職者の人が声高らかに宣言した。その声と共にこの場に煽れんばかりの拍手が降り注ぐ。


「おめでとう、ルーク!」

「ああ、ルークも成長したんだなぁ……!」


 母は誇らしげに笑っていた。父はすでに感極まって泣いている。俺もなんか誇らしい気持ちになってきた。

 弓っていうのもいいよな。カッコいいし。でも俺、弓なんてほぼ触ったことないぞ?父の方針で武器は大体は経験したけど、数時間ずつだったし。弓だってそんなうまかったわけでもない。むしろ剣の方が得意なぐらいなんだけどな?

 聖職者の人が続けた。


「次に魔法属性の儀式を行う!」


 魔法のこと、すっかり忘れてた。

 戦闘職の者は魔法属性を調べる必要が出でくるのだ。これで戦い方が変わってくるし、職業と魔法属性の登録は必須だからだ。

 俺は聖職者の人に勧められるまま盃の隣にある水晶に手をかざした。その瞬間水晶は、ぱああっと光った。


「緑と白……?」


 水晶は緑色と白色で交互に光っていた。

 緑はイメージ的に風か植物だよな。白ってなんだ?光とか?


「うむ。風属性と無属性か」


 無属性?あの身体強化とかのやつか?

 職業については学んだが、魔法については職業発表後に戦闘職だった場合のみ学ぶことになっているので全く分からない。

悩む俺を横目に儀式は終わりを迎えた。

 

「これで儀式を全て終了とする!」


 その声で、解散する人々。

 いや、ちょっとは説明してくれよ!

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