3、俺の目標は簡単に言うとサブキャラとして生きていきたいってこと。



俺の目標はひとつ。

 今世で楽しく生きていくことだ!

 

 ラノベだったらすごい力もらって無双するんだろう。でも、いくら転生したからって俺は主人公みたいにしたくない!あーゆうのは空想だから面白いのであって自分自身がそうはなりたくないのだ。

 俺TEEEEとかいらんからな。マジで。

 程よいサブがいい!


 喜ばしいことに俺は公爵家の長男。主人公は大体平民か没落貴族だ。主人公のかませ役になる事だろう。

 フラグじゃないよな……?

 まあ、多分大丈夫だろう。


 父の言いつけ通り今日は座学のみになった。ちなみに昨日は、雨の中素振りしていた。うん。我ながら馬鹿だ。

 

「人族と魔族は、10の時に神によってその者に相応しい職業を伝えます。もし生産職の場合は魔法科学学園へ、戦闘職の場合は魔法戦術学園へ入学し、それぞれ学ぶのです」


 専属の家庭教師がそう教える。これらはこの世界の常識だが俺は来月10歳になるから、再度確認の意味も込めてだろう。

 

 ちなみにこの世界は魔法と貴族はいるが、現代のビルが立ち並ぶ魔法と科学が混ざった近未来の感じだ。

 とは言っても人が住んでないところは魔物が住んでいる。だから戦闘職はその魔物との戦いが主な仕事だ。

 生産職は言わずもがな。武器の作成から農作まで多岐に渡る。


「ルーク様は文武共々優秀ですので、どの職業でも活躍される事間違いなしです!」


 嬉々として話す家庭教師。なんか照れる。大人になってから褒められることなんてほぼなかったしなぁ。


「ルーク様はどの職業に就きたいとお考えですか?」

「えーっと……」


 特に考えてこなかった。前世を思い出す前も。んー……。発明家? 科学者? 前世の知識を生かすとしたら研究職だよな。でも、戦闘職でもいいしなぁ。


「悩みます……」

「わかります。私もルーク様ぐらいの時は自分がどの色につくか想像したりしたものです」


 俺もしたなぁ。警察になって悪者をやっつけるみたいな妄想。警察って逮捕が仕事だし、結局教師になったけど。

 

「続きを話しましょうか。……まず、魔法です。これは戦闘職だけが使えます。ですので生産職の方は武器を持つことはできても魔法を使うことは出来ません」

 

 そう。この世界では生産職は全く魔法が使えない。とは言っても文明の力で全く不便しないが。むしろ戦わず、命の危険が少なく一定の仕事を得れる生産職の方が将来安泰だ。俺の知ってるラノベだと考えられないな。ラノベだったら生産職イコールハズレスキル。即迫害だ。


「神に職業を決められたからといってその職業に就かなければならない訳でもありません。ただし、その職業で成功するとは限りませんが」


 戦いが怖いから生産職に就くことも、戦闘職に憧れて就くことも可能でそれに関する法律もある。しかし戦闘職に就きたいならば厳しい適性審査に合格する必要がある。その逆で生産職に就きたい場合は魔法科学学園に入学する必要が出でくる。


 「つまり、職業の提示は適所を教えてくれるだけで選択するのは自分自身と言うことです」


 大体の人は提示された職業に就く。でも、それ以外の道もある。


「本当になりたいものを持っていることはこれからの人生で大切になってきます。だからこそ、自分で決める事がたいせつなのですよ」

「そうですね……」


 いいことを言うなぁ、この人。この家庭教師、昔からめちゃくちゃ名言を言う。主人公の師匠みたいなレベルで名言を言う。なのに俺、この人の名前忘れた。絶対キーパーソンな気がするんだよな……。誰だっけ? 本気で出てこない……。しょうがない。聞くか。


「あの……」

「質問ですか?」

「はい。えっと、そのぉー。授業に関係ないのですが、名前教えてもらっても……」


 家庭教師は目をぱちくりさせた。


「私の名はリオサ・プロテアですよ。忘れちゃいましたか?もしや……体調が悪い……?」


 家庭教師……リオサは喋るうちに段々顔が白くなり、とうとう立ち上がった。


「旦那様に伝えなければ……!」


 まずい……!

 

「ちっ違うんです!! 元気なんで! 名前が思い出せないから聞いただけなんです!」


 俺は必死に弁解する。でもリオサはさらに顔が白くなる。


「まさか記憶喪失……? 今すぐ病院に!!」

「違うんですってー!!」


 前世の記憶を思い出しただけだから!! ただそれだけなんですよ!


 ……いや、それだけってなんだ?大体、前世の記憶を思い出すことってかなり異常事態な気もする。 ……いや、今はそれどころじゃない。父に心配される方がめんどい。


「たまたま名前が出てこなかっただけですので! 記憶はちゃんとありますし!」

「ですが……!」


 

 結局、家庭教師、リオサとの押し問答はその日の夕方まで続いた。


 俺はなんとか理解してもらえたが、しばらくは心配げな顔をされることとなる。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る