第17話  銘家の騒動─2

銘家の騒動─2


 クソッ!クソクソクソクソクソ!クソッッッッ!


 何であんな太った醜い男を連れてきたんだ有栖!あの男のせいで俺のプライドはズタズタだ!


 しかもあの後クソババアに謹慎を命じられて部屋に閉じ込められた!


 この部屋から飛び出て今すぐ報復に走りたいが、あいにくコールプローラー無しの状態で俺の相棒がこの部屋の結界を破れなかった!


 なんで銘家次期当主のこの銘醸地がこんなミジメな思いをしなきゃならんのだ!楠間と言ったか……あの男を何とかしてぶち殺さなければ頭が可笑しくなりそうだ!


「フフッ荒れて居ますね醸地さん……」


「だ、誰だっ!誰か居るのか?!」


 何だ今の声は……いったい誰だ?ここにはクソババアとアレの息が掛かってる人間しか来ない筈だが……


「失礼、わたくしめは庭院、庭院ダロスと申します。我々の王が貴方様に興味を示されております。良ければご同行願えますか?」


 な、なんだコイツは……いまどこから現れた?


「警戒なさらず……あぁ、私の目的を言えば多少は共感してくださると思いますね。私の目的は夜波奥渡、彼への復讐です。そしてその夜波奥渡は今日貴方の敵である出臼絵楠間へコールプローラーをよこした人間であり、奥渡と楠間は協力関係にあります。ここまで言えば分かりますね?」


「お前の王とやらの所まで早く連れて行け」




──────────




学校───



「えー、今日はお前達に転校生を紹介する。入って来なさい」



 先生がそんな事を言って居るので教室の前に目をやると銘有栖がドアを開けて入って来る。


 少し教室を見渡した後に楠間の丸い身体を見つけたのかパァッと花が咲くような笑顔になる。


「楠間様、私貴方様を追いかけてきました!これからよろしくお願いしますね!!」


 言うが早いか楠間に駆け寄り抱きつく。


 うんうん、ラノベみてぇな青春してるな。胃が痛くなりそうだからワイはゴメンだが傍から見てる分には面白くて最高なんだ。絆が深まるんだ。


「あのー奥渡どの……助けて下さいませぬか?……」


「あ、銘さん。彼は学校の中でも一目置かれる存在だから彼に学校の案内をしてもらうと良いよ。みんなに貴方は楠間のモノだって分からせないとね」


「ええ、ありがとうございます。奥渡さんは気が利きますね」



───昼休み───



「奥渡っ!おぬしっ……学校じゅうの人間に嫉妬と疑念の目でみられましたぞ!あんな美人がアレに?いったいどんな手品を使ったのか?みたいに顔に書いてる奴らが山のように!!に、仁倉どの!彼は貴女の監視対象なんでござろう?何とかして下さらぬか!!」


 ああ、仁倉さんは今朝の顛末を報告書に纏めてるよ。一応アレは魚目蛇魂とか諸合周防対策に貸してくれてる奴だから目的外の使い方したらダメらしいんだよねぇ


「ああ、その事なら大丈夫よ。銘有栖さん、これを」


 仁倉さんがトリガーの付いた謎の装置を差し出す。………ってそれはコールプローラーの召喚器では?



「今朝、貴方のお兄さんが乗り回していたコールプローラーを回収して登録した召喚器です。銘さん貴女にこれを」


 銘有栖が召喚器を受け取りニンマリしている……コレが楠間様の剣……とか言ってるよ。やっぱりコイツもちょっと狂ってるかな


「頼もーっっ!このクラスに銘有栖とかいうクッソ美人が転校して来たって!!!私は五良児凛!!夜波奥渡様の第一のしもべ!!奥渡様のしもべになりたいなら私を倒してからにしなさいっ!!!!!」


 あっ、最近会った狂ってる奴が……


「なんですか貴方、いきなり失礼じゃないかしら?しもべ?なんの冗談かしら?私は出臼絵楠間様の伴侶になるためにこのクラスに来たのよ?」


 教室の温度がめちゃくちゃ下がってるんだが?あと有栖目当てでクラスに押しかけて来てた数多の男子の目がまるで人を殺せそうな……


(おい、あの凛って後輩ちゃん、奥渡のしもべらしいぞ?)

(有栖ちゃんが楠間の伴侶………?)(伴侶ってなんだ?)(お嫁さんって……コト?!)(奥渡のしもべってどういう事なんだ?)((#^ω^)ピキピキ)


 あっ、やっべ、この際だ。火を大きくするか


「久安、そういや妙子が借りてた漫画返したいからお前ん家に行くって言ってたぞ?」


「てめっ……ヘイト管理のつもりか?!自己主張しないから分かりにくいが、仁倉さんがお前の近くに居る事はまんざらじゃないと思ってるんだぞ?今度食事にべぶらっっっ!!!!」


 久安が絵本のがらがらどんみたいなムキムキの黒い雄山羊にぶっ飛ばされて廊下の窓から落ちる。あっ、落下直前に優しいつむじ風が空気のクッションになって軟着陸したな。


 妙子の方を見てニヤニヤしてると次の瞬間俺の身体は教室の窓から投げ出されていた。地面にぶつかる!と思ったらギリギリで黒山羊に襟元を咥えられ宙ぶらりんになる。ハッと教室を見上げると顔に手を当てて耳を真っ赤にしている仁倉ちゃんが居た。


「ありがとうな!仁倉!!こんどコメダ珈琲でシロノワール一緒に食おうぜ!!!」


 俺は黒山羊にぶっ飛ばされた

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