第13話 分かったよ!

13話 分かったよ!




 生命からがらホビーショップから退散した俺はとりあえず帰路につく。


「ねぇ~!ご主人様〜!どうしてそうやって私から逃げるんです〜!」


 クソッ!この女、後輩だからと見逃していたが我慢の限界だ!


「そのご主人様っての、カンベンしてくれよ……最初はからかってるだけだと思ってスルーしてたが、なんでそんなに付きまとうんだ?」


「それは貴方が私のご主人様だからですよ〜」


 にへら、と笑いながら楽しそうにする凛。はぁ……なんでこうなったんだか……そうでなくても蛇魂に何か逆恨みされてるっぽいから今は気が立ってるのにさ。


「何故か知らないが、俺はクラスメイトに狙われてるんだ。いつかお前にもまた危害が及ぶ可能性もあるし、付きまとうのやめてくれよ……」


「だっダら!!俺ガ貰っでボ良イ゛よなァ゛!!!」


 なにっ!!駐車場の自動車がドロリと形を変えて異形のコールプローラーが姿を現す!


 粘液が人形になった5メートル程の巨人の表面にはウロコが浮かび、貌の無い頭部には深海魚の様にガバリと開いた大きな口だけが浮かぶ。


 自動車からいきなり手が伸び、五良児凛を掴み丸呑みにする!!


「てめぇっ!昼間の後輩くんか!!人質使わねぇとマトモにケンカも出来ねぇのかよクソが!」


「あァ゛!!凛ぢゃん!!バゲボノがらどりかえじだ!リ゛ンじゃん!ボグの!!ずっどいっじょ!!」


 俺の声が聞こえていないのか、鷲掴みにした凛をガバリと開いた巨大な口で丸呑みにする宇留田塁。


 「深淵の腕ェ!!」


 俺の右腕にメンダコが絡み付き、手甲を形成する。


「てめぇなんざコールプローラー無くてもシバけるんだよォ!」


 俺は握り拳を粘液魚人に叩きつける!


 ブニュン………


 な、なんだ?!この感触!水風船を殴った様なにぶい感触は!


「ぶははははばはば!ぞうだ!ぞうだ!凛ぢゃんいじめだ!わるい゛やづ!やっづげなぎゃ!!」


 粘液魚人が手足を振り回す!クソッ!デタラメに振り回すもんだから近づけない!


「ぢねっ!ぢねっ!いぢめだ!ぎらい!!」


 次第に貌の無かった頭部に宇留田塁の表情が浮かぶ。


 2度、3度と拳を叩きつけるが、効いているのかいないのか、お構い無しに暴れる粘液魚人。


 どうする……どうすれば良い?!……


「そこの君!早くこちらへ!!」


 っは?!アレは?!初めて魚目蛇魂に襲われた時に戦っていたコールプローラー?!本職の探索者か!!


「探索者さん!こっちです!アレの中に女の子が囚われて居ますから腹部には攻撃しないで下さい!!!」


「了解した!!私が救おう!!」


 獣の精霊を相棒にしているのか、ふさふさとした毛皮を纏ったコールプローラーが手に持つ短めの剣で斬りかかるが、刃が鱗の表面を滑り上手く攻撃を加えられないでいた。


「じゃまだ!!!!」


 毛皮を掴んで探索者のコールプローラーを引き倒すとぞぶりと音を立てて喰らいつく粘液魚人。


「ぐあああっ!」


 獣のコールプローラーに乗る探索者から悲鳴が木霊する。


 みるみると実体化されていた血肉が食いちぎられ、素体であるデッサン人形の様なのっぺりしたコールプローラーが力なく崩れ落ちる。


「おい!アンタ!そこ代われ!!」


 気を失っている男を引きずり出し、操縦桿を握る。


「メンダコっ!!行くぞ!」


 手甲の姿を解くとコールプローラーと一体化し触手を頭髪の様に生やしたトーガを着た巨人が立ち上がる。


 「ぬおりゃっ!!」


 メンダコのコールプローラー……いや名前を付けるか。このコールプローラーはオクトメンダコだ!


 「くらえっ!!」

 

 立ち上がる勢いのまま、粘液魚人に殴りかかる!


 だが、中に粘度の高い液体が満たされた皮膚は衝撃を吸収するのか、打撃では効果がイマイチだった。


「ぐがぁぁぁ!」


 粘液魚人が先ほど獣巨人を喰った時の様にかじりついて来る!


 それなら………触手でっ!


 俺は肩に齧りついている為に至近距離にある粘液魚人の首に頭から生えている触手を巻きつける!


 締め上げろ!力の限り!


 両腕で粘液魚人の両腕をつかむ。がっぷり四つの状態で触手でギリギリと首を締め上げる!だがコイツ、魚だから首が無くてヌメヌメ滑る!!


「ぐばばばば!ごいづバガだ!ざがなはエラごきゅうだがらクビじめでも息はデぎるんだ!!」


 ッは!そうだった!!


「ありがとな!助かったよクソ野郎!!」


 首を絞めていた触手を解き、エラの中に突き立てる!!中の器官に巻きつけるエラを引き抜く!!


「いぎゃああああああああああ!!!!いだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだい!」


「オラッ!ダメージ超過で実体化を解け!凛を解放しろっ!」


「いだいいだいいだい!どうじでみんないじめるの!!!りんぢゃんがほじいだげなのに!!」


「お前……失敗したんだよ!嫉妬するのは良いがやり方があんだろ!!ファンブル!!!」


 エラから拳を突き入れ、頸の骨を体内から殴る!!骨は一般的なコールプローラーだったのか砕け、頭がダランと落ちる。


 次第に鱗をたたえた粘液の身体の実体化が解け、腹部のコクピットには気絶した五良児凛と……あ?宇留田塁ってヤツは……


 ふとくずおれた骨格状態のコールプローラーの頭部を見るとコールプローラーの頭部に昼間に見た宇留田塁の頭が埋め込まれていた。


 ……………いい加減にしろよ………!!!


 あぁ、分かったよ!分かりましたよ!!!

 諸合周防、魚目蛇魂、庭院ダロス、コイツらが俺に対して何かを企んでるのは分かったが、こんな事までするなんてな!


 良いよ。そのケンカ買ってやる。


 


──────



読んでくれてありがとうございます(/・ω・)/

良ければフォローや☆をよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る