第12話 気に入らない奴

12話 気に入らない奴



「勝てるとまでは思ってなかったが、傷を負わせる事も出来ないとはな」


「ハい!もうしワけありまセン!諸合周オウサマ!!」


 はぁ、相棒の分体に食わせすぎたか。

 もう脳ミソがスカスカだなコレは……

 だが、これで感覚は掴めた。我が組織を編成する礎となれてコイツも本望であろうな。


「周防様、ソレはいかがなさるので?一応連れ帰りましたが、もう中身はほとんど分体で満たされてる水風船でしたよ?」


 分かっている。どこまで食わせれば自我を残しつつ従順になるのかの試金石だったからな。


 感情の増幅、それによる視野の狭窄。人を操るのにこれほど都合の良い事は無い。


「ゲハハハハハ!じゃあそろそろアレを動かすんですかい?!」


「まぁ、そう慌てるなよ蛇魂。敵は奥渡だけじゃない。今はまだな。街の外に居る大人の職業探索者にもバケモノはいる。いずれは我らの糧になるとしても現時点では我々にとって脅威に他ならない。」


「戦の勝敗は準備の時点で8割がた決まる。と言った言葉もありますからね」


 ダロスが前髪をかき上げ我の言葉を補足する。そう。まさにそう言う話だ。はるか旧神の時代ではまだ我は若く王となったばかりであった。


 いくら新たに君臨した王とて、王として神としての年季が違いすぎたのだ。


 だからこそ遥かな時を待った。神秘の時代が終わり、科学の時代もまた終わり……巡って再び神秘の時代が訪れたのだ!


 此度の時代こそ我の時代よ!誰にも邪魔はさせぬ!何にも指図されぬ!自由な千年帝国を築くのだ!


 まずはその為にも、忌々しき旧き神。その因子を受け継ぐあの夜波奥渡を葬らねばならぬ!あれが居ては我らに自由は訪れぬ!!


 因子が芽生え、おぞましい意思が発現する前に亡き者とせねばならぬのだ!!


「蛇魂、お前の持ち帰った人形、使わせて貰うぞ」


「仰せのままに。大将!なんならウチの半魚人も付けましょうや!」


「それは良い。お前のウロコとキバは我には無いモノだからな」


 その後、暗がりには引きつった様な宇留田塁の悲鳴が木霊していた………



◇◇◇




「ぬおっ!それは拙者の推しのカード!それは良いモノですぞ!!」


「俺は普段プラモが主でカードはお前が買ってたからなんとなくついでに買っただけなんだが………譲ろうか?」


「なんの!拙者そのカードはスクリューに入れた美品と保存用布教用自分用と集めておりますからな。むしろ対戦相手が欲しいのでデッキを組んでくださらぬか?」


「光のカードゲーマー、存在していたのか………?!」


 俺達はファミレスを後にして買い物をしていた。だって真面目な話とか肩こるしなー


「ご主人様ご主人様!こんな感じの姿が良いんですか?!帰りに布買って帰りたいので寄って下さいね!!!」


 キラキラとホロ加工された美少女イラストの描かれたカードを俺の手から奪い取り観察するこの凛という女、自分のした事をわかっているのだろうか?!


 ホビーショップの店内温度がめちゃくちゃ下がって寒気がするというか、他の同志達が凄い目で俺を見てるんだが……


 あっ、いつもポイントを使うか聞いてくれる新作美プラの良さを語ってくる店員さんが、見たこと無い様な怨念を宿した目でこっちを見てる!


 話した事無いけど、食玩コーナーでいつも見かける戦隊やライダーのフィギュアを集めてるおじさんの背中に幽鬼が浮かんで見える?!


 ヒエッ!ミニ四駆コーナーのヌシ(自称)なおじさん、いつも使ってるドライバーをまるで今から突き刺さす相手を見つけたかのような素振りに入ってる?!


「あ、あのですね凛さん?もうちょい声を小さくするか、店の外で待っていて頂けると自分としてはものすごく助かるので、黙って向こうに行っててくれませんか…………?」


 俺は五良児凛に震える声で周りにいる同志を刺激しない様にと凛の退去を勧める。


 はやくっ!一刻も速くここから去れっ!

 間に合わなくなっても知らんぞーー!


「でも、ご主人様の趣味を把握してないと、どんなものだと喜んでくれるか分からないじゃないですかー!私が好きな格好してあげますから推しキャラ教えて下さいよ〜!」


 ケラケラと笑いながらその様な事をのたまいあそばされる凛サマ。おお!あなた様はなぜそのような試練を我にお与えになるのか!!


 幽鬼の様なオーラを出していた店員さんが相棒のグレムリンを召喚した。なんて貌してやがる……まるで夜叉じゃないか!


 食玩コーナーのおじさんはデフォルメされたゴブリンを召喚して……え?!精霊との一体化?!俺でさえ武器にして纏うのが精一杯なのにゴブリンはおじさんに吸い込まれておじさんの肌が緑色になり耳が尖る。


 ミニ四駆コーナーのヌシ(自称)は……火車を召喚して身体の周りをぐるぐると走らせている!!


 ここに居ると危険が危ないっ!!


「久安!楠間!ちょっと急用を思い出した!サラダバー!!」


「あっ!待って下さいよご主人様ぁ〜〜」


 手に持ってたモノを置いて店から出る。ヒエッ!足元にドライバーが刺さって……うわッ!手裏剣みたいな鋭さでレジ横のポイントカードが飛んで来てる?!それに何か緑色のオーラみたいなモヤが追って来てるんですが?!


 か、勘弁してくれよ!!


「俺はそんな呼び方許してねぇからなぁ〜〜〜!」



─────


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