第11話 教団のつどい
11話
「久安、助かった。お前が目星つけてなきゃ俺は仁倉を殴り飛ばしてた」
そう、中身の入れ替えについては「なんか怪しい。ウィスプの熱感知じゃ捕まってる仁倉さんから体温が感じられない」と事前に久安に聞いていたからだ。
先手必勝とばかりにいきなり殴りかからずに、相手の茶番に付き合ったのもそれが理由だな。
「俺のウィスプに感謝しな?じゃないとお前女を殴る所だったんだぞ?」
ああ、助かる。と俺達は教室に戻った。
◇◇◇
※宇留田塁視点
クソッ!クソクソクソクソ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね!
見破ってるとか卑怯だろ!罠に掛かっとけよクソが!アイツは最低のクズなんだから俺の思い通りに動けよボケが!
「ずいぶん苛立ってますね。お前みたいな小物があのお方に敵うはず無いじゃない。何を夢見てるのかしら」
俺が声の方を振り向くと、五良児凛がそこに立っていた!彼女はボクを慰めに来てくれたんだ!勇気づけにきてくれたんだ!うれしいなぁ!うれしいなぁ!
「あら?もう限界が来てるみたいですね。ですがあのお方の露払いをするのも私の役目。恨むなら愚かな自分自身を恨むのですね。」
あれ?ナイフをだしてなにをするんだろう?
あ!そうだ!くだもの剥いてくれるのかなぁ?
ボクのおよめさんになるんだから、かわいくリンゴをうさぎに切ったりするのかなぁ?
あれ?でもりんごはどこにあるんだろ?
「りんごないの?とってこようか?」
なんかはながむずむずするなぁ。
「ごめんね。ちょっと向こうむいてて」
ポケットティッシュではなかんでスッキリ!!
なんだかこの鼻水の色がおかしい気がする。
ちょっとピンク色混じりの灰色のスライムとかなんだコレ?それに頭がフラフラする。
さっきまで俺は何を考えていた?
五良児凛?!ナイフ!突き立てに来る?!何故!
「凛ちゃんやめっ!!」
ドスッ!とナイフが腹部に突き立てられる!
「ギャアアアアア……あ?あれ?ナイフが刺さってるのに痛くないな」
「そんな……もうそこまで侵食が進んでいる?人として死ねなくなるなんて……憐れね」
凛ちゃんがオレに憐れだなんて?同情してる?ボクをバカにしてるのか?!ボクはリンちゃんのためにがんばってたのに!!
ゆるせないゆるせないゆるせない!
粘液がナイフの傷口から吹き出し、凛に纏わりつく。
が、奥渡が纏っていたのと同じオーラを放出しへばりつこうとする粘液を消し飛ばしていく。
「ギャアアア!アツい!アツい!ナイフよりも痛い!」
「お前はおかしいと思わないのか?お前自身は毛ほども傷ついていないのに、粘液が消されると痛みを感じている事に」
「ボクの愛を受け容れないなんて!お前はもういらない!嫌いだ!あっちいけ!」
「元から幼かった精神が幼児退行までしてるなんて、ホントに憐れ。せめて一思いに消し飛ばしてあげる」
スマホを掲げるとその画面からバーチャルなノイズの掛かった様なメンダコが姿を現す。
「お前!相棒は2年生になってからなんだぞ!なんでいるんだ!」
「コレは相棒じゃないわ。相棒の幻、幻影よ。じゃあね。失敗したお馬鹿さん」
ドットや電子エフェクトがいくつも重なり合った様な光線が放たれる!
先ほどまで宇留田塁が居た所は強い衝撃によって地面がヒビ割れていた。
「困るよ、お嬢さん。コレはコレで使い道があるんだ。まだ潰されるわけにはいかないな。」
誰っ?!見上げると二階の窓から金髪の生徒が私を見下ろしていた。傍らにはショックを受けて呆然としている宇留田塁が虚ろな目でこちらを見ている。
「困りますね先輩。ソレと貴方も邪魔なんです。早めに潰したいんですがね?」
私は殺意を込めて睨み返す。
でも、あの男がアレを助ける瞬間が見えなかった。
高速移動系?いや、それにしても違和感がある。二階の窓は開いているが、わざわざ窓から中に入るぐらいなら私の背後を取れば良い話だもの。
「おや、可愛い顔が台無しだよ。まあコレからはもっと台無しにするつもりだけどね。それじゃまた〜」
そう言い残すと、金髪の先輩と宇留田塁はシュンッ!とその場で消えた。
消えた?!瞬間移動系か!厄介だな。奥渡様に伝えないと!
◇◇◇
放課後──
俺は久安と今朝仲良くなった楠間を呼び、ファミレスで宴を繰り広げるぜ!!!
「だからよ。なんか知らないが、行方不明になった3人が俺に恨みがあるっぽいんだよな」
ぶっちゃけ1年の時にもそんなに接点なかったし、こっちからアクションかけた覚えも無いからな。
身に覚えがなさ過ぎる。
逆恨みで殺しに来るとかぶっ殺してやろうかなって思うよね。
「今考えると自分でもよくわからないのでござるよ……いくら非売品のフィギュアで釣られたとは言え、級友をボコボコにしてやろうだなんて。と思ってキナ、あぁ、拙者の相棒でござる。キナに聞くと軽度の洗脳状態だった様なのでござる。」
ションボリとした様子でそう言う楠間。テーブルの上に居る1/12美少女プラモが自立稼働した様なキナはペコペコと頭を下げていた。
「で、ハンバーガーが踏み潰される所を見てブチギレ、その後奥渡と友情を確かめ合って目が覚めた訳だな?」
ウィスプにライターの火を食わせていた久安がそう言って茶化す。ヘヘッよせやい!殴り合って友情を確かめるなんて昭和文化、令和ボーイズの俺達には通じねぇよ!
「久安様、楠間様、あとここには居ませんが、妙子様と仁倉様。私を含めこの5人が奥渡様の配下ですか。幹部としては申し分ないですね。コレから教団の信者を増やし、かつての都市をしのぐ千年帝国を築く覇道を歩まれる。私は運命の瞬間に立ち会えた感動で胸がいっぱいです。」
いつの間にか隣に座ってスプライトをズゴゴー!と吸いながら訳の分からない事をのたまう。
友達は配下じゃないし、教団も作らないし、都市も作る予定無いんだが?!
──────
読んでくれてありがとうございます(/・ω・)/
良ければフォローや☆をお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます