第10話  流石にそれはね?

10話  流石にそれはね?


「出てこい!夜波奥渡!お前の女は預かった!!」


「返して欲しければ俺の目の前で土下座して五良児凛を解放しろ!!」


「このオレがじきじきに断罪してやる!!現れなければ主部仁倉とかいうこの女をグチャグチャにしてやるぞ!!!!」



 昼食のコンビニおにぎりを久安と食らってたらそんな声が聞こえてきた。校内放送で学校じゅうに騒ぎ立てる声はスピーカーの向こうからもニチャニチャした感じが伝わって来る様だった。


 ッスゥ−−−−−−マジか。そういう事するんか。コレひょっとして蛇魂や諸合の差し金か?


「久安、ちょい用事出来た。」


「おもしろそうじゃねぇか。お前ばっかり面倒ごとが寄って来てさ。俺も活躍させろっての」


 手早くおにぎりを口の中に押し込み、炭酸水を流し込む。げふっ、さて行くか。




◇◇◇




「おーい、来てやったぞクソ野郎」


 学校の裏庭に行くと、粘液の中でぐったりしている主部仁倉を足元に転がしている1年が居た。


 そいつはスマホをこちらに向けて撮影を始めると、こちらには目もくれずにスマホの画面内に向かって語り掛ける。


「さぁ!始まりました!ウルダールの神秘を暴くチャンネル!第一回は魚目蛇魂が暴れた時に上手くその場を収め、周囲からは至高の相棒を手に入れたと噂の夜波奥渡くんを暴く!です!」


「皆さんは彼が後輩の五良児凛という女子生徒を奴隷扱いしている。という話をご存知でしょうか?」


 俺を映しながら俺を見ていない。ナメてんのか?だが、今朝のチンピラや楠間の事もある。少し様子を見るか。


「私はその様子の撮影に成功しました!コレです!!」


 あーこないだの。牛丼屋でのアレを見てたヤツね。

 ひょっとして五良児凛が好きだったからBSSで能破壊されたか?


「彼女が本心でこんな事を言う筈が無い!!つまり夜波奥渡も悪しき精霊に取り憑かれ悪の心に染まった邪悪な存在です!」


「それをこの私!正義の精霊使いウルダールが始末して五良児凛の心を救うのです!!!」


 あ、終わった?いきなり問答無用で殴りかかっても良かったんだが……どうするかな。

 

「演説ご苦労。感動したよウルダール君!!!俺を呼び出す為に女の子を人質にしてるのに正義を語るとか片手落ちじゃないか?」


「五良児凛にあやまれ!!!」


 ウルダールが叫ぶと共に粘液が伸びて来る。拳にメンダコの触手を纏わせ「深淵のカイナ」を展開し弾く。


「話が通じねぇのか?相手の質問に答えろよ」


「罪を認めろ!!!」


 粘液を今度は大きな水球の様にして放ってくるウルダール。


 俺は八本の触手を放射状に放つと、触手と触手の間にまるで水かきの様な膜を張る。


 この膜は魔力やら気力やらサイキックやら言われるオカルト精神エネルギーで出来ていて、まあ実質ビームシールドだよな。


「うぉぉぉ!死ねっ!死んで僕と凛に詫び続けろ!凛は僕のだぞ!!」


 粘液の玉を持ち上げては落とし持ち上げては落としでビタンビタンと叩きつけて来る。


 ……だんだんハラ立って来たな。五良児凛とかいう女もほぼほぼ初対面なのに、こんなに逆恨みしやがって!


「いい加減に!しろぉっ!!」


 ドパァン!!と激しい水音と共に飛散する大玉水球。

 中心地には禍々しいガントレットを右腕に装着したオレが拳を突き上げていた。


「相棒の精霊の武器化、ある程度のレベルになった探索者は出来るらしいが、お前のおかげでモノに出来たぞ!」


「ば、バカなっ!!あの水球がいとも簡単に?!く、来るな!やめろバケモノ!」


 いきなり弱腰になって後ずさるウルダール。


「そ、そうだ!仁倉を返してやるから!だから殴らないで!!」


 仁倉を粘液を使って立たせ、そちらを指すウルダール。

 だが後悔してももう遅い!


「てめぇのやり方は失敗だったな!ファンブルッッ!!!」


「キヒッ!!バカが!」


 オレが拳を突き出すとウルダールの顔に拳が“ずぶり”と貫通した。


 隣に居た筈の仁倉はドロリと溶け、その様子がおかしくてたまらないと言った様子で粘液溜まりの中からウルダールが姿を現す。


「バカはどっちだか。獲物を前に舌なめずり、三流のする事だ。」


「強がるなよ!!お前は助けに来た主部仁倉を自分で殴り飛ばしたんだ!!」


 タネが割れてもなお三文芝居に付き合ってた俺を褒めて欲しいモンだが。


「誰が誰を殴り飛ばしたって?俺は彼女を取り返しただけだいつまでもトチ狂ってんなよ」


 俺の拳は偽ウルダールの顔だけを弾き飛ばしているが、仁倉の顔には傷一つ付けていない!!


「な、なにっ!!」


「てめぇの様な女を盾にして笑ってるゲス野郎の思い通りにはなるかってんだ!初めから配信してるてめぇは偽物だって目星は付けてんだよ!」


「ど、どうやって!」


「素直に答えるかよバァカ!てめぇをそそのかした大元が見てるだろうからな!」


「う、うわぁぁぁぁ!」


 ついに自分の不利を悟ったのか、粘液をプロテクターの様に身体にまとわりつかせて殴りかかってくるウルダール!


「てめぇのやり方は失敗だったなァ!ファンブルッッ!」


 俺の拳がウルダールの顔面に突き刺さり学校の壁に突き刺さる。


 粘液が霧散した宇留田塁、そしてその姿を配信していたスマホが粘液が消えた事で地面に落ちる。


 俺は仁倉を抱えて保健室へ向かった。



──────



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