第9話 まだ子供なのよ!
9話 まだ子供なのよ!
「なんかいいやつそうでごさるし、やはりあの噂はデマな気がしますな」
「うわさ?」
楠間と校舎裏のスペースに座り込み炭酸水を煽る。コーラでも良いんだけど、なんか炭酸水のが身体に良さそうだから普段は基本的に炭酸水レモン味だよね。
「聞いておいて他の事考えておりますか?なんとまあ……なにやら奥渡殿も諸合氏や庭院氏、魚目氏の様に相棒に引っ張られておかしくなってるらしいとの事でしたな。先日は何を?」
「3日前にコールプローラーで魚目蛇魂に襲われてな。学校に行くとまた現れて暴れ出すかもしれないからほとぼり冷ましにかこつけて、プラモ探しに遠くのプラモ屋探訪」
「ぬおっ!プラモを組むのですかな!ガンプラ、美プラ共に素晴らしいですな!どのようなものを?〜」
「主にコトブキヤだな。ガンプラも昔のは組むぞ。KPSっての?アレがね……」
「おお!奥渡氏はイケる口ですかな!」
それから俺は出臼間楠間とプラモ談義に始まりアニメや流行りのVチューバー、いろいろとオタク話に花を咲かせるのだった。
◇◇◇
※庭院ダロス視点
蛇魂がしばらく使い物にならないから諸合さんの為に仕込みをしたのに、呉部凛也の奴は出臼間楠間にやられてしまった。手当たり次第に声を掛けるのは同士討ちの可能性があるから共有するなり、順番を気をつけねば………
なんだあのデブ!意気投合したらダメじゃないか!
諸合さんも蛇魂も夜波奥渡はヤバい奴だから排除しないと、と言ってるしそれは僕自身も感じている。
クソッ…僕自身が手を下したいが、あいにく僕の相棒は直接戦闘には向いていない……
だが、この間声を掛けた宇留田塁くん。彼はなかなか良さそうだ。
あの奥渡と共に行動していたあの女、主部仁倉に執着しているからそこを上手く突いてやれば良い。無理矢理迫られて居る。キミの力が必要だ。などと言えばいくらでもその気になるだろうしな。
まだ彼は1年だから相棒は持ってないが、そこは諸合さんの相棒の分身が宿る手筈になっているし楽しみだよ。
「ダロスさん、お待たせしました。諸合様の相棒の分身体が無事自分に定着致しましたので、早速あの夜波奥渡を亡き者にしようと思います」
ドアから宇留田塁くんが入って来る。うむ。自信に溢れたいい顔をしているな。
「塁くん、だが真正面からぶつかる事もあるまい。主部仁倉だったか、彼女の無事を確認した後に彼と引き離すのが先決だろうと思うよ。」
「もちろん。塁くんの実力を侮っているんじゃないよ。ただ、逆上した奥渡が何をするか分からないからね。それに彼女は彼のコールプローラーの召喚器を持っている。合流されるとコールプローラー戦になるからね。それは面倒だから彼女をまず確保する事。あとは生身の奥渡をコールプローラーの力でめちゃくちゃにしたら良いさ」
「あのクソ野郎をめちゃくちゃに……くひっ!分かりました!」
ニタニタと笑顔を浮かべた塁が姿を消す。ふぅ、どうなるかな。次の仕込みもしておこうか。
◇◇◇
※主部仁倉視点
奥渡くん、蓮見さんの話じゃ今日は学校に来てるはずなのにクラスに居ない……どこにいるんだろ。
「奥渡くーん!奥渡くん居ますかー?!」
ここにも居ない……あとは校舎裏かな?
「くひっ!仁倉さん!もうあの男に気を使わなくて良いよ!僕が、この宇留田塁が貴女を守るからネェェェ!」
ヒッ!彼は………1年の宇留田塁くん?!でも雰囲気がぜんぜん……いったい何があったの?!
「あのクソ奥渡に見つかる前にまず君を安全な所に運ばなきゃネェ!」
彼の足元から不定形の粘液が湧き上がって来ると、それがいくつもの手を形作り私の方に伸びて来る!
「カペラ!!」
黒山羊が粘液をその角で弾き飛ばす。
足元の粘液も、その蹄で踏み鳴らしただの水たまりに変えてしまった。
「あなた、1年なのにスライ厶の相棒を……もしかしてモグリの契約を結んだの?!大人しくして警察に行くわよ!」
「何をするんだ!あの夜波奥渡から救ってあげるって言ってるのに僕のフレンを弾き飛ばすなんて!僕の愛が分からないのかい!!」
錯乱した様子でビチャビチャと粘液を飛ばして来る!私のカペラは丈夫だけど前後左右からの粘液は防ぎきれないわね……どうすれば……
その時、すぐ近くに消防ホースが入った赤いロッカーが目に入る。アレだわ!
まだカペラが壁になってくれてるうちに扉を開けてハンドルを回す。みるみるうちにホースが膨らみすぐに大量の水を吐き出し始めた。
「カペラ避けて!」
カペラが飛び退いた向こうから伸びて来る粘液に高圧水が降りかかる!コレで押し流してるうちに逃げて奥渡くんと合流しなきゃ!
「ありがとう!コールプローラーになるに十分な粘液を増やせるよ!」
宇留田塁がニタニタとしながらこちらに巨大な手を伸ばして来るとカペラを鷲掴みにする。ミシミシと音を上げ締め付けられカペラは苦しそうだ。
「カペラ!戻って!」
実体化を解く様に指示するが首を横に振り暴れるカペラ!
「やめて!相棒だって私達と同じぐらいの子が選ばれるの!その子はまだ子供なのよ!」
「だったら大人しく僕のモノになるんだ!」
その時の宇留田塁の目はまるで粘液の塊の様に濁っていた。
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