第14話 行くかっ!!
14話 行くかっ!!
あれから俺が片付けた宇留田塁とそのコールプローラーは探索者達に回収されて行った。
「なぁ、俺の何が気に食わないんだろうな?」
隣でファミチキをバンズに挟んでいる楠間に問いかける。まあ建設的な答えが帰って来るとは思っていないが愚痴として呟くぐらいはいいだろう。
「クラスでも関わりがなかったでござるからなぁ……ひょっとしたら奥渡殿ではなくその相棒のメンダコ殿と彼らの相棒に因縁があるのではなかろうかとの思いますぞ。まあ、確たる証拠も無いただの予想ですがな」
そう言うとバンズにかぶりつく。まだ1時間目の休み時間だぞコイツ、良く食うなぁ。
「そういや奥渡、ダンジョン探索の班分けはこの三人で良いか?蓮見妙子や主部仁倉にも声を掛けようかとも思ったんだが、お前が妙なのに狙われてるんじゃな。女の子を危ない目に合わせたく無いだろ。」
隣でウィスプと遊んでいた久安がそういいながらプリントを回して来る。
そう、バタバタしててアレだったが、今日はダンジョンに潜る実習の日だ。
本来はここで戦い方を学ぶハズなんだがな……ホントあのクソ蛇魂にクソ野郎ども、今度会ったらただじゃおかねぇ。
「え゛拙者もでござるか?嫌でござる!戦いはゴメンでござるよ!!!」
嫌がる楠間を横目に楠間の相棒のキナがペンを抱える様に持ち上げ、つたないながら用紙に名前を書く。
「あのー?キナちゃん?無言で「ドヤッ!」ってしてるとこ悪いんだけど、僕そんな指示してないよね?!何してるの?!」
キナちゃんはかしこいなぁ〜おじさん砂場で磁石で集めた砂鉄あげちゃう!!
「あの〜奥渡殿?拙者のキナに何を与えているでござるか?」
砂鉄をまるで朝食のシリアルの様に器用に消しゴムをくり抜いたボウルに盛り付け、紙を折ったスプーンでモリモリ食べているキナ。
食べ終わると俺のメンダコをクッションにして寝始めてしまった。
「き……キナが寝取られた………」
「人聞きが悪いな!」
「め、メンダコどの。スルメ等はいかがですk………」
楠間がカバンからおつまみスルメを差し出すと、セリフが終わる前にひったくり貪り始めるメンダコ。
「コラッ!ちゃんとお礼言いなさい!!」
◇◇◇
「いや〜、俺の相棒が居て助かったな。感謝しろよ2人とも。俺のウィスプにもちゃんと捧げ物を頼むぞ。マッチとかな」
「そうだな。こりゃ助かる」
「電灯や光魔法に比べて手が空きますからな」
昼間に相談した通り、実習時間になると3人組を作り学校近くのダンジョンに挑んでいた。
まあ本来は浅い階層をただ行って帰ってくる散歩みたいなモンだったんだが、楠間のヤツが開けた宝箱が罠で見知らぬ階層に飛ばされたんだよな………
「そんなラノベ主人公みたいな“持ってる”事ある?次はピンチの女の子の声がして助ける事になるとかかな。なぁ、久安」
「なんでオレに振るんだよ奥渡。いざとなればコールプローラー呼び出して無双すりゃ良いじゃねぇか。」
「召喚機は仁倉さんが持ってる。」
「「はぁ……」」
「ほら2人とも、ため息ついてないで行くでござるよ!さっさと帰らないと今日は帰りに課金用のカードを買う予定があるので拙者はさっさと脱出したいんですぞ!!」
「キャアアアァァァ!!」
「バカ、楠間モンスターが寄って来るんだからそう言う冗談はよせよ」
「イヤっ!誰かっ!!」
「冗談キツいでござるよ久安氏」
「グガァァァァァァ!!!!」
「うるせぇぞ奥渡…………って」
「「「行くかっ!!!!!」」」
◇◇◇
※
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!まだ死にたくない!まだ読みたい掛け合わせがあるし、読めてない新作もあるの!!
あのクソ兄貴かクソ姉貴か知らないけど、私に嫉妬して殺そうとしたのね………中層までは平気な私だけど、ここは中層後半……比較的深層に近い地点ね。
「メリー!」
ポンッという音と煙と共に傘を差した二頭身のぬいぐるみの様な相棒が現れる。
その姿は日曜朝の女の子に大人気なプリティでキュアッキュアな作品に出てくる妖精さんみたいなフォルムであった。
「メリー、索敵をお願い。」
傘からキラキラとしたエフェクトが広がる。
これで早く出口を見つけなきゃいけないわね。
ぜったい私を、罠にハメた事を後悔させてやる………!必ずだ!必ず…………!
ズシン……ズシン……と大きな足音が聞こえて来ると思ったら、上階層へ向かう階段の前にコールプローラーで対処する様な巨大な鬼が居た。
「ええいっ!臆してなるものか!為せば成る!私はつよい!だから死ねぇーーッ!!」
私は傘を実体化させ、感情をメリーに食わせる。
手の中にあるメリーの傘が輝きを増す。
「喰らえっっ!」
私の一撃は鬼に傷を負わせる事には成功したが、横から掴まれて壁に叩きつけられる。
「キャアアアァァァ!!」
つい、声が出てしまう。
ふと見ると足が折れたのか、おかしな方向に曲がり力が入らない。急に“死ぬ”という実感が私を襲う。
「イヤっ!誰かっ!!」
ふと口をついて出た弱音。誰も来ないとわかってはいても、誰かが助けてくれないかと願う。
私ってこんなに弱かったんだ。
「グガァァァァァァ!!!!」
気を失う寸前に見えたのは銀色の丸い背中だった。
─────────
読んでくれてありがとうございます(/・ω・)/
良ければフォローや☆をお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます