第7話  胎動する帯同


 7話 胎動する帯同




「で、奥渡。アンタとそこの彼女はどういう関係なの?」


「初対め「ハイッ!五良児凛!奥渡様のしもべです!!!望むならこの身を捧げます!!!」


 バカっ!お前!展開の速さが重要視される昨今なのに天丼するんじゃあないぜ!みろ!店員さんが凄い目でこっち見てるじゃないか!


「ふ〜ん。五良児ちゃんね。2人で居るの初めて見たんだけど、奥渡もスミに置けないね。」


 納得するなよ!蓮見妙子!いつも人に空気読めねーなみたいに言うくせにお前空気読めねーな!


 俺の顔が明らかに困ってるだろうが!


「そういうの良いから、いい加減教えてくれないか?何が目的なんだ?俺は君に初めて会うんだが」


「しもべになりに来ました!昨日、街を歩いてたらコールプローラーが現れて暴れ始めた時に私近くに居たんですよ。そして暴れるうす汚い基体を取り押さえてくれた救いの神!彼を顕現させていたのが貴方様だと確認しているんです!あの醜い基体を縛る美しい触手、力強さを感じる肢体!なのに瞳は慈愛と知性を宿し、この世界のみならず宇宙の深淵を見通す様な深い色を湛えていて引き込まれますし、取り出した杖はその身姿により高貴さと高い権力を伺わせます!なのに、高圧的ではなく、むしろ親近感を抱かせ、どんな人間もその大きな懐に受け止めてくれそうな父性を感じさせてくれるのです!ああ!偉大なる父よ!偉大なる母よ!ふんぐるい!うぐふむなぐる!ゴホッゴホッ……興奮し過ぎました。つまり貴方様に助けてもらったから運命を感じたんです。私は貴方様に付き従う運命だと悟ったのです!!」



 う……うん……怖いよこの娘……


「素敵!じゃあ学校での奥渡の話とかしてあげるね!」


 何が素敵じゃ!蓮見妙子!貴様何のつもりっ!


「ご、ごめんちょっとトイレに行って来るから席外すね。」


 蓮見妙子が俺の失敗談を面白おかしく語って聞かせて居るうちに逃げよ……


(あ、店員さん、あのテーブルのお会計済ませられます?はい。はい。すみません、ありがとうございます。)


 ヨシ!かーえろ




◇◇◇◇




※宇留田塁視点


 クソッ!クソッ!なんだアイツ!


 俺の五良児凛ちゃんがアイツのしもべ?!しかも凛ちゃんの方から言ってる?!


 まさか!そんなはずはない!凛ちゃんはいずれ僕のお嫁さんになる筈の女性だ!


 俺が消しゴムを落とした時に拾ってくれたし、委員会の仕事を押し付けられた時にも手伝ってくれた!プリントの出し忘れが無いか確認しに話しかけて来てくれる優しい彼女があんな奴のしもべに?!


 密かに凛ちゃんを守る為にずっと見守ってて良かった。こんなに事になるなんて!昨日はたまたま新しいプラモの発売日でプラモ屋に行ってたのが仇になったな。


 昨日コールプローラーが街で暴れたって話は聞いたが、その現場の近くに居てアイツが助けた?


 そんな上手い話はあるわけ無いじゃないか!!どうせ彼女を騙す為の狂言だな!おれはだませんぞ!



 1人で逃げる様に店から出る夜波奥渡。一人になるなら丁度いい。凛ちゃんには手荒な事をしてる所を見られたくないからね!さぁ、一言文句を言って二度と彼女に近づかない様にしなければ!


「おい!夜波奥渡だな!五良児凛に2度と近づくな!彼女はお前のしもべや奴隷ではない!!」


 俺の声に面倒臭そうに振り返る奥渡。だがすぐに走り出す!


 逃げるつもりか?!逃さん!泣いて謝る姿を動画に撮って凛ちゃんに見てもらうんだ!路地裏に入って行く?丁度いい!そこで痛い目を見てもらおう!!!



◇◇◇◇


※夜波奥渡視点



「おい!夜波奥渡だな!五良児凛に2度と近づくな!彼女はお前のしもべや奴隷ではない!!」


 俺は突然そんな声に引き止められる。振り返ると前髪で目が隠れた一昔前のエロゲ主人公みたいなビジュアルの奴に声を掛けられた。


 なんなん?最近こんなんばっかやんけ


 今日は五良児凛の相手でMPが底をついてるから、手早く済ませよう。


 路地裏に誘い込んだら、案の定殴りかかって来た男。適当に殴ってゴミ袋の山に突っ込ませる。


「恨むなよ。そっちから突っかかって来たんだ。」


 ちょっとコンビニでプチ贅沢しようかな……いやカッコつけて奢って来たからお金無いな。やめとこ



◇◇◇◇




「大丈夫ですか……ええと、宇留田塁くんですね?夜波奥渡を排除したいんですよね?そのお手伝いをさせてくれませんか?」


「えっと……その金髪、あなたは庭院ダロス先輩?!行方不明ってニュースで言ってた人が何で?………」


「ある崇高な目的の為です。その為にはあの夜波奥渡は邪魔なんですよね。僕らとしても」


「な、なるほど。僕に期待してくれているんですね!」


「えぇ、彼女……確か五良児凛さんでしたか。あの娘にふさわしいのは貴方の様な存在でしょうからね」


「あっ、ありがとうございます!!ぐがっ!ぐげっ!げはははははは!」


「おっと、耐えきれませんでしたか……やはり精霊持ちの方が良いのでしょうか……」



──────


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