第2話 乗ってけ!スーパーロボ

2話 乗ってけ!スーパーロボ


 この日は召喚、契約した精霊を名簿に登録しその後は解散となった。明日からは共同生活が始まる為に親睦を深めるために2人の時間を取る様にとの事だ。


「奥渡、真っ直ぐ帰るのか?」


「どうすっかな……そっちはどうすんだ久安」


「だったらさ、3人でマックに行こうよ!」


「妙子、それはたぶん同じ事考えてる奴らでごった返すと思うぞ?」


「そうだな。同じ理由でファミレスも激混みしそう」


 俺と久安の言葉につまらなそうに口を尖らせる。妙子の頭上に居座る黄色いインコのコーキンも「お前らつまんねぇ奴らだな」とでも言う様に主人と同じジト目を向けて来る。


「クトはどうしたいんだ?あぁまずは自分の住処を確かめたい?まあこれから長い付き合いになるんだ。まずは仲間と飯食いに行かないか?」


 俺の様子を見た魚目がコチラを指差しゲラゲラと笑い出す。


「ギャハハハ!ザコが一丁前に精霊と会話出来るフリしてやがるぜ!てめぇの精霊は人語が分かる程に高位なのか?そんなわきゃねぇよな!人の姿も取れないザコが話しかけて良い気になってんじゃねぇよ!!!」


 うわっ………面倒なのに絡まれたな……魚目はやべーやつを召喚した諸合の取巻きの片割れで、相棒は魚人の子供だった。魚目の横で半開きにした口からヨダレを垂らしながらも血走った目で俺のメンダコのクトちゃんを凝視している。


「だご……おで、あれ……キライ  コロス!」


「おぉ〜!賢いぞ!ハンギョ!ちゃんと好き嫌いが言えるんだなぁ〜〜。そういう事だ。何でかは知らないが、お前のそのタコが気に入らないらしいんだ俺の相棒がな。殴らせろ!」


 コイツ、先生が職員室に帰ったからってムチャクチャ言いやがるな!マジ勘弁しろよ!


「ハイそうですか。なんて言えるわけ無いだろ腰巾着野郎!自分の相棒を得て諸合が居なくても強気に成れたというのか!」


「その物言いが昔から気に入らなかったんだよぉ!」


 ハンギョと呼ばれた半魚人が鋭い爪を振り上げて襲い掛かってくる!


「妙子!久安!すまん、またこんど!」


 窓から身を乗り出し、クトの足を掴む。クトはメンダコだが、背中に小さいコウモリ羽根がついていて魔力を流し込むコトにより少しの間滑空する事が出来る。

 軟着陸した俺はクトをリュックサックの様に背中に背負うと空き地に向けて走り出す。その瞬間!!


『緊急警報発令!緊急警報発令!近隣住民はただちに避難してください!』

『緊急警報発令!緊急警報発令!近隣住民はただちに避難してください!』


『ただいま人間界、妖精界以外の世界からこの世界への侵入が観測されました!水角似区の住人はただちに避難してください!』


『現地に近い職業冒険者の方にはチクタクマンからもたらされた対外界存在用兵器の使用が認められます!繰り返します!チクタクマンからもたらされた対外界存在用兵器が認められます!』



「ちっ……おい!魚目!バカな事してる余裕は無くなったぞ!早く逃げろ!」


「ヒャハハハハハハ!ハンギョ?ハンギョ!お前そうだったのかヒャハハハハハハ!」


 何だあの様子………狂ってやがる?あの様子は諸合が召喚した精霊を見た時と同じ……?


 ハンギョと魚目が二人がかりで掴み掛かって来るのから逃げながら河川敷にたどり着くと4メートル程の巨大な人形が横たわってた。腹部はがらんどうでありその中には息も絶え絶えな男が居た。


「ヒャハ?あれってばチクタクマンとかいう凄い精霊がもたらした対外界存在用兵器コールプローラーぁ!」


 魚目の野郎、わき目もふらずに突撃すると腹部の男と男に抱えられた猫を引きずり下ろし乗り込んだ?アイツまさか!


「魚目蛇魂!いっきまーす!ヒャハハハハハハ!」


 のっぺりした4メートル程の巨人がハンギョの様になっていく。みるみるうちに巨大な半魚人のバケモノと化した蛇魂はその巨大な拳を俺の方に振り下ろして来る!マジかよアイツ狂ってんじゃねぇの?!


「ヒャハ!ヒャハ!!俺がハンギョに!ハンギョが俺に!この感覚、魂が喜びに震えてるぅ!」 


 クトの力も借りひたすら蛇魂から逃げる。逃げる。そこいらの自転車を掻っ払い、コケるとクトの触手で持ち直す。

 ふと空を見るとコウモリ羽根を生やした一見するとアリの様なトカゲの様なよくわからない怪物が色とりどりの人型と戦っていた。アレが冒険者の皆さんか!早くこっちに気づいてくれ!


 「そうだ、目印……発炎筒とか?!いやだめだあちこちに火の手が上がっている今は煙は目立たない………どうする、どうすれば……ぐあっ!!」


 蛇魂の投げた車が近くの壁に当たり、砕けた瓦礫に襲われた俺はその場に倒れる。くそったれ!


「ぐふふふふふ、蛇魂ちゃん?早く君の願を叶えないとねぇ!」


バシン!重い肉を打ち付ける様な音がしたが俺は無事だった。見上げるとそこには山羊の意匠が施された女性型の巨人が腕を交差させて立っていた。


「や………矢波くんを虐めないで!」 


「この声は……主部、主部仁倉か?!委員長のお前が何で!」


「明らかに普通じゃない様子だったから見に来たんです!このコールプローラーは途中で墜落してたのを譲って貰いました!」


「ヒャハハハハ!良い娘ちゃんしてる委員長!委員長が来たぞ!蛇魂のための血肉がこんなに!蛇魂はあのタコが気に入らなかったが、蛇魂の好きに出来る女を手に入れられるのは悪くない!」


 支離滅裂なセリフを吐きながら主部の乗る牝山羊の巨人をボコボコに殴る巨大な魚人。


「っきゃー!」


 悲鳴と共にコールプローラーの実体化機能が解け、衝撃で腹部から主部が放り出される。


 「クトっ!」


 触手を伸ばし主部仁倉とその相棒であろう山羊をキャッチするとそのまま別の触手を伸ばし主部の乗ってきたコールプローラーの腹部に乗り込む!


「クトっ!やるぞ!主部仁倉委員長、少し狭いけど我慢して!すぐ終わらせて病院だ」


「すぐ終わらせるだと?!ナメやがっっっっ!」


 右腕だけ先に実体化させ、深い色をしたその腕でストレートを放つ。魚人は目の前の建物にめり込んで止まるが、殴られた箇所の鱗がバキバキに割れ、青緑色の血が流れていた。


 「まだまだっ!仁倉をこんな目に合わせた償い!させてもらう!」


 右、左、蹴り上げ、踏みつけ 攻撃を仕掛ける度に実体化をしていき、ついにはその威容を現した。


「ヒッ!な、なんだその姿は!バケモノッ!ハンギョの言う事は正しかった!お前の方がバケモノ!死ねぇ!」


 カーブミラーを引き抜き、それをまるで鉄パイプの様に振り回し突進してくる魚人。


「クト、そうか使い方は分かった!そうやれば良いんだな!」


 触手を腕に束ねて太さと頑丈さを増す。振り下ろされるカーブミラーが左腕に食い込むが、骨であるコールプローラーの腕に衝撃が届く事は無かった。


「てめぇ、失敗したな。ファンブル!」


 俺とクトの腕が魚人の胸に突き刺さり衝撃がその体を突き抜ける。ボチャッと水っぽい嫌な音の後には巨大な風穴が空いていた。



◇◇◇



 魚目蛇魂は頭上数cmの所を物凄い衝撃が突き抜けた事により失神。ハンギョも力を使い果たして一歩も動けずに居た事からすぐに自警団探索者に連行されていった。


 その様子をパトカーの中で眺めながら俺は必死に弁解していた。緊急避難の為であった為に主部仁倉委員長は罪に問わないで欲しいとお願いする。

 するとコールプローラーの記録装置に収められたドライブレコーダによって無実が証明され、そのまま解放された。


─────────



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