第10話 落ちこぼれの見習生

学校初日は "告白中毒のイズナ" とかいう狂人と絡みがあったものの、なんとか終わった。


家に着き玄関を開け、リビングへ向かう。


「 ただいま」


リビングのドアを開けると、テレビ画面にはエンドロールが流れている。


そういえば4人を家に置いたままだったな。


「 あっ、大和帰ってきた! 見て! 私たち2もクリアしたよ!」


レナンさんが笑顔で話しかけてくる。


「 おめでとう」


「 うん! ちゃんとみんなで協力したのよ!」


「 それは良かった。本来協力するゲームだからね」


「 それより腹が減ったぞ! なんか食わせろ大和!」

「 私もお腹ペコペコです!」


デスタ君とイヴローラさんがこっちを見てくる。

ずっとゲームしてたし、そりゃお腹も減るよな。


「 分かった。僕もお昼ごはん食べてないし何か作るよ。くつろいでて」


「「「「 やったー!!!」」」」


みんな大喜びだ。


僕はキッチンへ向かい、冷蔵庫を確認する。

……オムライスでも作るか。

僕はすぐ料理を始める。


そして……。


「 みんなできたぞー」


僕はオムライスをテーブルに並べる。

4人がオムライスを見て、目を輝かせている。


「「「「 おお〜〜」」」」


「 さあ、食べていいよ」


4人はスプーンを手にして、オムライスを口に運ぶ。


……。


「「「「 なんじゃこりゃー!!!!」」」」


予想通りの反応だけど、もういいよそれ。


4人は夢中でオムライスを食べ続ける。


「 ご飯食べ終わったら、さすがに帰った方がいいんじゃないのか? 元の世界に」


ずっと僕の家でゲームをしていた4人。こっちの世界、日本で1日過ごしたのだから、異世界でも時間が経っている。


「 え〜、帰りたくない〜。私もう日本に住む〜」

「 それもありだな。料理はうまいし、ゲームは面白いし!」


!?


「 いやいや、レナンさんもレッド君もプレアデス聖騎士団の見習いなんでしょ? 戻らないと」


僕の言葉に、レッド君は少し眉をしかめ、俯いた。

そして、口を開く。


「 その事なんだが……確かに俺たちはプレアデス聖騎士団の見習いで、そこに入るのが俺たちの子供の頃からの夢なんだ……。でも、俺たち4人は見習生の中でも落ちこぼれなんだ……」


……。


「 そんな……レッド君達が落ちこぼれだなんて……。何でそんな事……」


「 俺たちには才能が無いんだ……」


「 才能がない?」


「 ああ。大和はこの指輪を知ってるか?」


レッド君は左手の小指に嵌めている指輪を僕に見せた。


「 いや、知らないけど……」


「 これは『身体強化の指飾り』といって、この指輪を嵌めた人は、本来人間に備わっている潜在能力を最大限まで高めてくれる武具の一つだ。セガルドではこういった特殊な武具を身につける事で戦うのが普通なんだ」


「 武具か……。確かに僕が嵌めている『亜空の指飾り』も同じだな」


「 そうなんだ。というか大和、今ふと疑問に思ったんだが、お前はその指輪を拾ったと言っていたが、なんで『亜空の指飾り』と分かったんだ?」


( やばいヨナさん。質問飛んできたよ。どうしよう! ヨナさんが封印されてる事は黙ってた方がいい?)


( ああ。念のため黙っておいた方がいいだろう。質問の答えは適当に誤魔化しといてくれ)


( 誤魔化すのがむずいんだよ!)


ヨナさんが誤魔化せという無茶振りをしてきたので、僕はレッド君に苦しい言い訳をした。


「 それに関しては、指輪を嵌めた瞬間になんというか、ぼんやりと亜空の指飾りとか超越神器とかいう文字が浮かび上がってきたというか……嵌めた瞬間に名前が分かったというか……」


僕は口から出まかせで誤魔化したが苦しいか……?


そう思ったが、イヴローラさんが口を開いた。


「 超越神器ともなると、そういった効力が付与されていても不思議じゃありませんね」


た、助かった……。


イヴローラさんのフォローもあり、ヨナさんの事は誤魔化せた。


「 そうなんだ。それでレッド君、話の続きは?」


僕は今の件をなるべく深掘りされないように、すぐさまレッド君に話を振った。


「 ああ、そうだったな。『身体強化の指飾り』はセガルドでは簡単に手に入る。戦闘中は基本的に皆装備しているんだが、この指輪は個人の潜在能力に大きく左右される。潜在能力が大きい奴程装備した時に強大な力を得られるんだ」


「 なるほど……」


「 潜在能力がある奴は『身体強化の指飾り』を装備しただけで、とてつもないパワーやスピードを手に入れるんだが、俺たち4人はこの指輪を装備してもそこまで身体能力は強化されない……つまり、潜在能力が乏しい落ちこぼれなんだよ……」


レッド君はそう言うが、僕たちが初めて会った時を思い出す。


「 そんな……でも、僕と初めて出会った時は物凄いスピードで僕を捕えたじゃないか」


「 あれでもプレアデス聖騎士団の見習生の中では全然だ」


「 マジか……」


他のプレアデス聖騎士団の見習生はそんなに凄いのか……。


僕がそう思っている中、レッド君は俯きながら呟いた。


「 本当はさ、大和と出会った森へドラゴンを探しに行ったのも、ただドラゴンを見てみたかっただけじゃ無いんだ。俺たち4人がドラゴンを倒したら、プレアデス聖騎士団も俺たちを認めてくれるんじゃないかって思って……」


「 そうだったのか……」


話し続けるレッド君は、声のトーンが低く、とても暗い。


「 でも、ドラゴンに遭遇しなくて良かったよ。どうせ倒せなかったし、間違いなく殺されてただろうしな」


「 ………」


「 2週間後にプレアデス聖騎士団の入団試験があるんだ。でも俺たちはきっと落ちる……。だからさ大和、そんなわけで俺たちは」


「 諦めるなよ……」


気が付いたら、僕の口が勝手に動いていた。


「 え?」


「 諦めないでよ。プレアデス聖騎士団に入るのが、子供の頃からの夢なんでしょ? だったら諦めないで!」


「 でも、俺たちなんて他の見習生からも見下されてるし……」

「 そうだよな……正直キツイよな……」

「 私だって、諦めたくなんかないわよ……けど……」

「 いいんです……。私たちがプレアデス聖騎士団に入るなんて、叶うはずのないただの夢なんです……」


急にみんな弱音を吐き始めた。

だが、諦めるのはまだ早い。


「 みんな諦めるのが早すぎるんだよ。まだ試験まで2週間あるんでしょ? だったら僕がみんなに戦いを教える。それで絶対、4人ともプレアデス聖騎士団に入るんだ」


「「「「 えっ?」」」」


( お?)


「 大和、お前は地球人だろ? お前に何ができるんだ?」


「 その点は問題ないよ。僕には秘策があるんだ。だから僕を信じてほしい」


「 秘策? 何だそれは?」


「 それは内緒。でも僕が絶対みんなを試験に合格させる。絶対だ!」


「 ……。まあ、どうせこのまま何もしなかったら試験に落ちるだけだしお前を信じるよ。でも大和……お前はどうしてそこまでしてくれるんだ?」


その問いかけに僕は笑顔で答えた。


「 決まってるでしょ。友達だからだよ。僕たちはまだ出会って間もないし、住んでる世界も違う。でも、僕にとって4人は、異世界で出会った初めての友達なんだ。友達の夢を叶えてあげたい……。ただ、それだけだよ」


「 ……」


「 ありがとう、大和。おかげでやる気が出てきたよ。絶対試験に合格してやる!」


レッド君の表情が一気に明るくなった。

それを見て、他の3人も笑顔になる。


「 そうだな! 絶対合格してやろうぜ!」

「 私も頑張るわ!」

「 わ、私も精一杯頑張ります!」


全員がやる気になった。


( それにしても大和、秘策ってなんだ? お前、戦闘なんて教えられるのか?)


( 何言ってんだよ、教えられるわけないだろ)


( は?)


( だからヨナさんに手伝ってもらうんだよ。ヨナさんが言った事をみんなに伝えて修行する。それが僕の秘策!)


( 大和、お前って奴は……)


( いいじゃないか。友達が困ってるんだし協力してくれよ)


( まあ別にそれくらい構わんが、貸しひとつだからな)


( はいはい)


よし、これで話はまとまった。


「 じゃあとりあえず、みんなの世界に帰ろうか。ずっとゲームしてたから眠たいでしょ?」


「「「「 ……。確かに……」」」」


「 とりあえず今日はもう帰って、ゆっくり休んでくれ。修行場所と時間はどうする?僕は明日から1日学校だから19時くらいだと助かるんだけど」


「 分かった、明日の19時だな。修行場所は俺たちが出会った森でいいだろう」


「 了解」


明日学校が終わった後、異世界へ行く事になった。


「 じゃ、みんな僕の体のどこかに触れてくれ」


4人は、僕の肩や腕に触れる。


「 じゃあ戻ろうか。《異門転移》!!」


僕たちは初めて出会った森へと帰った。


僕は異世界に到着し、4人と別れた。


「 来たばかりだけど、家に帰るか」


( え? 異世界探索しないのか!? プレアデス王国とか行ってみないのか!?)


( 今日は初めての学校だったし、愛宮さんとも色々あって疲れてるんだ。どうせ明日来るんだし行くのは明日にしよう)


( 仕方ないな〜)


僕は家に帰宅した。

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