第6話 醜い争い
時刻は午後14時。
4人にカップ麺をご馳走して、少しだけセガルドについて知る事ができた。
まだ時間にも余裕があるし、折角だから4人にプレアデス王国を案内してもらおうかな。
僕はセガルドへ行ってプレアデス王国を案内して欲しいと頼もうとした矢先……。
デスタ君が突然質問をした。
「 おい大和、あれなんだ?」
デスタ君が指差したのはテレビだ。
( あれは私も気になっていたんだ。何か教えろ大和)
ヨナさんも乗っかってきた。
「 あれはテレビっていうもので……その……映像を映すものだな」
僕はテレビのリモコンを手に取り、電源を入れた。
テレビには、よくある通販番組が流れている。
「「「「 なんじゃこりゃーー!!!!」」」」
カップ麺と同じ反応だな。何となく予想はしていた。
「 すげーー!! おい! 何でこんな薄っぺらい箱の中に人が映ってるんだ?」
デスタ君が目を輝かせて僕に聞いてくる。
まるで子供のようだ。
「 こっちの世界、日本じゃ当たり前の電化製品だ」
「 こっちの世界は料理といい、このテレビといいすごいな!」
( これはなかなか面白いな大和)
みんなテレビに釘付けのようだ。
「 ねぇ? これは何?」
レナンさんが次に指差したのは、テレビの側に置いてあるゲーム機だ。
「 それはゲーム機だよ。テレビに接続してやるんだ」
「 何? ゲーム機って何!? 見せて見せて!」
「 分かったよ。今電源入れるからちょっと待って」
僕はゲーム機の電源を入れて、ゲーム機に入っていたソフト、『マリコファミリーズ』を起動した。
『マリコファミリーズ』は、最大4人でプレイできる人気アクションゲームだ。様々なジャンルがある『マリコシリーズ』の中でもトップクラスで人気の作品だ。
僕は適当にステージを選択し、実際にプレイして4人に見せてあげた。
「 このテレビに映ってるキャラクターがマリコだ。僕が手に持っているコントローラーを使ってマリコを操作し、ゴールを目指すゲームだよ」
僕はマリコを操作して、いろいろな動きをして見せた。
「 何だこれは! 凄すぎる!」
「 おい! 俺にもやらせてくれ!」
「 ずるい! 私もやりたい!」
「 私もやってみたいです!」
全員が目を輝かせながらマリコを見ている。
「 じゃあ、ちょうど4人プレイできるし、みんなでやってみようか」
僕は4人をソファへ案内し、コントローラーを渡して操作方法を教えてあげた。
「 おお! マリコが動くぞ!」
「 何だこれ! めちゃくちゃ面白ぇ!」
「 こんなの初めてだわ!」
「 本当に凄いです!」
( おい! こいつらずるいぞ! 私だってやりたいんだぞ!!)
全員楽しそうにプレイしている。ヨナさんを除いて。
ちなみにキャラクターは4人ともマリコで、それぞれ服の色が違う。
1人でしかやった事無かったが、4人だとこんな感じなのか……。操作キャラが2人以上いると、操作キャラを持ち上げて投げる事ができたり、死んだとしても誰かが生き残っていれば復活できる。そのため攻略の幅がかなり広がる。
それにしても……マリコ4人いてなんかキモいな。
少しだけ観戦してみるか。
「 おい! 何だこいつ!」
レッド君、雑魚敵に突進してぶつかり死亡。
「 うわっ! 舐めやがってクソ野郎!!」
デスタ君、雑魚敵を踏もうとジャンプするも、タイミングが合わず雑魚敵にぶつかり死亡。
「 ちょっとイヴ! 何すんのよ!」
レナンさん、操作がよく分かっていないイヴローラさんに持ち上げられ、雑魚敵に向かって投げられ死亡。
「 ごめんなさい!! あっ! 私まで!!」
イヴローラさん、レナンさんを雑魚敵にぶつけ死亡させた後、自分も雑魚敵に当たり死亡。
……。
なるほど、長くなりそうだ。
それから5時間が経過したのだが……。
「 おいレナン! 俺を穴に投げるんじゃねぇ!」
「 うるさいわね! 邪魔なのよあんた!」
「 おい、イヴローラ! それは俺のアイテムだ!取るなよ!!」
「 早い者勝ちですよレッドさん! それに、私がアイテム取った方が上手く使いこなせます!!」
……。
醜い……。
5時間もの間、醜い争いが繰り広げられていた。
僕はその醜い争いをただただ眺めていた。
たまにアドバイスをしようとしたのだが、うるさい黙れと言われ、僕は黙って見ることを決意。
てか……。
「 全然進んでねーな。まだ2面じゃん」
マリコファミリーズは全部で8面ある。
5時間ぶっ通しでやっていたのにも関わらず、まだ2面の序盤だ。
「 こいつらが俺の事を殺してくるんだよ!」
デスタ君が僕に訴えてくる。しかし……。
「 デスタはちょこまか動き回るから邪魔なんだよ!」
「 そうよ! デスタは邪魔しすぎ!」
「 本当にデスタさんの動きは邪魔で仕方ありません!」
「 お前ら言い過ぎだぞ!!」
デスタ君が一方的に責められている。
何だか可哀想だ。
( まったく! 私ならもっと上手くやれるのに!)
( はいはい)
それより、もう19時だしお腹が空いてきた。
僕は電話でピザを5人分注文した。
そして30分くらい経ち……。
ピンポーン。
「 お、ピザが届いたかな」
僕はソファから立ち上がり、玄関へ向かう。
「 おい、今の音なんだ?」
レッド君はインターホンの音に疑問を持ったようだ。
「 ピザっていう料理が届いたんだよ。みんな、夜ご飯にしよう」
僕のその言葉に、4人は目を輝かせる。
「「「「 やったーーー!!!」」」」
「 またこっちの世界の料理が食べられるのか!」
「 俺腹減ったぜ〜!!」
「 早く食べたいわ!!」
「 楽しみです!!」
僕はピザを受け取り、リビングのテーブルに置く。そして蓋をあけ、ピザが4人の視界に入る。
ピザを見た瞬間、全員が喉を鳴らした。
「 じゃあ食べようか。好きなの食べていいから」
僕たちは手を合わせて合掌する。
「「「「「 いただきます!!!」」」」」
その直後、4人はそれぞれピザを食べる。
「「「「 なんじゃこりゃーー!!!!」」」」
お決まりの反応だ。
その直後、ピザの奪い合いが始まった。
「 美味すぎるだろこれ!!」
「 もっと寄越せ! 俺にピザを食わせろー!!」
「 食べる手が止まらないわ! 何これ!!」
「 お、美味しすぎます! 感動です!!」
( こいつらばかりずるいぞ! 私も食べたい!)
( ヨナさんは封印が解けたらね)
( 早く封印解いてくれ!! 大和!!!)
ヨナさんが食べたい食べたいとうるさい。
それにしても凄いスピードでピザが減っていく。
……。あれ、てか僕の分……。
もうピザがない……。
僕、一切れしか食べてないんだけど……。
ピザはあっという間に無くなってしまった。
「「「「 ごちそうさまでした!!」」」」
4人は手を合わせ、満足そうだ。
まあ、喜んでくれたならいいか。
「 よし! じゃあさっきの続きやるぞ!!」
デスタ君は椅子から立ち上がると、コントローラーを手にした。
「 そうね! やられっぱなしで終われないわ!」
レナンさんも気合が入っている。
4人はソファへ座り、マリコの続きをやり出した。
「 はぁ。まだやるのかよ……」
僕はピザの空箱を片付けながら、4人のプレイを黙って眺めた。
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