第2話 初めての異世界

「 …え?」


一瞬、何が起こったのか分からなかった。


《異門転移》を使った僕は、急に目の前が真っ白になり、気が付いた時には空の彼方にいた。


そう、僕は今ひたすら自然落下している。

下は何も見えないくらい高度は高い。

僕は落下しながらヨナさんに話しかけた。


( ヨナさん、僕もしかして死ぬ?)


( 大丈夫だ、安心しろ。てか大和、お前意外と落ち着いてるな)


( ああ、もう意味が分からなくて怖がる以前の問題なんだよ)


僕は今起きている事が非現実的すぎて感情がよく分からなくなってしまった。


( それでヨナさん、ここは異世界の上空って事で合ってる?)


( おそらくそのはずだ。《異門転移》は初めて使う時は転移地点がランダムなんだ)


( いやそれ先に言ってよ…)


ヨナさんと話していると、薄っすらと地上の景色が見えてきた。


( 森? 山かな? どこも木ばかりだ)


( そのようだな)


地上は見渡す限り木しか見当たらない。


( てかヨナさんって指輪なのに景色見えるの?)


( ああ。今までも普通に見えていたんだが、大和が指輪を嵌めたことで、大和の視界が私にも見えるようになった。こっちの方が見やすいな)


( へー、それは良かった。それで、もうそろそろ僕、地面に激突して死ぬんだけど大丈夫そう?)


( 大丈夫だ。空を飛ぶイメージをするんだ)


またイメージか……。


とりあえず今はヨナさんの言う通りにするしかない。


( 分かった……)


僕は、目を瞑って空を飛ぶイメージを浮かべた。


すると……。


( すごい……。空を飛んでる……)


僕の体は宙に浮いた。


まさか空を飛べる日が来るとは思ってもいなかった。

今なら自由自在に空中を駆け回る事ができる。


( これは空間内の重力を操る事で空を飛ぶ事ができる《流飛りゅうび》だ)


( 《流飛》か……まじですげぇ! とりあえずこの森でも探索して……え?)


探索してみよう、と言いかけた途端、後ろに気配を感じ、振り向いたらドラゴンがいた。

そう、ドラゴンだ。よく漫画とかに出てくるやつ。超デケェ。


ドラゴンはとてつもなく大きな牙を剥き出しにして、僕の方に向かって来る。

大きなドラゴンを目の前にし、驚いた僕は咄嗟に【空間操作】能力を使っていた。


( 《異門転移》!!)


……。


( ふぅ、危なかった。無事、我が家に帰還できて良かった)


( 何してんだ大和!! 元の世界に戻って来てどうする!!)


( いやだって、あんな化け物に勝てるわけないだろ。逃げるに決まってるよ)


( いやいやいや、せっかく異世界に行ったのに帰ってくるの早いって!! ドラゴン相手ならいい修行にもなるし!!)


!?


( おい、いきなりあんな化け物を修行相手にするなよ。最初はザコ敵を倒させてくれ。ドラゴンなんてもっと後の方に攻略するもんだろ)


普通のRPGなら、最初はスライムとか倒してレベルを上げていくものだ。それなのに最初の敵がクソでかいドラゴンなんて詰みゲーじゃないか。


( いいか大和、よく聞け! お前は超越神器を身に付けているんだ。それに私だってついている。何の問題もない!!)


( いや、問題あるよ。あんなでかい生き物見た事ないし……。怖いし……。無理だ、もう諦めるしかない……)


( 弱音を吐くな! あんなドラゴンに怖がっていたら、私の封印は解けないぞ!!)


(う〜ん……そう言われてもな〜)


( いける! できる! やれる! さあ大和、気を取り直してまた行くぞ!!)


( いや、行くにしても今日はもう……。また明日にしてドラゴンがいない時に……)


( 《異門転移》!!)


( いやヨナさん! 勝手に能力使わないで!)


僕が話している途中にヨナさんが勝手に能力を使った。

僕は再び異世界へ行く事となってしまった。


そしてまた異世界上空へと来てしまった。


「 《流飛》!!」


僕はとりあえず空を飛ぶ《流飛》を使い、辺りを見回した。


( 場所はさっきと同じところだ……ってことは……)


「 グワァァァォォ!!!!」


( やっぱりいた! さっきのドラゴンだ!)


ドラゴンが大声を上げて、こちらに向かってくる。


( ヨナさん、大丈夫なんだよね?)


( ああ、何の問題もない。ドラゴン如き瞬殺だ!! さあ大和、手の形を手刀に変えてドラゴン目掛けて振りかざせ! ドラゴンを切り裂くイメージでな!)


「 はぁ〜!? 手刀であんなデカいドラゴン倒せるわけないじゃん! てかまたイメージかよ!」


( 私を信じろ大和! ほら! ドラゴンがもう目の前まで迫ってきているぞ!)


「 くそっ! よ、よく分からないけど信じるよ! ヨナさん! オラァァァ!!」


僕はドラゴンに向かってとりあえず手刀を振りかざした。


すると……。


「 ……え?」


ドラゴンは真っ二つに切断され、大量の血飛沫を撒き散らしながら墜落していった。


「 ……何これ?」


( これは空間を切断する《流閃りゅうせん》だ。お前は今、空間ごとドラゴンを切断したんだよ)


「 ……まじかよ」


とんでもないぞ【空間操作】!

まじでやばすぎる!

あんなに大きなドラゴンを一瞬で倒してしまった。


( やばすぎるだろこの指輪……。ドラゴンがワンパンだよ)


( ドラゴン如き一瞬で倒せると言っただろ。何を驚いている?)


( いや驚くだろ普通。ヨナさんもヨナさんでだいぶやばいな…)


この人も色々と感覚がおかしいようだ。


( ヨナさん、ドラゴンは倒せたけどこれからどうするの?)


( とりあえずお前には【空間操作】でできる技を覚えてもらう。ドラゴン如きで毎回逃げられても困るしな)


( ヨナさん、多分ドラゴンを目の前にしたら逃げるのが普通だよ?)


てか、これからもドラゴンレベルのやばい化け物と戦わないといけないのかな……。そうだとすると気が重い。


僕はとりあえず地面に降りた。辺りは一面、木と雑草だ。


ちなみに、家からそのまま異世界に来たから、靴ではなく、スリッパを履いた状態だ。

歩きにくい……。


( よし、それじゃあ修行を開始するぞ!)


( は〜〜い)


僕は森の中で、ヨナさんに多くの技を教えてもらい、修行に励んだ。

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