最強装備の異世界無双〜拾った指輪が異世界で最強のチート武器だった〜

士流

第1話 喋る指輪と異世界転移

僕は幸せだと思う。

毎日美味しいご飯を食べる事ができて、暖かい布団で寝る。

当たり前の事だが本当に幸せだと思う。

このまま普通の生活が続いて欲しい……。

そんな僕の願いは今日で終わる事となる。


僕は龍美大和たつみやまと

身長168cm、体重60kgの黒髪で、どこにでもいる一般人だ。

趣味はゲームやアニメ。

特に目立たないごくごく普通の一般人。


今日は春休み最終日。明日から高校二年生になるのだが、一年生の時とは別の学校に通うこととなる。


両親の転勤の都合で春休み初日に都内のマンションに引っ越したのだが、その両親は昨日、仕事の都合で海外へと旅立って行った。


海外行くなら引っ越す必要なかったくね? とも思ったが、日本では都内で活動するらしいのでしょうがないとの事。


帰ってくるのは当分先らしく、僕はこれから新たな土地で一人暮らしだ。


まあでも、毎日平穏に過ごすことさえできればいいよな……。


僕はコンビニでお昼ご飯の弁当を買った帰り道にそんな事を考えていた。


時間は昼の12時。


( 誰か……誰かいないか……私の声が聞こえないか……)


頭の中に直接声が聞こえてくる……? 女性の声?

何だこの感じは……。


道を歩いていたら頭の中に直接女性の声が聞こえた。


( 誰か、私の声が聞こえないか)


不思議と声がする方角が分かる。この近くだ。


僕は声のする方へ向かい、街路樹の目の前で立ち止まった。

この辺りから声が聞こえる。

とりあえずしゃがみ込んで、街路樹の根元に何か無いか探してみる。


「 ……指輪?」


樹に隠れるように指輪が落ちていた。僕はその指輪を拾うと、女性の声色が急に荒々しくなった。


( おい! お前! 私の声が聞こえないか!? おい! 返事をしてくれ! おい! おーーーーい!!)


「 いやうるせぇな、何だこの指輪」


( !? 聞こえるのか!? 私の声が!!)


「 いや聞こえてるよ……てか何で頭の中に直接声が聞こえるんだ? いやその前に指輪から声がするとか意味が分からないんだけど」


( 良かった、私の声が聞こえる者がいて……。わざわざ異世界へ来た甲斐があった……)


この人……いや人では無いか……。

この指輪は僕の質問に全く答えないし、異世界とか意味の分からない事を言っている。


「 おい、お前は何者なんだ? 異世界ってなんだ?」


僕は色々疑問に思っていた事を質問した。

少し間があったものの、指輪は僕の質問に答えた。


( 私はヨナ。数百年前、身体と魂を分離され、この指輪に魂を封印された。私の世界では私の声が聞こえるものはいなかった。だから【空間操作】能力を駆使して私の世界の空間とこの世界の空間を繋げ、この世界に来たんだ)


「 まじで?」


( まじだ)


「 本当に?」


( 本当だ)


この話が本当だろうが嘘だろうが、指輪が頭の中に直接話しかけている時点で普通じゃない。変な事に巻き込まれてしまったのは間違いないだろう。


「 とりあえずヨナさん……でいいのか? ヨナさんは指輪に封印された異世界人って事であってる?」


( お前から見たらそういう事になるな)


「 なるほど……。とりあえず、色々分からない事だらけだし、もうちょい詳しく説明してくれると助かるんだけど……」


( そうだな。まず、私が住んでいた世界『セガルド』とこっちの世界……こっちの世界はなんて言うんだ?)


「 ここは地球の日本だよ」


( 地球……日本……聞いた事ないな)


「 僕もセガルドなんて聞いた事ないな……。本当に異世界人なのか……」


( だからそう言ってるだろ!)


「 いや、やっぱそう簡単には信じられなくてさ……。ごめん、話続けて」


( 全く……ちゃんと信じろよ。それで、セガルドからこの日本に来た理由についてだが、現状、私は身体と魂を分離され、魂を指輪に封印されている状態だ。身体も別のどこかに封印されている。私は自分の身体を見つけ、この封印を解き、元の私に戻りたいんだ。そのために協力者が欲しくてこの世界に来た。さっきも言ったが、私の世界に私の声が届く者がいなくてな……。こっちの世界に来るしか無かったんだ)


「 なるほどね……」


とても信じられないが、今は信じるしかないだろう。


( だがようやく私の声が聞こえる者に会えた。もう何百年も誰とも会話していなかったが、やはり誰かと話すのは楽しいな。これから私の封印を解く手伝いをしてくれ! よろしく頼むぞ! ……えっと名前は?)


「 龍美大和だ……って、え? 封印を解く手伝い? 僕が?」


( 当然だ!! もちろん手伝ってくれるだろう??)


「 えーっと……」


正直めんどくさい。それに異世界とか封印とか絶対ヤバそうだし……。

危ないよなぁ……。よし、断ろう! ヨナさんには適当な理由をつけてきっぱり断ろう!

何て言って断ろうかな……。


( おい、聞こえてるぞ)


「 えっ?」


( 何故かは分からんが、私はお前の心の声を聞くことができる。こんな事は初めてだ。まあ、お前だけが私の声を聞ける事と何か関係しているのかもな。お前は選ばれたんだ、観念しろ。もうこんなチャンスは二度と無いだろうし、お前が協力してくれるまで永遠に付き纏うからな)


「 そんな……」


( 協力してくれないのならこれから毎日、お前が就寝中にお前のそばへ行き、頭の中にひたすら喋り続け、寝不足にしてやる!!)


「 ヨナさんの封印を解くお手伝いをさせて頂きますので、それだけはご勘弁下さい……」


( そうかそうか!! じゃあこれからよろしくな! 大和!!)


なんかヨナさん、めちゃくちゃ嬉しそうだし、まあいっか。


この日から僕の日常は大きく変わる事となる。


僕はとりあえず指輪兼ヨナさんを家に持ち帰った。


「 それでヨナさん、封印を解く手伝いって何をしたらいいんだ?」


( その前に、私と話すのに声を出す必要はない。私にはお前の心の声が聞こえるからな)


「 確かにそれもそうか。もし誰かに見られたら指輪と話してる変なやつになるしな……」


( それだけじゃ無いぞ。言い忘れていたがこの指輪はお前以外の人間には見えていないはずだ。かつて協力者を探すため目立つ場所に移動したが誰も見えていない様子だった)


「まじかよ。じゃあ誰かに見られたらただ一人で話してるヤバいやつになるな……」


( よし、これからは心の中で話すようにしよう……。それと、あとひとつ聞いてもいいか?)


( なんだ?)


( 何で違う世界のヨナさんが日本語を話せるんだ?)


( ああ。それについては私も気になっていた。私たちセガルドの人間も同じ言葉を使う。おそらく何かしらの理由があるのだろうが今は分からないな……)


( そっか。でもさすがにおかしいよな……)


( 確かに疑問だが、今考えても答えは分からないだろう)


( それもそうだな)


日本と同じ言語の異世界セガルド……。

色々秘密はありそうだ。


( それで、私の封印を解く手伝いとは何をしたら良いかという質問だったな。それでは答えよう! 何にも分からない!!)


( よし! 封印を解くのは諦めよう……)


( ちょい待て! 協力すると言ったじゃないか!)


( それはヨナさんが何かしら手掛かりを掴んでると思ってたから……。大体、ヨナさんは何で指輪なんかに封印されたんだよ)


( ……。この指輪は『亜空あくう指飾ゆびかざり』と云われる『超越神器ちょうえつじんぎ』のひとつなんだ)


( ……? 亜空の指飾り? 超越神器?)


( 説明しよう。まず亜空の指飾りとは、装備したものが【空間操作】能力を扱えるようになる指輪だ)


( 【空間操作】能力を扱えるようになる……)


( そして超越神器とは、遥か昔に生み出された七つの武器の事だ。超越神器を身に付けた者は、強大な能力を使いこなす事ができるようになる)


( なるほど……なんかすごいな……。こっちの世界……地球ではそんな能力が扱えるなんてまず無いよ……)


( そうか。私たちの世界では特殊な能力の備わった様々な武器が存在しているんだ。そんな中でも超越神器は別格で、私は亜空の指飾りを装備して超越神器探しの旅をしていたんだ。そして旅の途中、私はとある神殿で謎の人物に指輪に封印されてしまった。おそらくその人物も超越神器を狙っていたのだろう……。そして私は咄嗟に転移して逃げたのだ。指輪の状態でも【空間操作】能力を使えた事が唯一の救いだな)


( ヨナさんを封印した人物って一体何者なんだ? 何の手掛かりも無いのか?)


( ああ、何も無い。封印されたのは一瞬の出来事でな……。逃げる事で精一杯だった……。それに、人間を物に封印する武器なんて聞いた事が無い……)


( そうなんだ……)


話を聞く限り、かなりやばい事に巻き込まれたっぽいな……。


( それにしても転移できるなんて【空間操作】は便利なんだな。その指輪のおかげ?)


( ああ。この指輪を装備すれば【空間操作】能力が扱えるからな)


( なるほどね〜。【空間操作】能力が扱えるようになる指輪か〜。まじですごいな……。でも大丈夫か? もしかして、この指輪持ってたら誰かに狙われたりするんじゃ……)


( 大丈夫だ!! 私が稽古をつけて戦えるようにしてやる!)


( いやそういう問題じゃないだろ。てか、戦う前提だし)


( まあ何とかなるって! 今話しただろ!この指輪は超越神器! 大和もこの指輪を嵌めれば【空間操作】能力、使いたい放題だ!)


( ……。まじで?)


( まじだ)


異能力……。漫画やゲームの中でしか見たことないファンタジー。それを僕が使えるのか? それはちょっと使ってみたいかもしれない……。


( んー、そうだな、よし! まずは私の世界、セガルドに行くぞ! 大和!)


( え? それって異世界って事だよな? 僕も行けるのか?)


( もちろん行ける。【空間操作】で使ってこの地球世界の空間とセガルド世界の空間を繋げればすぐだ! そうだな、せっかくだから大和がやってみろ)


( え? 僕が? いきなりできるの?)


( ああ、できるはずだ。指輪を嵌めてイメージしろ!)


( イメージって何を?)


( 空間だよ空間! 空間をイメージしてこの世界と別世界を繋ぐんだ! それができたら《異門転移》と言うんだ! )


( 全然分からんわ! 何だよ空間をイメージするって! てか《異門転移》って言わなきゃダメなの? 技名みたいなもんだよな)


( 今後様々な技を使うようになるんだ。自分が使う技を覚えるためにも言った方がいい! それに技名を言う事で、その技のイメージもしやすいしな)


( イメージって言われてもな……)


( いいからとりあえずやれ! やってみろ!)


( わ、分かったよ……)


僕は亜空の指飾りを左手の人差し指に嵌めた。

そして目を瞑り……。


( イメージねイメージ……。ってか空間をイメージってどうやるんだよ……あれ?)


なんだこの感覚は。

今まで感じた事無い感覚だ。

不思議な事にできる気がする……。


( 掴んだか大和。じゃあ異世界へ行こうか!)


「 うん! ヨナさん! 《異門転移》!!」


僕は生まれて初めて異能力を使った。

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