運河を渡る船の、老人

白鷺(楓賢)

プロローグ

運河は、かつて多くの人々の生活を支えた場所だった。船が行き交い、荷物が運ばれ、賑やかな声が絶え間なく響いていた。しかし、時代が進み、運河は次第にその役割を終え、静けさの中に沈んでいった。


誰もが忘れたその運河を、ただ一人、老人が船で渡り続けていた。彼の名は大吉。かつては名の知れた船乗りだったが、今ではただ、荷物を運ぶだけの存在となっていた。


けれど、大吉にとって運河は特別な場所だった。人生のほとんどをこの水路と共に歩んできた彼にとって、運河は過去の思い出であり、現在を生きる糧であり、そして未来を見つめるための道だった。


今日もまた、大吉は運河に浮かぶ船に足を踏み入れた。静寂の中、彼は何を思い、何を感じながら、この静かな水路を渡っていくのだろうか。

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