『短歌の秋』投稿作品
清水 魚心
朝ぼらけ 風か波かと わかぬまに 染まりて寝覚む あきの空色
歌意
夜明け頃、まだうつらうつらしている寝ぼけ眼で真っ赤に染まる朝焼けの空を眺めていた。
風とも波とも分からない、ザーという心地よい音に耳を傾けながら、その美しさにしばらく陶酔していたが、空色はみるみるうちに赤みが引いていき、いつものさっぱりとした青に戻っていってしまった。
(恋の熱に浮かされて、時折起こる小さなすれ違いにも彼女は怒っているのか(風)、ただのじゃれあいのつもりでなんとも思っていないのか(波)、その本心をはっきりさせないまま、でもぼんやりとこの関係はずっと続いていくものだと、そう思っていた。
しかし実際の彼女の心には、まるでこの秋の朝焼けの空のようにとっくに「飽き」が来ていたようで、先ほどまで私に赤らめてくれていた頬も、もうすっかり正気の色を取り戻してしまっていることだなぁ)
情景を詠いながら恋に破れた心情をも描く、我ながらの力作でございましたが、短歌の秋では取り上げられませんでした……
やはり現代短歌はもう少し分かりやすいものの方が人気のようですね。
ちなみに、目には見えない人の心情を季節のものや情景に託して歌にすることを「寄物陳思」というらしいですよ。
なんと言いますか、短歌にグッと奥行きが出ますよね!
『短歌の秋』投稿作品 清水 魚心 @uogokoro
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