2章

第13話 ~ダンジョン探索にはハードルがある~

 魔剣を受け取ってから数カ月が経った、すっかり夏休みも終わって学校に通う日々が再開したのと、この数カ月はD猫の諸事情によりコラボ……と言っていいのかな?そういう類の配信はしていなかった。


 それでも午後のちょっとした時間を縫って毎日配信は欠かさなかったおかげか、チャンネル登録者数は遂に10万人を突破した。


 その記念配信を先程まで家でしていたのだ。


 反響は上々で早く投げ銭をしたいというコメントがちらほらあった。


 投げ銭とは配信中にお金をネットを介して配信者に足して投げれるという仕組みで、何パーセントかはDtubeの運営に引かれるんだけど、それでも投げ銭の収入だけで生活している人は一定数いる。


 私はまだ18歳以上では無いのでそもそも収益化をしていないけど、どうやら親が管理するアカウントならば収益化が出来るらしい?それでおばあちゃんに相談したけど「アンタはまだ早い、確かに収益化の条件は残り年齢のみだが、この歳で大金を手に入れるとろくでもないことになる」と言われて却下された。


 まぁ今すぐ大金が欲しいって訳でもないけど、やっぱりお金は沢山あった方が良い、結局あまり急いでないからそれを考えるのは止めて、大人しく残り数年待つことにした。


 !


 あーあ、魔剣って意外と置く場所に困るな、一応カバーを付けてもらったけど、それでも醸し出される魔のオーラが半端ない、普段ダンジョン攻略用の装備は押し入れの中に保管してあるんだけど、押し入れの中から物凄い視線を感じる。


 そういえばDpediaに書いてあったな、魔石は魔物の魂が具現化されたモノで、それを用いて剣を作成すると稀にその魔物の魂が剣に宿ると、そうして完成されたのが魔剣らしい。


 私は別に気にならないんだけど、おばあちゃんが過剰に反応してくる、今日だって「二階から気持ち悪い気配ばかりして、昨日は寝られなかったじゃねえか!」って怒鳴られた。


 でも、どうしたら良いのだろう……物置に入れとく?いや、その程度の処置してもおばあちゃんは感知してそうだし、そういえば探索者が借りれる倉庫がダンジョン地区にあったっけ……でもあそこ地味に遠いしな、う~ん……やっぱり遠くに行ける足が無いのが難点だよなぁ、あとはわざわざあの魔剣の為だけに倉庫借りるのは面倒だし、やっぱり我慢してもらおうかな。


「ねぇ、聞いてる?」


「え?あぁ、ごめん」


「もうっ、アンタの方から私の家に行っていい?って連絡して来たんじゃん。それなのに完全に上の空……」


 そうだった志穂の家にお邪魔してたんだった……つい自分だけで考え込んじゃう癖止めないとな。


「まぁとりあえず資格試験合格おめでとう」


「まぁってなによ~……ふふ、ありがとう。これで私も一緒にダンジョンに行けるわね、先輩として色々と教えなさいよ?」


「先輩って……志穂があの本貸してくれたから合格できたし、たまたま早くダンジョンに行けてただけだし……まぁ分からない事あったら教えてあげるよ」


「そういえば私も配信やってみたいの」


 やっぱりダンジョンと配信ってどこか切り離せないよね、確か本来は探索者の安否をいち早く察知する為に、探索者専用サイトでの配信を義務付けられてたんだっけ?そういえば最近は配信が義務なんて聞いたこと無いし、何か技術の進歩があったのかな。


「配信かぁ、いいじゃん!やってみたらどう?」


「ぶっちゃけもうアカウントは作ってあるの!まぁアンタの配信観る為だけのアカウントだけどね」


「はは、なんか恥ずかしい」


「何言ってるのよ。アンタの戦い方結構スピード感あって好きよ。私もあんな戦い方出来たらな~」


「志穂の能力ってなんだっけ?」


「あれ、話してなかったっけ?」


「そういう話してなかったし」


「まぁダンジョンが絡まないとそこまで話すことでもないか。それでもアンタは日常使い出来る能力だから、アンタが能力使ってるところは私よく見てたけどね」


「それでどんな能力なの?」


「私の能力はモノを圧縮する力だよ」


「ほへぇ~」


「絶対分かってないわね」


「いや、モノがちっちゃくなるんだよね?」


「まぁ丁度ここにペットボトルがあるし、今から見せるわね」


 志穂はペットボトルに手のひらを向けて、宙を握った。


 するとペットボトルはメキメキと音を立てて潰れた、傍から見たらペットボトルが勝手に潰れた感じだ。


「ふぅ、こんな感じよ」


「すごいじゃん!これなら十分魔物に対して使えるね」


「そう……だね」


「どうしたの?」


「いえ、別に何でもないわ。じゃあ早速だけどいつダンジョン行ける?資格は取ったけれどまだダンジョンに行ったことないの」


 ダンジョンの探索者になるための資格は誰でも取れる、だけどもどういう訳か実地試験とかは無いので、資格は取ったがダンジョンに一歩踏み出せないって人が多いらしい、私は憧れに対して何でもやって来たのですんなりダンジョンに行ったが、そういうのは無い志穂みたいな人は大抵資格を取ったがダンジョンに行けてないって人も多い。


「じゃあそうだね。明日は~日曜か……空いてる?」


「大丈夫だよ。じゃあ明日ね」


「あ、機材はこっちで用意しとくから安心しといて」


「さっすが先輩!」


「な、なんか恥ずかしいから止めてよ~……ていうか、初ダンジョンで初配信って大丈夫?」


「大丈夫大丈夫!いつも通りのアンタを見せてよっ」


 こうして志穂との約束をして、この日は解散となった。


「じゃあ、また明日ね」


「うん、志穂ん家集合で良いよね」


「良いよ、あっ来るとき連絡頂戴ね」


 !


「ふぅ、いよいよ明日か……」


 資格を取れたところまでは良かったけど、なかなかダンジョン探索に踏み出せなかったからな、美瑠っていうきっかけがいて良かった。


 あ~あ、あんな動画観なければよかった。


 あんな動画とは探索者がダンジョン探索中に、魔物達に殺されるという動画で、配信中に起こった出来事がTyowiterで拡散されていた。


 その動画はその後すぐに削除されたらしいけど、私はたまたま流れてきたのを目にしてしまった。


 そのせいでダンジョンに行くのに躊躇いが出来た、だけど美瑠が一緒なら安心、あの子ならもし危険が迫って来ても楽々助けてくれそうな予感がする。


 もう美瑠はTyowiter明日の配信の告知を打ってしまってるし、もう逃げられない状況、私は明日から本格的に探索者だ。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 記念すべき第1章が終わり、ついに第2章が始まりました。


 もちろんいつも通り不定期で更新していきます。


 作者のモチベーションにもつながるので、よろしければ下の☆や評価、フォロー等々での応援よろしくおねがいします。




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