第11話 ~最近のダンジョンは異常です~

「はーい!今回は菅野井すがのせいダンジョンに来てまーす!」


「今日はまたD猫とコラボさせてもらいました」


「ん-オーガちゃん。コラボってなんかよそよそしいよね?ウチら友達だよね?」


「気持ちが早いんじゃない?会ったりコラボしたりするのは二度目だよね?」


「そーおー?ウチは昔一回西塚さんって人とコラボしてもらった事があるんだけど、配信終わった後に「君をカバーするの疲れるわ」って言われて、だから未だに二度目のコラボってのをしたことないんだよね~だから二度目のコラボをしてくれる人は大体友達yeah」


 ”確かにD猫は猪突猛進ガールなとこあるからな”

 ”西塚は死ぬ程毒舌だからな。確か配信中に何度もキレてたよな”

 ”あのコラボは空気悪かった”

 ”ゲームとかで西塚と同じ気持ちになったことあるわ”


 確かに西塚とコラボしてた時はコメントも同接も少なかったな、私も当時配信を観てた時に、西塚ちょっと言い過ぎじゃない?って思ってたけど、実際私がダンジョンに潜るようになって、再度D猫の動きを見てると新人目線でも危ないと思う事が多い気がする。


「人には人の基準があるよね。ウチはレギュラーって思っただけで、まぁ気軽に行こー!」


「そんな乳酸菌みたいに……確かに変に張り詰めちゃうと逆に良くないね」


「そそ、釈迦ちゃんも言ってたよ~弦をあまり強く引っ張るといい音が出ない、その逆に弦を緩め過ぎてもまたいい音は出ないって、警戒の強弱にも同じ事が言えるんじゃないかな?使い方あってるかわかんないけどね」


 ”弾琴だんきんのたとえで草”

 ”弾琴のたとえやんけ!”

 ”D猫ちゃん妙な所で博識なんだよな”


「釈迦ちゃん……友達かな?」


「親友だよ」


「適当な事言わない方が良いよ?」


「さてさて、ダンジョン探索しますかね~!」


「…………えーと、菅野井ダンジョンはまだ未探索の場所が多いんでしたっけ?」


「そうだね!ここはアリの巣みたく上下左右の洞穴がめんどくさくて、あまり挑戦する人がいないんだよね~でも、まぁそんな未開の地を明かすのは面白いし、配信者としても突発的なアクシデントっていう取れ高が生まれるから、結構配信界隈では人気スポットではあるけどね」


「確かに最近はこのダンジョンを探索して、どこまで行けるかとかやってる配信者もいるよね。そんな軽いノリで命掛けるんだって思うけど、それなりに同接取れてるよねみんな」


 やっぱり一人で配信する時とは違って、他にテンション高い人がいると冷静でいられるなぁ。


「うわ~滑り台みたい~~」


「ちょ、ちょっと!?」


 そんな考え事をしてると、D猫が横にある下に続く洞穴に飛び込み滑って行った。


 それを追い掛けるように私も滑る。


「待ってくださ~い!」


「わ、とと……」


「ちょっと!下に魔物がいたらどうするんですか?」


「ん?倒す。こんな風に」


「はぁ……」


 ”D猫は五歳児のように扱わなきゃ、手を離したらどこかに行っちゃうぞ”

 ”娘が小さかった頃を思い出した”

 ”危な過ぎて草”

 ”ナイスワンキル”


「ゴブリンってどこにでもいるよね~」


「まぁそうだね。でも服装とか持ってる武器とかダンジョン事にきっぱり分かれてるよね」


「あ~それそれ、この前Dtube見てたらゴブリンの服装と武器だけ見てどのダンジョンか当てるみたいな動画あったよ」


「変態ですかね?」


 ”意外とオーガちゃんってズバズバ言うよね”

 ”変態やん”

 ”クソ面白そう”

 ”俺も見たw結構正解してて爆笑したわwww”


「そこまでズバズバ言いませんよ」


「そう?結構ナイフ刺さってるよ?」


「D猫なら避けれるでしょう」


「無茶言わないでよ!っとゴブリンの残党め!」


「お話は敵を倒してからですね」


 D猫の猪突猛進具合に引っ張られてゴブリンの大群に突っ込んでしまうが、私の浮遊の機動力と敵の動きを止める重力があれば人数は関係ない、冷静に着実にゴブリン達の首を刎ねて行く。


 ”ゴブリンからしたら鬼だな”

 ”猫又と鬼が無双してる……”

 ”狂気を感じるお”


「はぁ、はぁ、もしかして階層一つ一つがモンスターハウスになってるんですかね?」


「あ~そうかも!他の配信者はバカみたいな火力の魔法とか使ってるから全然気づかなかった!」


「っふ!……これで、最後かな」


「魔石を回収するのってめんどくさいよね。かと言って取らないのはルール違反だし」


「死体が消えないからね」


 死んだ魔物は、魔石を抜かないとその場に残ってしまう、そのせいでなぜか分からないが、下層から魔物が上がってきて上層を荒らす可能性があるので、ダンジョン課が魔物を倒したら魔石を抜きましょうというルールを課しているのである。


 ちなみに魔物が消えるというのは、モンスターサージでダンジョン外に出た魔物も同義で、それで粒子化した魔物の魔力が蔓延して、そこから人々が覚醒するようになったのだ。


「じゃ、次の階行きましょねー!」


「あ!もう……」


 それからしばらく階層を降り、たまに右に行ったり左に行ったりを繰り返していると、入り口以外洞穴が何もない角部屋に辿り着いた。


「うわ~こういうとこってボスとかいるよね」


「それフリにもなってないですよ。なんせもうボス映ってますからね」


 目の前には一階くらいの大きさの巨大なアリ……女王アリ?が鎮座していた。


「あれ、女王アリですかね?」


「デカすぎんだろ…………何々アイツ!ギガント過ぎるでしょうが!」


 ”デッカ!!”

 ”すごく、大きいです”

 ”デカァァァァァァイッ!説明不要!”

 ”女王アリやんけ……”


「でも私達の方を見ても動かないですね。もしかして大きすぎて動けない?」


「イレギュラーみたいだね!体の大きさが洞窟と合ってないもん。それなら任せて!私の能力見せちゃうよ~!」



 横から鋭い魔力の流れを感じた瞬間、D猫は一瞬ブレて剣にはアリの体液が付き、女王アリの背中が斬れていた。


「いや~意外と硬いね!伊達に魔物やってないか」


 D猫の能力は本人が公開している部分だと、瞬神という能力を持っていて本来は加速という能力名だが、本人がそれを気に入らずに勝手に名付けたモノである。


 加速という能力名の通り、身体能力や思考判断力全てを加速させる事が出来る能力であり、加速の限度は本人次第だが、D猫は加速能力使いとしては上澄みの加速力を誇る。


 だが、配信映えしないのであまり能力を使いたくないと本人は言っており、こういうボス戦以外はほとんど能力を使わない短剣一本スタイルで配信をしている。


 ”ハエーーーー!”

 ”やっぱ瞬神エグイな”

 ”俺も加速能力者だけど精々撃たれた弾丸の種類が分かるくらいだから尊敬する”

 ”見えねぇ~~”

 ”隙自語乙”


「相手が動けなくて良かったですね」


「そうだね。この狭い洞窟の中で動き回られちゃ確実に戦いにくい」


「それにしてもやる事地味すぎない?」


「まぁウチら剣が主力だからね。派手な魔法とか使えないし、どうしても見栄え悪いよね」


「取れ高的には早めに討伐しなきゃね」


 ”もう十分取れ高ww”

 ”イレギュラーの時点で取れ高”

 ”イレギュラーマジで多いんよな”


 !


 淡々と女王アリを傷つけて行くと、体液が流れ過ぎたのかいつの間にか討伐していた。


「やっぱり味気ないね。弱い者いじめしてるみたいだよ」


「イレギュラーは討伐しないとだから」


「一方的だし絵面地味だしでグダグダになってきたね~」


 ”アリ討伐乙!”

 ”イレギュラーめんどいよな”

 ”何で最近多いんだろうな”

 ”ボス倒したしやる事終わりか?”


「雑談してもいいけど、配信の趣旨変わっちゃうしな、ここらで一回お開きかな」


「そうだね~最近は短い配信ばっかでごめんね~お疲れさまでした」


 ”乙~”

 ”やる事明確だとこうなるんよな”

 ”お疲れ~~!”

 ”イレギュラー討伐乙!”


「は~い配信終了!美瑠ちゃんお疲れ様~!」


「D猫も乙」


「配信外はD猫辞めない?本名で呼んでよ~!」


「なんか恥ずかしいしD猫呼びやすいし……」


「遠慮無く恵葉めぐはって呼んでよ~」


「う~ん……恵葉、ちゃん」


「それでよろし!美瑠ちゃん帰りプラバ(プラネットバックス)行こ~!」


 なんやかんやでD猫の本名を呼びにくかったけど、これを機に自然に本名呼び合えたらなんかすごく友達っぽくて嬉しいので、積極的に呼ぶことに決めたけど、もしこのままコラボし続けたらD猫にも迷惑が掛かるかもしれない、実際掲示板などでぽっと出がD猫とコラボするな!という書き込みなどがあるし、やはり私も同じことを思ってしまうかもしれない。


 でも、D猫……いや、恵葉ちゃんは一緒に喋ってて楽しいし、色々なおしゃれなお店連れてってくれるし、配信者としてももう少しだけ頼りたい気持ちもある。


 色々複雑な気持ちは混在してるけど、やはりこれからも恵葉ちゃんとダンジョンを攻略していきたいな。


「美瑠ちゃ~ん!早く早く!」


「恵葉ちゃん待って!」

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