第10話 ~休日なのに疲れました~
あのナメクジ戦のあと、私はダンジョン課にダンジョンの現状と、ナメクジの所在を教えて家に帰った。
「ふぅ~ただいま~」
あれ?おばあちゃんまだ帰って来てないのかな?
おばあちゃんはよくどこかに出掛けてるから、ほとんど毎日家にいないけど、お母さんとお父さん、それと美奈を亡くした私をここまで育ててくれた恩人だ。
私はおばあちゃんのおかげで普通の暮らしをさせてもらってるし、学校にも行かせてもらってる、ダンジョンに行くのは少し反対してたけど「美瑠がやりたいのなら好きにしな」と言ってそれを援助してくれてる。
私はいつものようにお風呂に入って、帰りに買って来た食べ物を食べたあと、なにもやることがないので寝た。
!
『モンスターサージ発生!モンスターサージ発生!近隣住民はすぐに非難をしてください!』
「美瑠!美奈!起きなさい!逃げるわよ!」
「な、なに?お母さん……」
「何この音!怖いよぉ」
「美奈我慢しなさい!とりあえず遠くまで」
「成美!もう化け物共がすぐそこまで!」
「何が起きてるの?」
「ウソ……しょうがないわね。私が食い止めるわ!」
「何言ってるんだ成美!」
「私は一応魔力は扱える、安心して二人を連れて逃げて!」
「お母さん、あたしも連れてって!能力?使えるよ!」
「何言ってるの美奈!アナタは戦わなくていいのよ!」
「やだ!お母さんと戦う!」
「お母さん!行かないで!」
「もう、満彦さんこの子達をお願いね」
「ご、ごめんよ!俺も対抗策を持っていたら」
「いいわ、早く逃げて」
「お父さん……」
「美瑠!美奈!行くぞ」
「待って!あたしも行くー!」
「み、美奈……行こ?」
「おい!美奈!」
「おかーさーん!」
「ちょっと、満彦さん!逃げてって言ったじゃない!」
「美瑠!ここで待っててくれ!」
「え、でも」
「美奈ー!」
「きゃ!なに?……爆発、した?お、お父さん?お母さん?美奈?」
「お、重いよー!た、助けてー!おかーさん!力、出ないー!」
「ご、ごめんね美瑠、美瑠だけでもにげ―――」
!
「はっ!」
私またあの夢を見てた……最近はほとんど見て無かったのになんで今更、確かにあの時なにかできるんじゃないかって思って後悔してたかもしれないけど、あの時はなんの能力もなかったし力もなかった、私にできることなんてなにもなかった。
だから仕方ない、仕方ないことだったの……何年も前の出来事を引きずり続ける正確じゃないでしょ?きっとお母さんもお父さんも美奈も、許してくれる……うぅん、きっとしょうがないことだ、美瑠も被害者だって言ってくれるハズ。
「随分思い悩んでるじゃないか」
「おばあちゃん!」
「おばあちゃんだ?俺はまだ現役だよ!昨日だって探索者として依頼をこなしてきたばかりさね!」
「魔力と能力のおかげで、普通のおばあちゃんよりもアクティブなのは分かるけどさ。あんまり無茶しないでね」
「ふん!若者に心配される程年老いた覚えはないさね!さっさと下に下りてきな、朝飯だよ!……まったく、最近の若……」
おばあちゃんは人工覚醒者と言われていて、20年前のダンジョン出現よりも前の人は、ほとんどの人が魔力を扱えても、能力に覚醒する事はないが、おばあちゃんは10年前の第二大災の時に日本の対ダンジョン部隊に所属していて、それの任務で渦中のアメリカにいて、そしてダンジョンから溢れ出る魔物達の量が、魔力兵器では抑えきれなくなったので、苦肉の策として人工的に許容範囲外の魔力を流し込んで覚醒した一人だった。
能力は貯蓄で、周囲の魔力や魔物の生命力を自らに貯蓄できるという能力で、それによって魔物を一撃粉砕するパワーや、80歳超えだとしても身体は40代くらいのままでいられるらしい。
俗に言う当たり能力なのと、元対ダンジョン部隊に所属していたのもあり、最近は政府の命令などを聞いて、日夜ダンジョンのイレギュラーを討伐している。
「え?これ全部私の好きな奴じゃん!て、これって夕飯とかにやる奴じゃ?」
「黙って食え!俺からしたら今は夕飯時だよ!それに最近なんかあったらしいじゃねぇか。オーガちゃんよぉ?」
「え、も、もも、もしかして…………」
「あぁ、俺も配信観てるぞ?昨日は魚
「なっなんで!?」
「はぁ?なんでだと?あの消極的な孫が、唯一やってみたいって言ったモンだからな。そりゃ応援しない手はないだろ?」
「ていうか、昨日はダンジョンに行ってたんじゃないの?」
「あぁ?あぁ、ダンジョンってのは暇で暇で仕方ねぇ、一番の敵はソイツらと言っても良いだろうな。それを潰す為に片手間で見てるって訳だ!他人の戦いってのは見るだけで参考になるからな。俺の能力は他人の経験だって貯蓄する」
いつかD猫が言っていたけど、親族に配信を観られるってこんなに恥ずかしいんだ。
!
私は今日配信をお休みして魔鉱鍛冶屋に来ていた。
魔鉱鍛冶屋では、主にダンジョンに生息している魔物から取れる魔石を、武器や装備品に加工するところで、この仕事をするには色々な資格やそれに見合った能力が必要らしい。
そこで私は一番右端で紫色の金づちを金床に叩きつけて暇そうにしていた、青いバンダナを頭に巻いたお兄さんに話しかけた。
「すいません。このオーガの魔石を使って魔剣を作れますか?」
「なに、俺ん技術で作れないものは……って何だこの魔石は!オーガにしては大きい……アンタまさか……詐称?」
「え、いや。イレギュラーで出現したオーガなので」
「なるほど、あい分かった。俺ん手塩掛けて最高級の魔剣を作ったる!数日待ってくれるかい?出来次第連絡するから俺ん連絡ドキドキしながら待ってて~!」
「ありがとうございます!で、金額の方は…………」
「う~ん、イレギュラーの魔石となっちゃ少々専門的な道具が必要なんだな~道具代諸々込みで…………嬢ちゃん、いくらだと思う?」
めんどくさ、いるよね年齢聞くとこう言ってくる人。
なんか横の列の人は忙しそうにしてるのに、この人だけ暇そうな理由がよくわかった。
「え……と、100万DP、ですかね?」
「嬢ちゃん。惜しいねー!正解は~イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン、ジュウマン!10万DPでした~!DPに細かさ求めたらめんどくさいから、端数切り捨て~!嬢ちゃん、払えるかい?」
「まぁそれくらいなら」
「たは~!お腹太いね~!大分肥えてんじゃないの?」
「失礼ですがお兄さん。モテないですよね?」
「それがなんと意外に僕ね。モテ…………ないんだよね~!いや~残念!彼女募集中でっす!たはははは!」
「あの、もういいですか?」
「あぁ、DPは完成品を渡す時に払ってくれたらいいから。俺への個人的なプルル、期待してるよ?」
電話の事プルルって言うな。
はぁ、なんか疲れたな。休日だし久しぶりに他の配信者でも観るかな…………はぁ
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