第4話 あなたの中にある神を引き出す
僕は、例のスピの女の子についていった。彼氏がいたらしく…その人の車に乗り込み、山道を走り…僕はだんだん、不安になってきた。こんな山奥で、殺されて棄てられたら、絶対に見つからない。
ビクビクしていると、彼女はこちらを見て「天川龍神社に寄ろうか。あそこで待ち合わせをしてるの。私の師匠よ」
あ、そうですか。としか言えず。何を言っても、下手なことをして怒らせてしまう気がしたからだ。
まもなく、その神社に到着した。派手さはないものの、鎮まりかえったその場所は、隣に川が流れていて、大きな龍の置物?御神体なのか、それがしめ縄をかけられて置かれている。僕たちは、手水で手を洗い、拝殿で挨拶を済ませ、師匠とやらを待った。
向こうのほうから、痩せた男が歩いてきた。人がいないので、その人がよく目立つ。
「やあ〜お前かあ、俺を呼んだのは」
と、いきなりその男は僕に話しかけてきた。「???」恐ろしくてたまらなかった。何言ってるんだ??
「じゃあ、先生のところへ行こう。そこで見てほしいものもあるしね🎵」
と、彼女とカレシさん、その痩せた男とまた、車に乗り込んで、走り出した。
僕は…状況がもっと酷いことになっているように気がしてたまらなかった。
車は、神社の場所よりは街中の、ある家の前に停まった。平屋の、和風の家。特に豪華でもなく、変な看板を出しているわけでもない普通の家だ。
その中に案内された。
奥さん。という人が出てきて、夫の助けたい人ですね、分かりました。と言って、お茶を出してくれる。
「で。君は、50人の選ばれた人になっているということだ。何故だかわかるかい?」いきなり痩せた男は僕にこう投げかけた。な?何を言ってるんだ?と思いながら、また下手な返答はできないと思い「え…僕にはそんな、能力とかないですから分かりません」と、調子を合わせてみた。
「俺たちと出逢った、と言うことが、選ばれし50人のうちの一人だってことさ。君は、世界が滅びるとしても、宇宙からやってきた宇宙船に乗って、地球から脱出できる」
「……………」僕はえらいところに来てしまった、と尚のこと後悔が深まった。
「俺の祭壇に来なさい。その変な、狐を取ってあげるから。」「え?」「わかってなかったのかい?彼女が、龍神だと言っただろ?狐は君を騙す為に取り憑いているのだ」僕は、狐に笑われたことを思い出していた。そういえば狐はおとなしい。
そうか、あいつは僕を騙していたのか…
「さあ、祭壇の前に座って。俺が叩き出してやるからさ」
ものすごい、神札をたくさんと、仏像?が山ほど祀ってある祭壇が、部屋の半分を占めていて、僕は倒れそうになるのを堪えるので精一杯だった(怖すぎて)
痩せた男は何やらぶつぶつと呪文のようなものを唱え出して、懐から数珠のようなものを取り出し、僕の背中をバンバンと叩き出した。「出て行け!汚らしい狐よ!我らの選ばれし弁財天様の子に、何をするか!!」え?さっき龍神って言ってなかった?弁財天???「キエエエエエエ!!!!」男は半狂乱になり、僕は呆然とそれを眺めていた。恐ろしくなり、奥さんに目をやった。奥さんは、申し訳なさそうな顔をした。え、分かってるんだ。奥さんは…そう思うと、まともな人が一人いて良かったと、少しだけ思った。
儀式は終わり、奥さんは僕に、塩と水をくれた。「塩を食べたら水を一気に飲んでね」ああー本に書いてあったな、これで祓うんだっけ。僕は取り敢えずそれぐらいなら、と言うことを聞いた。
男の宇宙人の話は、まだ続いているが何を言ってるかさっぱり分からない。
「だからな、この世界は、何百の世界線があり、27次元あるんだ。その中で、善き宇宙人たちは、君のような選ばれた魂を探し出して、この世の終わりに迎えにきてくれると。俺の家に居れば、必ず迎えが来るから。安心したらいいよ」男は唾を飛ばしながらそう語った。
27次元???何だそりゃあ…ああ、でも狐も同じことを言ってたな。君の世界は、たくさんある次元の、たくさんのお前の選択肢の中の一つに住んでいる、と。超能力があると、その次元を超えてパラダイムシフトして、幸せな次元を探し出して移動できるとかなんとか。
日が暮れて、僕たちは奥さんの夕飯を頂いた。その後、痩せた男は祭壇で、なにやら小さな火を起こしている「あれ、大丈夫なんですか?!火事になったら…」「大丈夫ですよ、神様のほのおですから。燃え移りません」と、奥さんが言った。
ああ…やっぱり、奥さんもちょっと変な人だ。僕は絶望的な気分になりながら、お風呂を勧めてもらい、いつ逃げ出すか考えていた。
しかし、もう夜は来ており、その家から出ても僕の家に辿り着ける自信もなかった。かなり田舎のようで、タクシーもあるのかどうかわからない。
そうだ、ブログはどうなったんだろう…あのままにしてしまった。管理人さんからメールは来てないか…「ねえ、あの炎上したブログって君のでしょ」スピ女が後ろから声をかけてきた。僕はびっくりしすぎて「ぎやあああ」と声をあげてしまった。「なによ、有名なのよ、あのブログ。まさか、君が書いてたとは最近わかったんだけど」「え?なんで?名前出したっけ」「ううん。君の、近くの神社とお寺ばかり書いていたから。それに、言ってたじゃん?狐が案内してくれるって。私と話していた時も、狐に案内されると言ってたからもしかして、と思ったんだよね」
僕は頭を抱えた。なんて、なんて僕は、甘いんだ。セキュリティのセの字もないじゃないか。
「取り敢えず今日は寝ようよ。私たちの師匠なら、その辺の行者とかさ、言うこと聞かせられるから、大丈夫だよ」「…?」行者、ってなんだろう…僕は疑心暗鬼になりすぎて、彼女もみんな、僕のブログを見てここに連れてくる為にグルになって、嵌めたのではないか?と思いだした。
「大丈夫だよ♪私たちは、世界平和のためにしか動いてないから。悪いやつは、どこにでもいるのよ。けれどそんな人には、アセンションは絶対にないからね」
「そ、そうですか…」
また、そのアセンションという言葉を聞かされて、誰も誰も、まともではない、いや僕がまともじゃないのか?もう、わからなくなっていた。
痩せた男は、お経か何かを唱えながら炎の中に、何かを入れていく。たまに「キエエエエエエッ」とか奇声を上げながら。
まいったな。とんだ所に来てしまったもんだ。
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