第3話 僕のブログが大炎上

 僕は、一日一回、寺社周りをした記録をつけ始めた。たまには写真入りで、今思えばかなりやばい感じだと分かるのだが、その時は「これぐらいは大丈夫だろ」とたかを括っていた。どうせ誰も読まねーし、と。


ある時、「実は、僕の神様、信じているというか…案内をしてくれる狐さんがいます」という話を書いた。

そこでかなりの反応があった。

あ、別にアタオカだって言われたりはしないんだなと、僕はまた淡々とブログを書くようになった。

しかしある日。

なんと、荒らしコメントがついた。

内容は「霊格低い。こんなことばかり書いて」と。

え?霊格ってなんだ??

僕はすぐにググって、その意味に憤慨した。

魂自体のレベルが低い。という意味だそうだ。なんてことを言うんだ。

一寸の虫にも五分の魂と言うだろう。こんなやつはどういうやつなんだろう…


 そんなことも、すぐに時間が流れて、それ以来変なコメントもなく。僕はまた、神社に行ったり寺に寄ったりしていた。

そうしたら、ある団体の儀式に出逢った。それは、ヤグラを立てて、なんか葉っぱを乗せて、変な格好をしたおじさんたちが、火をつけている。なんだこりゃ。お焚き上げていうものか。それとも、集団キャンプ…にしては、格好が変すぎる。寺でやっていた。通りがかりに、煙が見えたので山の方に歩いてみたら寺に出くわし、その不可思議な儀式を見たのだ。

なんか、ヤバいかな。この人たちに何かされたら…そう思っていたら、はっぴを着たお爺さんにジュースを渡された。

「よう来たね。ゴマキはもう書いたかい」

ゴマキ…?ゴマキていうあだ名の女優さんいたよねと、余計なことを考えていたら「ほらコレね、ここに願意と、名前と数え年書いてね。あそこでお焚き上げしてもらって、仏様に聞いてもらうから」

ああ、なるほど。お寺に置いてある、ペラペラの木だ。なんか梵字が書いてあるやつ。なんだ、これってゴマキトウていうやつなのか。スゲェな。


そんなこんなで、僕は写真を撮り、それをブログにあげた。

「初めてゴマキトウ、に出逢ったよ」と。


その次の日、僕のブログには

「本人特定」の文字が。

え?

「ひょろっとした黒髪の、背の高い男だよね。霊能気取りで護摩祈祷も知らないのかwww」

「この辺に住んでるやつ?バチが当たればいいのにな、何も知らないくせに」

こんな続投のコメントがだんだん、加速度的に増えてきた。僕は変に気持ち悪くなり、そのまま今日はブログを書かずに、戸締りだけ確認して寝た。


 翌朝、恐る恐るブログを開くと…

僕のブログはめちゃくちゃなことを書いてあり、アタオカでーす!僕は詐欺師で、えーと、幻覚が見えたりするので、僕のいうことを聞いたら、壺を買うようにwww

など、書かれていた。それは、ハッキングだった。なぜ??

なぜ?!

ただ、身バレしただけでなんで、ブログのハッキングになるんだ!

僕は怖くなって管理者に通報した。魚拓を撮って、取り敢えず「このブログは僕が書いたものではありません。管理人に相談して、犯人を突き止めます」と記した。


その時には、僕の狐の神様は、笑っているだけだった…

ただ、僕は、神社や寺を巡っているブログを書いただけなのに。

みんなが、僕のことを…いや、それよりも、自分のことが拡散されたらどうしようと、最も恐ろしい気持ちが上がってきて、眩暈がした。


僕の狐さん、笑ってないで助けてよ。心の中でパニックになりながら、そう叫んでいた。あくまでも心の中で。

狐さんは「しるか!この日をどれだけ待ちわびたか!お前が地獄に落とされたら、俺のものになるんだ。お前が俺の力を使ったんだから、その命は俺が食べられることになる。契約しただろ」

「知らないよ、契約なんてしてないだろ!君は何者なんだ」

「けけけけけ。ザマァ。俺様は宇宙一強い、狐だ。ファイアフォックスだ!」

僕はいよいよ、病院へ行かなければならないと思った。しかし、世間体がある。僕の親は絶対に許さないだろう。なんとかしなければ。

「僕は、どうしたらいい」ただ、誰でもいい、そうだこの前の、ゴータマ・シッダルタ、お釈迦さま、僕を助けて。必死に祈っていた。僕はまた隣の寺に駆け込もうとして、ドアノブを掴んだ。その時、玄関ポストの中に手紙があるのを見つけた。

だいたい予想はついた。どうせまた嫌がらせだ。相手は僕を特定したと書いていたし。ただ、ちょっと興味があって(そういう好奇心が命取りになるのだが)僕はその手紙を読もうとした。

「君は、こちら側の人間。僕らに、ついてくるなら、警察には頭がおかしい奴がいるとは、通報しない」と。

「…………」

おそらくこれは、何も知らない嫌がらせだろうが、放っておくわけにもいかない。

ブログ管理者の回答を待つ前に、僕は、警察に引き渡す。と、ブログに追記で書いた。

そうしないと、暴徒化した奴らはきっと止まらない。

これが現実だろ。何が、アセンションだ。何が、音叉だ。現実は…

「でもよ、よく見ろよ。お前にコメントしてくるやつは、みんな、霊格だの、化かされているだの、同じことを言ってるぜ。どのみち、似たような連中なのさ。アホな女の、顔だけに引っかかって、馬鹿な奴。あははははは」

僕の横で狐が笑う。

ただし。それだけはナイスヒントだと気づいた。つまり、似たような世界を持った人間が犯人だということだ。では、あの寺の場所にいた人。あるいは、はっぴの爺さん?あるいは…あの変な格好をした、儀式の人の中にいるのか。


 僕は、部屋中に置いてあった集めていたそっち系の本を全部ゴミ箱に捨てた。こんなバカな話があるか。

電話がその時、鳴り響いた。非通知だ。出るわけない。

しかしその電話はずっと2時間も3時間も鳴り続けた。僕は恐る恐る、電話に出た。

「宇宙の話、聞きたくない?私の師匠なら、あなたを匿ってあげられるけど」声の主は、あの時の女の子だった。あの、スピ勧誘の。

電話番号、変えたのか…?

分からないが、取り敢えずその子が、慣れているというので対策を教えてもらうことになった。

 とんだ一日になったもんだ…

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