第3話

白い花が咲き終わったあと、やがてヤマボウシには赤い実がなる。

良く見るとちょっとラズベリーにも似た小さな実は、いかにも固く

そしてとても控えめに、茂った葉陰から顔をのぞかせているので、

実は最近まで気が付かずにいたほどだ。

食用しても害はないとのことだけど、それほどそそられる外見でもないので

味見をしたことはなく、もっぱら鳥やリスが口にしているようだ。


そういえば、生まれ育った実家の庭にはユスラウメの木があった。

「ゆすらうめ」と打ち込んだパソコン画面に、自動変換で「山桜桃梅」と表示されたのだが、漢字ではこう書く?意外にも華麗な表記でびっくり、、、

確かに桃のような、桜のような、薄いピンクの小さな花が咲いたと思うけれど

もっぱら思い出すのは、これも小さなルビーレッドの実の方だ。

こちらはいかにも艶々と、やわらかそうな薄い皮につつまれていて食欲をそそる。

摘み取って口に入れると、甘酸っぱい果汁がはじけてなかなかに美味しいのだ。


それほど大きな木ではなかったが、枝から実を取るには精いっぱい腕を伸ばした覚えがあるので、あれはまだ7~8歳のころかしら。

50年以上前のことなのに、掌に集めた赤い実のうっすら産毛の生えた薄皮の感触を

いまでもまざまざと覚えている。

昨日のことでさえ、たびたび忘れてしまう今日この頃だというのにね。







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