第2話

ヤマボウシは、根元から数本の幹が四方に延びる性質のようで、

さらにそこから多数の細い枝が張り出してくる。

剪定などせず、たまに邪魔な所を自分で払う程度の手入れしかしていないので

初夏から秋口まで、濃い緑の葉がこんもりと茂ると

格好の止まり木であるらしく、いろんな小鳥が立ち寄って行く。


一度カーディナルが巣をかけはじめたのに、意地の悪いリスが途中で邪魔をして

追い払ってしまったことがある。

近くの別の木で子育てをしたらしかったが、ある時まだ産毛の残るヒナ鳥が

ヤマボウシの一枝に止まって鳴いているのを見た。

近くの巣から落ちてこの木にはい上り、親を呼んでいるのかしら。

窓のうちから覗いていると、どこからか親鳥らしきカーディナルがやってきては

口移しに餌をあげている様子だった。


後にバードウォッチングが趣味の知人に尋ねると、ある程度ヒナが大きく育つと

ダニなどが着いた巣を離れ、近くの木の上で子育てをする事はよくあるのだそうだ。

以来、このヤマボウシにはカーディナルの姿をよく見る。

自分の育った場所を忘れずに、里帰りでもしてくるのかと思うくらい。

たまに枝から枝へ追いかけっこをしているようなオスとメスがいると、また

巣をかけてくれないかな、、、と期待もしているのだが、

残念ながら未だ2度目の幸運は訪れていない。







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ヤマボウシの木陰から @kashiwarisu

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