第3話 コヨーテとの闘い

 その時、僕は中学三年生の頃の教室に居ました。

 入口の扉は開けっ放しに成って居ました。


 その入口から何やら近づいて来る気配を感じました。

 のしのしのしっと入口近くに迫って来ています。


 僕は息を殺し、入り口を見入っていました。


 なんと、そこに現れたのは一匹のコヨーテでした。

 息を荒げ、僕を覗っています。

 コヨーテに抗う物は何一つ有りません。

 僕は素手で立ち向かおうと覚悟を決めました。


 眼と眼が合った瞬間、コヨーテは僕に向かって牙をむきながら駆け寄って来ました。危うく、その一撃を交わしましたが、コヨーテは次の攻撃の構えをして、間合いを計っています。


 来ました。

 今度も危うく逃れましたが、どうやら、ケリを着ける気でいるようです。


 そこで、僕は咄嗟にベランダに逃げ、扉を閉めました。

 一安心も束の間でした。

 確かに窓の外にはベランダが有った筈なのですが、今は影も形もなく、僕の足下には建物に沿って30センチほどのコンクリートの出っ張りが有るだけです。

 気を抜くと、下に落ちてしまいそうです。

 その下を見ると、霞が掛かって居て何も見えません。


 すると、霞の中から何かが僕に向かって来ました。

 近づくにつれ、それがコヨーテだと分かりました。

 それこそ、空を蹴って飛び上がってきます。


 さっき迄とは違い、足下が覚束ない状況です。

 今度も払い退ける事は出来ましたが、何処かに手傷を負って居ました。

 痛みは感じませんでしたが、確かにその感触は有りました。


 そうこうしている内に、又、霞の中から次のコヨーテが僕を目がけて飛び上がってきます。


 僕は壁伝いに隣の教室に窓から逃げ込みました。

 窓を閉めて、もう、これで大丈夫と振り返った時です。

 なんと、数え切れない程のコヨーテが涎(よだれ)を垂らしながら、じりじりと僕との距離を縮めて来るでは有りませんか。


 『万事休す』と、ここで目が覚めました。


 

 

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