林檎姉妹
林檎がひとつ、落ちてきた。
青い葉ふたつ、揺れていた。
綺麗な姉妹が輪になって、小声で歌を歌っている。
姉は白いワンピース。妹は黄色のドレス着て。
「りんごよ、りんご。お前は甘くて美味しいかい」
「りんごよ、りんご。お前は不味くて酸っぱいかい」
姉妹の高い歌声に呼応するように、あたりの葉むらがざわめいた。
「りんごよ、りんご。お前はやわくて熟したかい」
「りんごよ、りんご。お前はかたくて青いのかい」
姉妹の囲む輪の下には、まるで熟したりんごのように頭の中身を真っ赤に晒した大人の男が、血を流して倒れている。
その異様な状況にも、姉妹はとんと無頓着に、変わらず歌を歌っていた。
「りんごよ、りんご。お前は娘を殴ったかい」
「りんごよ、りんご。お前は娘を犯したかい」
応えるものは誰ひとりなく、ただりんごの木の下を、やわらかな微風が吹いていった。
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