雨乞い

 願いが空から降ってくる。祈りが地から湧き上がる。

 ——そして祭りは終焉に向かう。

「雨だ! 雨だ雨だ雨だ!」

 希望が水滴となって降り注ぎ、俺たちは大きな口をあけて喝采を叫んだ。叫んだその口に雨水が入ってくるのも構わない。

 むしろ、それは大きな喜びだった。

 俺たちは身体がびしょ濡れになるのも構わず、雨のなかで踊り、歌った。

 恵みの雨は地面に無数の穴を穿ち、吸い込まれて消えていく。雨が降るまで踊るらしいどこかの国の呪術師だって、俺たちの姿を見れば目を見張るだろう。

 俺たちは、本当に、ありとあらゆる手を尽くしてきた。気象庁からの情報を分析し、人工的に雲を作り出すために火を燃やした。最後には上空の空気を冷やすため、気球に大量のドライアイスを積んで飛ばしさえした。それらが実を結んだのかはわからない。だが、事実、こうして雨は降った。

 俺たちは勝利の雄叫びをあげ、何度も腕を突き上げた。

 この辺りが異常気象で砂漠化したわけでも、日照りで農作物が取れなくなったわけでもなかった。笑いたければ笑うがいい。しかし、俺たちにとってこの雨は何よりも大きな問題で、信じられないほどの大事業だったのだ。


 こうして中止になった体育祭は、しかし、後日、別日に行われた——嘘だろ。

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