第二話 俺、父になる?
「新入生徒の諸君、初めまして、関東発現者養成高校校長の
やばい。俺は今危機に瀕している。腹がすごい痛いのだ。とてつもなく漏れそうなのだ。くそぉ、入学式(兼始業式)だと言うのに、なぜこんな時に・・・
あぁもうダメだトイレ行こ。俺の肛門括約筋は十分活躍してくれたが流石に限界らしい。俺はぎこちない歩みでトイレに向かった。
トイレnow。
フッーウフーウッ、物凄い息む、息むのと同時に腸が動く。今回のブツは大物ということが腸の動きからわかる。フウッー、フウー、良いぞ、あともうちょっとで出てくる。ここからは肛門括約筋の柔軟さが求められてくる。こんな大物だが、今回もきっと活躍してくれるに違いない。フー、ハー、フー、ハー、一旦息を整える。ブツはもう出口の間近にいる! こういうのは勢いが大事なのだ。
フッ!!!!!!
思いっきり腹に力を込める。こ、これはなかなかにでかい。
う、うまれる〜。
ぽちゃっコロン。
何か重いものがトイレの水面に触れ、水がはねる。その水が尻に触れると同時に、硬いものがトイレの陶にぶつかる音がする。何やら嫌な予感がした。
恐る恐る背中を曲げ、股からトイレの底を覗く。そこには黒い卵型の物体があった。
「なん・・だ?・・これ?・・・卵?」
思えば、ウイルスを注入したときくらいからだろうか、嫌な予感がしていたのは。
三十分前
綺羅星さんが異形を倒した後、俺たちはブラックボックスの30階に来ていた。
「あのぉ、この後の予定とかってどうなってるんすか」
「ウイルス注入の後、体育館に行って入学式さ。それより敬語が崩れているよ。気をつけたまえ」
「はい」
キリリとした眼をこちらに突き刺す彼女。
それに耐え俺は尋ねる。
「というか他の生徒達はどこにいるんですか?」
「とっくに体育館に集まっているさ、今頃は来賓の挨拶がはじまっているだろう」
そうだ、俺は元々かなり遅れて東京駅へ到着した。そしたら東京駅の外で異形が暴れていて・・・・・・もっと遅れてしまったんだ。
「ここだ」
そう言って彼女は立ち止まると右側にある部屋を指差す。
「入りたまえ」
俺は期待と少しの不安を胸に、ドアノブへと手をかけた。
キィイと音を立て扉は開く。その中では一人の女性が机に手を置き、椅子に腰掛けていた。その綺麗な手は、薄いビニールのベールに包まれ、注射器を持っている。艶やかな青紫に光る髪を垂らせているその女性は、豊満な肉付きをしていた。アメジストのような眼に口元のほくろが、男児の性を煽り立てる。
魔女のような笑みを浮かべている彼女は
「あら〜キミが最後の一人の圭介くんね〜早速だけど、そこの椅子に座ってク・レ・ル?」
人差し指を左右に振りながら、おちゃらけている彼女は男心を揺さぶってくる。俺はバクバクと心臓を高鳴らしながら席についた。
「じゃあXウイルスを注入するから、利き手と逆の手を出してね〜」
強張った腕を長机の上に置く。
「もー緊張してるの〜? そんなに硬くなっちゃって。まあ、そっちの方が血管が浮き出るから注射しやすいんだけどね〜」
「ちくっとするから我慢してね❤︎」
彼女の甘い声色に心臓の鼓動はさらに速まっていく。緊張で頭がフリーズしている間に、どうやら注射は終わったようだ。
「ありがとうございました」
俺は勢いよく頭を下げた。
「注射したとこ5分くらい抑えててね」
「は、はい」
俺は頭を下げたまま大きな声で返事をする。思えばこの時から、嫌な感覚がお腹の辺りを刺激していた。だがそれよりもウイルスを注入したことによって能力を得たことの方が嬉しかった。やっと
「おい、いつまでお辞儀をしている。さっさとこちらに来たまえ」
綺羅星飛鳥は少し苛立っているようだった。俺がモタモタしていたからだろうか。
これ以上刺激しないためにも、早く彼女のところへ急がなくては。
俺は精一杯の力を足に込めた。
そうして俺は30階から、高校の体育館がある32階へと移動し今に至るわけだが・・・
なんなんだこの黒い卵型の物体は? ・・・・ん? 何やら水面が揺れている? いやこれは卵のようなものが、・・振動している?!
目が離せない。何かがおかしいことはわかっている。なのに目は動かない。その卵のようなものに俺の目は釘付けだ。
遂にその時は訪れる。
大きく卵が揺れたかと思うと、大きなヒビが縦に入る。そのヒビは次なるヒビを呼び込んでいく。
ポチョン、と音が聞こえたかと思えば
体は黒く、黄色い眼を持っている、まあるっこいナニカ。何だこれは????
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