第21話 昼寝騎士と恋模様
――――王城のパーティーか。
貴族同士の駆け引き、作り笑顔に隠された陰謀……色んなものが渦巻くこの場でも、料理とスイーツの味は、相も変わらず最高である。
「美味しいものいっぱいあるでしょう?」
一緒にソファに腰掛けるティルダさまが声を掛けてくれる。
「えぇ、美味しいです!」
前世で言えば……洋菓子か。いや、洋菓子だけじゃなくて、おかずも食べなきゃだけど……やはり洋菓子が美味しい。
お父さまと兄さんが挨拶回りの間、私はこうしてティルダさまとソファー席でパーティーの食事をだなんて、贅沢だけれど。
今日は初めてなのだからと、お父さまが勧めてくれたのだ。
私としても、ティルダさまと一緒はありがたい。
「追加持ってきたよ」
そして料理を取り分けて持ってきてくれたのはグレンである。
「ありがとう。そう言えばルークは……?」
「一緒ではなかったのか?」
グレンが意外そうに答える。
「むしろグレンと一緒にいると思っていたのに……」
まさかルークったら、また昼寝ぐせが……いや、今夜だし。
「探しに行ってみようか」
まさかとは思うが……迷子じゃないわよね……?
「あら、たまにはいいんじゃない?何かあればアールの名前を出しなさいな」
ティルダさまったら容赦ない……。まぁ、お父さまに迷惑はかけないよう、気を付けるにこしたことはないわね。
「ちゃんとナイト、するのよ?グレン」
「もちろんです、母上」
グレンが頷く。
こうして私とグレンは、パーティー会場の中でルークを探すことにしたのだ。しかし……騎士としてエスコートしに来たはずが……どこに行っちゃったのよ。
とは言えパーティーホールの中心はひとが多すぎる。
「もし昼寝を決め込むとすれば、ひと気のないところじゃないかしら」
「それはあり得るかも」
グレンが苦笑する。
「でも夜に寝るのなら、普通に就寝って言わない?」
「そうよねぇ……ガチ寝してたらどうしよう」
「それはそれは……」
グレンとの間に笑みが漏れる。
「あれ……ねぇ、あそこ」
カーテンの向こうから、ちらりと見えた背中に見覚えがあったのだ。
物音をたてぬよう、恐る恐る近付いて見れば、ルークの他に、男性の声がする。
あれ……この声って……まさか……?
「私はお前にも、相応の地位を与えたかったのに」
へ……陛下!?
何でルークが陛下と一緒にいるのよ……!?
「そんなの、俺の柄じゃねぇんだよ」
しかしその答えは、明らかに陛下に対する口の利き方ではないのだけど。
「だが、アールが彼女を守るために、彼女は公爵令嬢になった。長らく浮わついた噂もない公爵か養女を迎えたのだ。今に縁談が舞い込むぞ。お前はそれでいいのか?」
「……それは」
ダメだと……言って欲しかった。
でも、そう言う理由が彼にあるはずがない。
「それも、貴族の責務だろう」
そう……よね。
私は、貴族で公爵令嬢なのだ。
この胸に抱いた気持ちに気が付きつつも、必死で押し込めていた何かが崩れていくのが分かった。
――――私は、ルークを……あの大好きな背中を……追い掛けてはいけないのよ。
「……る……ミシェル……?」
グレンの心配する声など届かぬほどに動転していた。
「……ぇたち、どうして……」
「……父上っ」
陛下の側に侯爵さまがいるのは当然のことで、でも、ルークがいるのは……分からないことだらけで、さらにはルークの言葉に動揺して……もう、何が何だか分からないわ。
その後どうやって帰ったか分からない。ただ、私たちがなかなか戻ってこないことで焦ったお父さまと兄さんがティルダさまと私を迎えににて、いつの間にか屋敷に帰っていた。
そしてその夜……昼寝騎士は帰って来なかった。
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