×を×してくれる×を×しに

@Akatuki_rei

少女と救い人

建物の屋上へ歩いていく。

階段を上り、ドアの前に立つ。

ドアを開くと少女がフェンスのすぐ側に

立っていた。

人に見られないために屋上に来ているのだから違うところに行こうと思い、来た道を戻ろうとする。

少女「ねぇ、お兄さん帰っちゃうの?

今日は早いんだね。」

戻ろうとした足を止め、少女の方を向く

『僕がここで何してるか知ってるんだよな?』

まさか見られているとは思っていなかった。

少女「うん、見てたから知ってる。

あ、安心して!誰にも話してないからね。」

嘘をついてるようにも見えずとりあえず

信じるしかないようだ。

『なぁ、なんで僕がやってる事を知っててここに来たんだ?』

少女「んー秘密にしとこうと思ったんだけど特別に教えてあげる!あのね×を×してくれる×を×しに来たんだ。」

こんな幼い子がなぜこんなことを言い始めたのだろうか。

少女が言ったことに対して少し胸が苦しくなったような気がした。よく分からないな…。

少女「だからお兄さんに会いに来たんだ〜。でも今のお兄さんにはダメだから、とりあえず約束ね!」

なぜ今の僕にはダメなのだろうか。

これ以上は答える気がないと言うように景色を見始めた。

帰る気もなさそうだし、もう知られてるからいいかと思い、普段通りに食事などをして、少女の隣に座りボーッとする。

それからどれくらい経っただろうか。

少女「おーい、お兄さん!もう帰るからね。また来るね〜。」

そう言い残し行ってしまった。

…少し寂しいような気がした。


次の日に少女は来なかった。

次もその次も…。

怖くなっただけだろうと思い、気にしないようにしていた。

少女が来ない日が5日続き、なぜ来ないのか考えてみることにした。

少女の服装を思い出して、あの暑い日に

肌の露出がないことに気づいた。

最悪な自体を想像してしまい、フェンスに飛びかかるように走っていき、いつも僕が見える位置を探す。

すると向かいの建物に少女が見えたような気がした。

何も考えず向かいの建物に走り出し、気付く。こんなに胸が苦しいのは…。

気がつくとドアの前に立っていて、念の為フードを深くかぶる。

チャイムを押すと男が出てきた。

男「なんの用だよ」

『あなたの娘さんに用がありまして。』

男「あ?お前なんて知らねーし、娘なんて出すわけねーだろ!さっさと帰れ!」

ドアを閉められそうになり、とっさに足を入れた。

『あの、すみません。泣くような声が聞こえるんですけど。』

男「ちっ、めんどくせーな。おい!黙れよ!」

少女が居るであろう方に振り向いた男の頭に目掛けて殴る。

上手く当たったらしく男はそのまま倒れ込んだ。

そのまま家に入っていくと少女がびっくりした顔でこっちを見ている。

少女「え、あ。お兄さん?なんでここに?」

返答に迷って黙ってしまう。

少女「お父さんに外に出たのばれちゃって出れなくなっちゃったんだ…」

悲しい笑顔をして微笑んだ少女の頭を撫でたくなって近づくとなにも着てないことに気づいた。

周りを見渡すと少女の服であろうものが散らばっている。それを拾い集め、少女に手渡す。

少女「うん、今のお兄さんにならいいかな。ねぇ私をあの場所まで連れてって。」

着替え終わった少女を抱え、屋上へ向かう。

少女「久しぶりだね。って言っても1回しか来れてないんだけどね。…お兄さんあの時の約束覚えてるよね。叶えてくれる?」

もちろん覚えている。ただ僕の気持ちとしては叶えたくない。

『…君がそう望んでるなら僕は叶えるよ。でも最後に一つだけ、君の名前を教えてくれないかな?』

少女は少しびっくりしたような顔をして言う。

少女「そういえば私の名前も言ってないしお兄さんの名前も聞いてないね。えーと私の名前は蒼空(そうあ)って言うんだ。初めてお兄さんと会ったあの日のような快晴のことを言うんだよ。今日もあの日みたいに暑いね。」

あの日みたいなんて言われるまで気付いていなかった。

だが最後だから覚えておこう。

『僕の名前は夜空(よあ)って言うんだ。ありがとう、僕の願いを聞いてくれて。…空も名前もすごくきれいだね。』

蒼空は少し微笑み、耳を貸してくれとジェスチャーをしてくる。少し屈んで耳を近付ける。

蒼空「××××。…夜空さん、ありがと。さようなら。」

離れていく蒼空を見つめるしか出来なかった。

蒼空は僕が愛用しているナイフを拾い、自分の首を目掛けて振りかざした。

少し立ち尽くしたあと蒼空の望みを叶えるため

蒼空の手からナイフを取り、切り取って口に入れる。

夜空『…美味しい。ねぇ、蒼空。僕も好きだったよ。でもさ「私を殺してくれる人を探してる。」なんて言われたら伝えらんないじゃん…。』

日が暮れるまで泣き続け、蒼空の手だけを残し

手を繋いだまま同じ場所を切った。

夜空『おやすみ、蒼空。』

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