九十四日後・夜

 夜になっても羽金うこんは検察庁に詰めっぱなしであり、一条いちじょう既読きどくもつかなくなってしまった。ここ最近誰かに振り回されたり、色々なことが立て続けに起こったりしていた白金しろがねはとにかく一人でじっくりと考察する時間がなかった。持っている情報を一旦整理し、洗い直して考えるためにも、静かな時間と空間を必要としていたのだった。


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 ここまで色々とありすぎたせいで、情報がごちゃまぜになってしまっている。今後俺たちがどう動くかに関わらず、このままでは正しい判断ができるか怪しいな。一旦じっくり整理して重重要点や疑問点を洗い出してみよう。


 1. 連続不審事故について ~てきろう~

 頭が見つかっていない、切断面に食い荒らされたような跡がある、出血量が異様に少ない、当事者は全員同じ〝暴走族〟チームに属していたなど、共通点が多数見られる他は手がかりもなく、事故として処理されている。動機も犯人も凶器も存在しない事件は存在しないのだが、今の俺は〝そういう論理が通用しない相手〟が関わっていることを知っている。

 そして、それが行動原理としているのが〝てきろう、いしわう、にえは首をまつたてまつる〟の御言葉であり、とある神社で氏神うじがみとしてまつられていた〝白蛟しろみずち〟の御言葉と伝わっていた。


 わたしは、いのちを、たてまつる。

 このくび、くらわせ、とがつぶし。


 遺留物や現場の状況から判断すると、事故当事者に襲いかかった怪異は〝敵はろう〟だ。ということは、彼らは敵として認識されていた――これは一条の説明のとおりだろう。

 現時点で分かっていないこと、その中で分かっておいたほうがいい謎は二つ――

 彼らは一体何をして、白蛟しろみずちに敵と断じられたのか。

 そして、それは一体どこで行われたことなのか。


 2. 自殺者について ~いしわう~

 最初は、一条に何かを依頼した人物が自殺した際にのこした言葉をもってしか一連の怪異との接点が見いだせなかったが、ここにきて新たな情報を得ることができた。


『ダム湖で事故死した三宅輝美みやけてるみの交際相手だった小泉時英こいずみじえいと、車に同乗していた高田義則たかたよしのりの両名が首吊り自殺していた』


 彼らが自殺した詳細は伝わっていないが、死んだのはいずれも仏滅ぶつめつの日で、ひらがなだけで濁点のついていない奇妙な遺書いしょが残っていたりと、俺や一条が見ればすぐ判る共通点がある。彼らが亡くなったのは小泉が先で筒井つついの後、高田が小泉の後に、自宅で首を吊っていた。

 この情報は俺が独自に調べ上げたものだ。どこにどんな情報網を築いているのか分からないあの一条も把握していないネタだったが『さすがに遺書いしょ書いて首吊った奴のことまでいちいち追いかけられるかいな』とある意味もっともな反応を返された。

 そしてその十日後に、出水いずみが死亡している。つまり現時点で判明している〝白蛟しろみずち関連での〟自殺者は一条の依頼人を含めて三人だ。

 その際、一条の依頼人が白蛟しろみずちの御言葉を発してから亡くなったという。


 わたしは、いのちを、たてまつる。

 このくび、ゆわえて、つゆはらい。


 一条の説明によれば、彼らは露払つゆばらい、要は邪魔者を排除する体で始末された可能性が非常に高いということだったが、俺が考察してみても〝他のケースと比べれば人選に脈絡がない〟と思えてくるので、確信ではないものの一条の言葉は一定の説得力があるとみていいだろう。


 ――ただ、一条が重大な隠し事をしている証拠もここにあった。彼女の言動行動をつぶさに観察してきたが、彼女は確かに嘘を言っていない。しかし――

 本当のことを答えていないことはもはや絶対に確実だ。


 3. 出水滋利いずみしげとしおよび蛍火玄香ほたるびはるか変死事件について ~にえは首をまつたてまつる~

 現状俺たちが抱えている情報、そして警察と検察が有する以上の話はない。そっちで捜査が行き詰まりを見せている以上、ここからさらなる発展は見込めないだろう。ただし、俺たちが持っている情報を渡すか、あるいはすべてを根底からくつがえすような証拠でも発見できれば別だ。しかしそれはほぼ不可能だろう。警察や検察にオカルト方面の情報を納得、受容させる手段は皆無だ――それこそ羽金のように〝自分の命が危険に曝される〟でもなければ。


 出水は自殺した高田から十日後に死亡したが、その際仏滅ぶつめつの日が一回飛んでいる。もちろんそこで誰か俺たちの知らない人物が被害にっていた可能性もあるが、一条はとある可能性を指摘してきた。


『〝つきいきます〟……つまり次行きますとメッセージがきたときに何でもいいから返事だけ返しときゃ、もしかしたら待ってくれたりとかするんちゃうか』


 一条いわく、出水のスマホにあったメッセージで唯一〝うさぎによろしゅうな〟と返信しているケースが気になっていたらしい。確かに俺も、誰とも分からない相手から訳の分からないメッセージが送られてきたら、詐欺やマルウェアを疑って……そこまで行かなくても怪しくて返信なんかしないだろうとは思う。ただ、思いついたらやってみようというのが一条であり、彼女の言葉によれば『別に違っていた所で何か損する訳でなし』ということで、俺たちがそのメッセージを受けた時に何か返信してみよう、ということになったのだった。


『〝くるな〟と〝きてみろ〟……か。メガネは臆病ビビリやし、パンチは無謀アホやな』


 その結果は一条の予測に沿ったもので、〝つきいきます〟を受信した直後の仏滅ぶつめつは飛んで、その次の仏滅ぶつめつの日に〝いまいきます〟とメッセージが続いたことで確信したと彼女は言った。そこで確信できた理由は色々あるが、今はこの事件に集中しよう。

 後日『パンチとメガネで、一方が送ってもう一方が送らんように実験すりゃよかったわ』と悔しがっていたのを見た時、一条はやっぱりこの状況を楽しんでいるとしか思えなかった。

 蛍火玄香については、死亡する数日前に義理の姉の蛍火皓子ほたるびひろこが面会に訪れ、その時の会話の流れから〝白蛟しろみずち〟のことが書かれた本を送って貰っている。出水から〝御白蛟様おしろみつちさま〟の名前だけ聞いて、詳細は本で読んだ――その時はっきりごえんが繋がったのではと、伊知朗イチローは見ていた。それ以上に説得力のある推論が思いつかないし、今はそこを指摘しても意味がないのでそれで問題ないだろうと考えよう。

 そして彼らが殺された目的は〝にえは首をまつたてまつる〟のとおり、生贄いけにえにするためだ。ただし、この二人だけでは何の生贄いけにえに捧げられたのか分からないと、一条は言う。


 4. 榎土浩司えのきどこうじ変死事件について

 一条が誰を情報源にしているのかは分からないが、俺以外にも警察に協力者がいるとみても差し支えないだろう情報を一条は持ってきていた。


 三宅の死亡現場だったダム湖をさらうと他にも死体が揚がってきたということだが、その中に〝首が明らかに斬り落とされていた白骨死体〟があったそうだ。頚椎の断面が綺麗きれいに斬られ、日本刀かギロチンで一気に切断したような切り口だったとか言っていたが、一条はギロチンの切断面を見たことがあるのだろうか……

 それはともかく、その男の身元を鑑定した結果、榎土浩司という男だったことが判明した。一般家出人で、家に遺書いしょらしき文書が残っていたと聞いたが、それがひらがなのみで書かれた濁点のついていない奇妙な文だったということなので、ほぼ間違いなく白蛟しろみずち絡みの話だろう。

 俺も自分で詳細を調べてみようとしたのだが行方不明者届が提出されていなかったようで、データベースに何も記録されておらず、あえなく断念となった。


 5. 白金と羽金殺人未遂について

 今まで存在を知られていなかった榎土浩司の登場によって、白蛟しろみずちの目的が判明した。それは〝反界はんがい〟と一条の世界で呼ばれている、結界外しらしい。一条の主張を完全に信用するなら、という前提条件つきだが、そこを疑ってももう何も始まらないので、このまま進めよう。

 白蛟しろみずちが外そうとしているのは陰陽五行陣おんみょうごぎょうじんという『森羅万象しんらばんしょうあらゆるものを生み出し、相生そうじょうして力を補い合う関係を持つ力を使った強力な』結界らしい。そのために都合五人の生贄いけにえを探し求めているという話で、その起点が榎土浩司、そこから出水滋利を経て蛍火玄香が殺された。その次に狙われたのが、俺――白金和弘――と羽金伊知朗で、これは今でも思い出したくないほど恐怖の体験だった。これがどういう理屈でこの動きになっているかはこの後で考えたい。

 そしてこの時、一条の機転で俺や伊知朗の血を混ぜ込んだ豚まんを作って、身代わりとして使う方法が有効であると実証された。血では白蛟しろみずちに怪しまれたが結局身代わりとして機能し、俺は無事に生きながらえている。伊知朗は直前になって生贄いけにえの対象から外されていた。

 そして次――つまり最後の〝木〟の字を名に持つ生贄いけにえとして、一条が選ばれた。この流れで考えるなら、本名に入っているのだろう。一条が源氏名であっても何の不思議もない。彼女も送られてきたメッセージに〝くたばれ○○○○〟と、普段ならしょっ引いていたかもしれない汚い言葉を返していた。


 6. 白蛟しろみずちの目的と縛りについて

 白蛟しろみずちは〝土→水→火→金→木〟の順番で〝反界はんがい〟と呼ばれる結界外しを試みている。詳細は専門的すぎるので一条に任せるが、ここで大事なのが〝順番〟であるのは論を待たない。

 そして、白蛟しろみずちはその順番も含めて、縛りと呼ばれる行動原理に沿って動いている。

 ・ 人を殺せるのは仏滅ぶつめつの日だけ。

 ・ 白蛟しろみずちが一度に殺せるのは一人だけ。

 ・ 順番は敵、石、最後に贄。

 ・ それぞれのカテゴリーを殲滅せんめつするまで次には移行しない。

 改めて考えると、これは逆に言えば〝敵から石、石から贄に移行した際、前のカテゴリーに属している人間は少なくともその時点では誰もいない〟ということも成り立つ。生贄いけにえを探して回っている最中に邪魔な人が新たに出てくる可能性がないとは言えないが、少なくとも復讐の対象としての〝敵〟はもう現れないのではないだろうか。

 白蛟しろみずちにとって〝順番〟とは絶対不可侵ぜったいふかしんであるように見えるという一条の言葉は合っている、少なくとも俺にはそう見えている。


 7. 白蛟しろみずちについて

 一条と神社へ話を聞きに行った際、禰宜ねぎさんから受けた説明はおよそこんな感じだった。

 ・ 興りは文政ぶんせい時代、つまり江戸時代後期。

 ・ 凶作続きの一帯の豪農が神社から氏神うじがみ勧請かんじょうして水害の抑制を試みる。

 ・ その感謝を込めて神社に奉納されるようになったのが七五三しちごさんの儀。

 ・ 白蛟しろみずちは元々災厄さいやく荒御魂あらみたまだった。

 ・ 人々から恐れ奉られ、供物くもつを奉納されたことにより和御魂にぎみたまへ反転した。

 概要を列挙してみて思う。白蛟しろみずちは元々荒っぽい存在で、人々に恐れうやまわれて和御魂にぎみたまに転じ、水を司る氏神うじがみ様となった。つまり、今の白蛟しろみずちは再び荒御魂あらみたまの側面が強く表れているのだろう。人々に恐れうやまわれて和御魂にぎみたまに転じたということは――


『――白金。全部反対にするんや――ウチらの界隈かいわいじゃそういうモノの考え方をするんよ』


 ――人々にあなどられあざけられて、荒御魂あらみたまに、戻った――

 そして〝全部反対にする〟という言葉に、俺は妙な引っ掛かりを感じた。何か重要なことを見逃しているような感覚が、警察官としての俺のカンに訴えかけてくる。あれだけ〝順番〟に執着とも思えるこだわりがある〝縛り〟の目的の一つに〝反界はんがい〟があるのは一条から聞いた。すべてをひっくり返して結界を外すために動いている。なら、ひっくり返すという行為も――あらゆることに適用されはしないだろうか。白蛟しろみずちにまつわるものすべてに、この反転が――


 8. 七五三しちごさんの儀について

 七五三しちごさんの儀についても概要をまとめてみる。

 ・ 白蛟しろみずち荒御魂あらみたまの側面があり〝てきろう、いしわう、にえは首をまつたてまつる〟。

 ・ これを〝くろうて、ゆわえて、たてまつる〟に変じ、七五三しちごさんの儀に用いる。

 ・ 七五三しちごさんの儀は、三歳と五歳の男女、七歳の女児が参加する。

 ・ 三歳がくろうて、五歳がゆわえて、七歳がたてまつるに対応した儀式を行う。

 ・ その由来ゆらい由緒ゆいしょ白蛟しろみずち勧請かんじょうした場所は戦争期に文献ぶんけんが消失したため不明。

 白蛟しろみずちにとって、物事の順序は極めて重要な要素を持っている。そして一条の界隈かいわいでは、何か反対のことを行う時には、まるごと全部ひっくり返すという考え方になる。これが真であり、同時に今回のケースにあてはめるなら、七五三しちごさんの儀についてに落ちないことが出てくる。

 神社の口伝くでんによれば、七五三しちごさんの儀は〝和御魂にぎみたまに反転した〟白蛟しろみずちへの感謝と畏敬の念をこめて奉納された祭祀さいしとのことだった。そして白蛟しろみずちのこしたと言われている〝くろうて、ゆわえて、たてまつる〟の御言葉は〝荒御魂あらみたまの側面を表した〟ものだと語っている。これを反転させると〝たてまつり、ゆわえて、くらう〟になりはしないだろうか。

 三歳の子は飯をらい、五歳の子は体を結わいて、七歳の子供は感謝と尊敬の念を奉る――〝くろうて、ゆわえて、たてまつる〟をそのまま子供の年齢に置き換えると〝三、五、七〟。逆に七五三しちごさん白蛟しろみずちの言葉に置き換えると〝たてまつり、ゆわえて、くらう〟。伝えられてきた話と儀式の内容を照らし合わせると後者のほうがしっくりくる気がする。

 やはり、和御魂にぎみたまとしての白蛟しろみずちの御言葉は〝たてまつり、ゆわえて、くらう〟ではないのか。これなら七五三しちごさんの儀と呼ばれるのも、それが白蛟しろみずちに対する感謝畏敬かんしゃいけいの念を込めた儀式なのも、式次第の順序も辻褄つじつまが合う。順番にこだわるのなら、ここまで徹底しないと道理に合わない。

 ただ、だからどうしたという話ではある。これが合っていたとして何なのだと問われれば、答えにきゅうしてしまうだろう。


 9. 日下について

 一条にかくまわれているとのことだが、どこに隠れているのか、今まで何をしていたのか、今はどうしているのかなど、分からないことは多々ある。だが俺には一点、どうしても引っかかることがあった。

 羽金が分析した、出水のスマホから復元された謎の文字化けメッセージの中のあの一節――


 ろくしにもつをもつてあつてほしい


 六時、あのホテル、荷物を持って、会って欲しい……そう読める、あの一節がどうしても、引っかかって仕方がない。それとも、ロクシアのホテルか……いや、そんな言葉は初耳だ。

 なぜこれで出水は動けたのだろうか。俺の記憶では日下さんと出水は課も違えば趣味も性格も全然違う。何より俺みたいなのと違って直接繋がりがある訳でもない。簡単にいえば、こんな言葉で意思の疎通そつうができるほど仲が良かったなんて話は聞いたことがない。

 日下さんが〝あのホテル〟と伝えて、それで出水が反応できるのであれば、二人は普段から〝あのホテル〟がどこなのかが分かるということだ。どこかの常連客が〝いつもの〟と頼んでが出てくるのと同じように――

 あともう一つ――〝会って欲しい〟という書き方にも少し引っかかるものがある。俺の知る日下さんは公務中はもちろん、プライベートでも中々隙を見せない人だった。少なくとも俺はこんな言い方で誘われたことは一度もない。

 確信はないが――日下さんにも何か、裏がありそうな気がしている。



 10. 一条について

 一条については謎が多すぎる。日下さんからの手紙によれば信じていいらしいが、それでも彼女の言動行動にはに落ちない点があった。

 ・ 日下さんをかくまっていたということを隠していたのは何故か?

 ・ 日下さんが墓場に持っていくと言い切る彼女の要求は何か?

 ・ 〝縁ができたら手遅れ〟の言葉をあのタイミングで言えたのは偶然なのか?

 ・ 自殺したという依頼人は誰で、どんな依頼だったのか?

 日下さんをかくまっていたのを隠していた理由の一つは、俺がその時まだ白蛟しろみずちとの縁が繋がっていなかったことと関係しているように思う。余計な縁を繋いで面倒を起こしたくなかった……そう考えると納得がいくような、いかないような。恐らくそれだけではないだろうが、きっとあいつは何も教えてくれないだろう。

 その日下さんに何の要求をしたのかについては皆目見当もつかない。まさか、犯罪の片棒を担がされたとかそういうのでは……ともあれ、これを今考えても意味がないだろう。

 縁ができたら手遅れの件についてもさっぱりだが、これは何となくその次の〝依頼人〟にも関連してくることのような気がしている。その依頼人が一体誰で、どんな依頼で、そしてその人がどこで自殺したのか、一条は何も教えてくれない。

 ここまで考えると、やはり一条は何かを隠している。俺たちが把握している以外の理由で、白蛟しろみずちを追っている――そう思えるような言動行動をしているようにしか見えない。日下さんは〝誤解されやすい人だが寛大に見守ってやってくれ〟と書いていたので、彼女の本来の目的を知っているだろう。そしてそれはきっと俺には教えてくれない。


〝この話は幾重にも折り重ねられた裏が存在する。一条はそれをすべて解きほぐして、依頼を解決しようとしているだけに過ぎない〟


 日下さんの手紙の最後にこう書いてあった。一条の秘密はさておいて、ここから分かるのは〝何重にも隠された裏がある〟ということだけだ。

 ……白蛟しろみずちに関する話にも、何重もの裏があるのだろうか。

 たとえば、白蛟しろみずち勧請かんじょうされた目的は水害を抑える他にもあった……とか。

 確証どころか自信なんかないが、もしそうだとしたら、その目的は一体何だろう。それは、和御魂にぎみたまとしての白蛟しろみずちの〝たてまつり、ゆわえて、くらう〟を要する何かなのだろうか。逆に、荒御魂あらみたまとしての白蛟しろみずちの〝くろうて、ゆわえて、たてまつる〟を必要としていたのだろうか。


『面白いですね、謎かけ。言葉一つ取っても、色々な意味や解釈があるんだなって思います。そんな意味があったのかとか、そういう風に繋がるのかって、思わされますよね』


 ふと、最初に一条と出会ったったあの居酒屋で話したことが思い出された。言葉一つ取っても、色々な意味や解釈がある――確かにそうかもしれない。

 ――さっき思いついた、七五三しちごさん白蛟しろみずちの言葉に置き換えるというのは、そういう意味でこの〝謎かけ〟みたいに色々な解釈を探る、いい手法だったのかな。今度は〝七五三しちごさん〟に何か意味がないか調べてみても面白いかもしれない。どうせこのまま普通に考えてみた所で何一つ分かりっこないんだ。普段なら考えもしないアプローチのほうが、何か分かるのだろうか。

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