九十四日後・夜
夜になっても
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ここまで色々とありすぎたせいで、情報がごちゃまぜになってしまっている。今後俺たちがどう動くかに関わらず、このままでは正しい判断ができるか怪しいな。一旦じっくり整理して重重要点や疑問点を洗い出してみよう。
1. 連続不審事故について ~
頭が見つかっていない、切断面に食い荒らされたような跡がある、出血量が異様に少ない、当事者は全員同じ〝暴走族〟チームに属していたなど、共通点が多数見られる他は手がかりもなく、事故として処理されている。動機も犯人も凶器も存在しない事件は存在しないのだが、今の俺は〝そういう論理が通用しない相手〟が関わっていることを知っている。
そして、それが行動原理としているのが〝
わたしは、いのちを、たてまつる。
このくび、くらわせ、とがつぶし。
遺留物や現場の状況から判断すると、事故当事者に襲いかかった怪異は〝敵は
現時点で分かっていないこと、その中で分かっておいたほうがいい謎は二つ――
彼らは一体何をして、
そして、それは一体どこで行われたことなのか。
2. 自殺者について ~
最初は、一条に何かを依頼した人物が自殺した際に
『ダム湖で事故死した
彼らが自殺した詳細は伝わっていないが、死んだのはいずれも
この情報は俺が独自に調べ上げたものだ。どこにどんな情報網を築いているのか分からないあの一条も把握していないネタだったが『さすがに
そしてその十日後に、
その際、一条の依頼人が
わたしは、いのちを、たてまつる。
このくび、ゆわえて、つゆはらい。
一条の説明によれば、彼らは
――ただ、一条が重大な隠し事をしている証拠もここにあった。彼女の言動行動をつぶさに観察してきたが、彼女は確かに嘘を言っていない。しかし――
本当のことを本当のタイミングで答えていないことはもはや絶対に確実だ。
3.
現状俺たちが抱えている情報、そして警察と検察が有する以上の話はない。そっちで捜査が行き詰まりを見せている以上、ここからさらなる発展は見込めないだろう。ただし、俺たちが持っている情報を渡すか、あるいはすべてを根底から
出水は自殺した高田から十日後に死亡したが、その際
『〝つきいきます〟……つまり次行きますとメッセージがきたときに何でもいいから返事だけ返しときゃ、もしかしたら待ってくれたりとかするんちゃうか』
一条いわく、出水のスマホにあったメッセージで唯一〝うさぎによろしゅうな〟と返信しているケースが気になっていたらしい。確かに俺も、誰とも分からない相手から訳の分からないメッセージが送られてきたら、詐欺やマルウェアを疑って……そこまで行かなくても怪しくて返信なんかしないだろうとは思う。ただ、思いついたらやってみようというのが一条であり、彼女の言葉によれば『別に違っていた所で何か損する訳でなし』ということで、俺たちがそのメッセージを受けた時に何か返信してみよう、ということになったのだった。
『〝くるな〟と〝きてみろ〟……か。メガネは
その結果は一条の予測に沿ったもので、〝つきいきます〟を受信した直後の
後日『パンチとメガネで、一方が送ってもう一方が送らんように実験すりゃよかったわ』と悔しがっていたのを見た時、一条はやっぱりこの状況を楽しんでいるとしか思えなかった。
蛍火玄香については、死亡する数日前に義理の姉の
そして彼らが殺された目的は〝
4.
一条が誰を情報源にしているのかは分からないが、俺以外にも警察に協力者がいるとみても差し支えないだろう情報を一条は持ってきていた。
三宅の死亡現場だったダム湖を
それはともかく、その男の身元を鑑定した結果、榎土浩司という男だったことが判明した。一般家出人で、家に
俺も自分で詳細を調べてみようとしたのだが行方不明者届が提出されていなかったようで、データベースに何も記録されておらず、あえなく断念となった。
5. 白金と羽金殺人未遂について
今まで存在を知られていなかった榎土浩司の登場によって、
そしてこの時、一条の機転で俺や伊知朗の血を混ぜ込んだ豚まんを作って、身代わりとして使う方法が有効であると実証された。血では
そして次――つまり最後の〝木〟の字を名に持つ
6.
そして、
・ 人を殺せるのは
・
・ 順番は敵、石、最後に贄。
・ それぞれのカテゴリーを
改めて考えると、これは逆に言えば〝敵から石、石から贄に移行した際、前のカテゴリーに属している人間は少なくともその時点では誰もいない〟ということも成り立つ。
7.
一条と神社へ話を聞きに行った際、
・ 興りは
・ 凶作続きの一帯の豪農が神社から
・ その感謝を込めて神社に奉納されるようになったのが
・
・ 人々から恐れ奉られ、
概要を列挙してみて思う。
『――白金。全部反対にするんや――ウチらの
――人々に
そして〝全部反対にする〟という言葉に、俺は妙な引っ掛かりを感じた。何か重要なことを見逃しているような感覚が、警察官としての俺のカンに訴えかけてくる。あれだけ〝順番〟に執着とも思えるこだわりがある〝縛り〟の目的の一つに〝
8.
・
・ これを〝くろうて、ゆわえて、たてまつる〟に変じ、
・
・ 三歳がくろうて、五歳がゆわえて、七歳がたてまつるに対応した儀式を行う。
・ その
神社の
三歳の子は飯を
やはり、
ただ、だからどうしたという話ではある。これが合っていたとして何なのだと問われれば、答えに
9. 日下について
一条に
羽金が分析した、出水のスマホから復元された謎の文字化けメッセージの中のあの一節――
ろくしあのほてるにもつをもつてあつてほしい
六時、あのホテル、荷物を持って、会って欲しい……そう読める、あの一節がどうしても、引っかかって仕方がない。それとも、ロクシアのホテルか……いや、そんな言葉は初耳だ。
なぜこれだけで出水は動けたのだろうか。俺の記憶では日下さんと出水は課も違えば趣味も性格も全然違う。何より俺みたいなのと違って直接繋がりがある訳でもない。簡単にいえば、こんな言葉で意思の
日下さんが〝あのホテル〟と伝えて、それで出水が反応できるのであれば、二人は普段から〝あのホテル〟がどこなのかが分かるということだ。どこかの常連客が〝いつもの〟と頼んでいつものが出てくるのと同じように――
あともう一つ――〝会って欲しい〟という書き方にも少し引っかかるものがある。俺の知る日下さんは公務中はもちろん、プライベートでも中々隙を見せない人だった。少なくとも俺はこんな言い方で誘われたことは一度もない。
確信はないが――日下さんにも何か、裏がありそうな気がしている。
10. 一条について
一条については謎が多すぎる。日下さんからの手紙によれば信じていいらしいが、それでも彼女の言動行動には
・ 日下さんを
・ 日下さんが墓場に持っていくと言い切る彼女の要求は何か?
・ 〝縁ができたら手遅れ〟の言葉をあのタイミングで言えたのは偶然なのか?
・ 自殺したという依頼人は誰で、どんな依頼だったのか?
日下さんを
その日下さんに何の要求をしたのかについては皆目見当もつかない。まさか、犯罪の片棒を担がされたとかそういうのでは……ともあれ、これを今考えても意味がないだろう。
縁ができたら手遅れの件についてもさっぱりだが、これは何となくその次の〝依頼人〟にも関連してくることのような気がしている。その依頼人が一体誰で、どんな依頼で、そしてその人がどこで自殺したのか、一条は何も教えてくれない。
ここまで考えると、やはり一条は何かを隠している。俺たちが把握している以外の理由で、
〝この話は幾重にも折り重ねられた裏が存在する。一条はそれをすべて解きほぐして、依頼を解決しようとしているだけに過ぎない〟
日下さんの手紙の最後にこう書いてあった。一条の秘密はさておいて、ここから分かるのは〝何重にも隠された裏がある〟ということだけだ。
……
たとえば、
確証どころか自信なんかないが、もしそうだとしたら、その目的は一体何だろう。それは、
『面白いですね、謎かけ。言葉一つ取っても、色々な意味や解釈があるんだなって思います。そんな意味があったのかとか、そういう風に繋がるのかって、思わされますよね』
ふと、最初に一条と出会ったったあの居酒屋で話したことが思い出された。言葉一つ取っても、色々な意味や解釈がある――確かにそうかもしれない。
――さっき思いついた、
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