二十日後
少しずつ日中の気温も下がり始め、横面を
だがここ数日は警察署の一部でちょっとした騒ぎが起きており、いつもより
「
時間に厳しく無断欠勤どころか遅刻すらしたことのない日下がもう六日も署にきていない。それどころか、どうやら日下と最後に会っていたのは白金のようだった。居酒屋で飲んだあと白金と別れた日下は、そのまま家にも帰らず
最初は課内の同僚が彼の自宅や携帯に連絡を試みていたが誰も消息を
「白金先輩、日下さんから何か連絡ありました~?」
「ああ、
「一体どうしはったんすかねえ。日下さんが六日も無断欠勤なんて考えられへんすよ」
「そりゃ署内の皆が思っとることやろ、多分」
出水と呼ばれた男は、細い
――それは、人には言えない類の予感であり――ましてや現実的な証拠とデータを重んじる警察に属するものがそんなものを根拠に憶測するなど、笑いものになってしまうだろうことは白金自身がよく分かっていた。
「とりあえず先輩、今日は飲みキャンになりそうっすね。せっかく可愛い子と飲めるって楽しみにしとったんすけどねえ」
「それはお前だけやよ。どんな人連れて来んのか教えてくれへんやん、お前」
「へへっ、そらあ会ってのお楽しみってやつでんがな」
「でんがなてお前」
「ま、そんな感じなんで、キャンセル入れときますわ。また次の機会に飲みセットしますんで、そん時は予定空けてくださいよ。ほなら先輩、また後で」
出水はそれだけいうとまだろくに吸ってもいない
恐らく、あの峠道で発生した不可解な単車事故が発端なのは間違いないと彼は思っている。それに先日居酒屋で聞いた、奇妙で不可解な共通点を持つ、関係者の事故――それだけでも、この事故の
しかし、白金はこの事実をまだ誰にも伝えていなかった。第一どう互いの関連性を伝えればいいのか、彼には分からない。確かに奇妙な繋がりを持っていそうではあるが、それだけだ。明確にこれらの事故が一本の線で繋がっているという物証は
「犯人も凶器も、動機すらも一切存在しない事件――そんなもん、どこにもありゃせんわ」
しかし、それでも――
白金は、これが単なる事故だと結論づけられずにいる。何かこう、裏にとてつもなく
「何にせよ、日下さんは得体のしれない、そして恐ろしい何かに巻き込まれた……何かそんな予感しかせんのは、何故なんや」
そう
「く、日下さん――!?」
白金は驚きのあまり
件名には〝縺上&縺九◆繧医a〟とあった。それだけでも意味がわからなかったが、それを一旦無視した白金が本文を開けると、不可解な文字列が飛び込んできた。
縺上&縺九◆繧医a
縺翫∪縺医↓縺イ縺ィ縺、縺。繧?≧縺薙¥縺励※縺翫¥繧医¥縺阪>縺ヲ縺上l
縺励?繧峨¥縺ソ繧偵°縺上@繧医k縺?%縺上↑縺イ繧九≧縺薙¢縺ッ縺?>
繧阪¥縺ヲ繧ゅ↑縺励%縺医s縺ュ繧峨▽縺ヲ繧九″繧偵▽縺代m縺溘?繧?縺
縺ソ縺、縺九l縺ッ縺ゅi繧?k繧ゅ?縺九♀繧上k縺溘m縺?o縺吶l繧九↑
縺、縺セ繧峨↑縺阪?縺ェ縺励↓縺ソ縺ソ縺九@縺ヲ繧ゅ※縺翫¥繧後↓縺ェ繧九◎
縺。縺九↓縺ソ繧偵°縺上○縺ッ縺薙l縺ェ縺?°縺翫∪縺医b縺?%縺代↑縺
縺輔>縺ゅ¥縺ゅ?縺翫s縺ェ縺ォ繧後s繧峨¥繧偵▽縺代※縺溘☆縺代h縺ク
縺セ繧医¢縺溘>縺輔¥繧ゅ▽縺ヲ繧九h縺ク縺ッ縺上k縺九i縺ヲ繧薙o縺励m
「な、何やこれ――文字化け……か。今どき珍しい。一体何て書いてあるんやこれ」
白金は急いでブラウザを開け、文字化けを修復するサイトを検索して開いた。テキスト入力ボックスに日下から送られてきた件名と本文をコピーペーストし、修復を実行する。
くさかたよめ
おまえにひとつち〓〓こくしておくよくきいてくれ
し〓らくみをかくしよる〓〓くなひるうこけは〓〓
ろくてもなしこえんねらつてるきをつけろた〓〓〓
みつかれはあら〓〓も〓かおわるたろ〓〓すれるな
つまらなき〓なしにみみかしてもておくれになるそ
ちかにみをかくせはこれな〓〓おまえも〓〓けな〓
さいあくあ〓おんなにれんらくをつけてたすけよへ
まよけたいさくもつてるよへはくるからてんわしろ
「な、な――」
所々修復しきれず読めない
「お前に一つ、ち……忠告かっ!? 何やねんこれっ……!」
しばらく身を隠すだとか、見つかれば終わるだとか手遅れだとか、何もかもが異常すぎた。しかし何より謎めいて、白金に得も言われぬ恐怖を与えたのが――
「最悪、あ、あ……女に連絡……助け呼べ……まよけたいさく??」
白金には何のことなのか一切分からない。しかし、これは日下からもたらされた助言だ――白金はそう直感した。
「女、女――誰や、女ってのは? どうやって電話して呼ぶんや、そいつを……!」
白金は必死に脳細胞をフル回転させたが、そこには何も記録されていなかった。
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