第13話 底知れない魔力①

魔術で形づくった青い色をした空間。それをこの世界の者どもは異空間と名付けた。


異空間には、様々な機能や役割があり、機能としては…

①膨張や収縮ができる

②異空間の体積はほぼ無限に等しい

③傷をつけて壊したり、魔術の破壊魔法によって壊すことができない


そして、それに伴った役割では…

①拡大して闘技場を作ったり、縮小して少ない体積でたくさんのものを運ぶ

②①のたくさんのものを運ぶ使い方

③相手に異空間を投げつけて翻弄したり、隠れたりする

以上が異空間の基本的な活用方法。ちなみに、基本異空間は現実世界の十倍の速度で時間が流れる。


【主様は異空間を使用されたことはありますか?】

「何回か使ったことはあるけど、こんなこと知らなかったし、今みたいに異空間内部に入ってみたこともなかったな」


そう、ここは異空間内部。異空間というもう一つの大きな空間に俺たちはいる。

非常に安定した空間なのに、なぜ人をここに入れて魔王軍から避難しない?

気になった俺はステラに訊いてみることにした。


「ステラ、この異空間を使って新しい都市を作ることは可能なのか?」

【理論上は可能です、雨を降らせたり、植物を生やしたり、なんだってできます】


そう言いながら異空間上に雨を降らせたり、太陽を作ったり、植物を生やしたりと限りなく地球に近づけるも、それをすべて消し、もとの状態にして言う。

しかし…とステラは続ける。


【術者の膨大な魔力が必要になります。異空間の体積が大きくなり、異空間の状況を操ろうとすればするほど、使用する魔力は膨大です】

「なるほど、確かにそれができればとっくにしている…か。教えてくれてありがとう、ところで今から何を…?」


ステラはいつの笑みを真剣にして言う。

ステラがこの表情をするときは、本当に怖い。


【今日は基本的な魔術をお教えします。まず、矢を想像して…】


そういう間に、弓で放つような矢を想像する。そして、俺の目の前に矢が現れる、

この水色に近い青い矢をステラたち魔術師はと呼ぶそうで、次にステラは標的(魔物)を生成する。


「こう…か?」

【まだ詠唱を教えておりませんが…その必要はなさそうですね】


見ると魔力矢は魔物のこめかみに深く命中しているのだ。


【信じられ…いや、さすがは超越者オーバーテイカー。最初から無詠唱…ってこれは失礼しました主様。しかし、もうイメージはつかんでおられるのですか…?】


いつもは冷静なステラがこのときばかりは少し驚いたような表情をする。

イメージ?無詠唱?そんなのアニメ見て、ラノベ読んで勝手に身についたものだが…さすがにそんなことは言えない。


「あ、ああ。なんか勝手に…多分ジョブのおかげかな…ははっ」

【流石です…それでは、はどうでしょうか?】


ステラは詠唱を教えるよりも、見せてイメージをつかませたほうが早いと踏んだらしく、俺に魔力槍を見せると、さあやってごらんとでも言いたげな表情で先ほどよりも大きいクマに似た魔獣を召喚する。


「こうだろ」


これまた頭の近くに出てきたのは、さきほどの魔力矢をそのまま大きくし、太くさせたもの。そして今度もしっかり魔獣のこめかみをつらぬく。


「魔力槍は委員長やスライムと戦ったときに何回か使ったことあるからな、ははっ」

【主様、お見事です。もう私に教えることなど何もありません】

「いやステラ?まだ教えてほしいことたくさんあるんだけど…」


いつも冷静なはずのステラは今回ばかりは少し落ち込んだのか、うれしいのか、ぺたりと地面に座り込んでしまう。


【主様…お手合わせ、願えますか…】

「ん?なんでかな?なんでステラと戦うのかな?」

【たしか対人の試験もあったはずです…】


するとステラは魔力で剣を作り出す、いや待て待て。あの委員長に負けかけていた俺が、委員長をボコボコにしたステラに勝てるわけないじゃん、ステラぁ…


【怪我させない程度には加減しますので、しっかり躱してください】

「…わかった。その代わり、こちらは全力を出させてもらう」

【はい…】


そうして、俺の魔力槍がステラの剣に弾かれたのを皮切りに、模擬(?)戦闘が始まった。



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