第12話 謁見
【こちらへお入りください】
最初この世界に来た時のように魔術師に連れられて謁見の間への扉を開ける。
中にいたのは…王はもちろん王都騎士団団長と、この青いローブを着た方は誰だろう…?とりあえず、進もう。
そして、一定のラインまで行き全員で跪く。
『ああ、よく来た。早速だが貴公らに話したいことが二つある。最後まで聞いてくれ』
王が続ける。
『まず先日の
(うれしい知らせ…?なんのことだ?)
『魔術学院か、剣術学院かのどちらかに入学をしてくれ』
え!?それじゃあ、この青いローブの男の人は…
『王都剣術学院学院長兼、王都騎士団団長のハイナ・ヴェロリアだ』
『王都魔術学院学院長兼、王都魔術団団長のクリス・ドレゴンだ』
なるほど…どうりでこんな青いローブを…しかし、王都魔術団なんてあったか…?
『ということで、貴公らはこのどちらかの学校に望めば入学することができる。今日からだ』
『王、いくら「人間様」でも。入学試験に合格しないと入学させないと言いましたよね?』
ドレゴン団長が訂正する。まあ、王都の魔術学院だもんな。それはそうか、
『そうだったな。訂正する、魔術学院に入学を希望する者はドレゴンに入学試験を受けさせてもらえるよう頼んでくれ』
ドレゴン団長は一礼し、転移魔術でどこかに行ってしまう。
『剣術学院は入学試験などを設けていない。剣術に興味のある者や、剣士になりたい者はあとで私のもとへ来るように。それでは、王、失礼します』
そう言ってヴェロリア団長も扉を出る。
『魔術学院を卒業した者は必ず魔術師団に入り、剣術学院を卒業した者には騎士団に必ず入団してもらう。しかし、今回は異例だ。卒業後は王国のために、魔王を倒してきてくれ』
そう言って謁見は終了した。
ーーーー
「なあなあ佐藤、お前どっちにするか決めたか?」
「あんな一瞬で決めれる訳ないだろ、五十嵐は決まったのか?」
「ああ、俺剣術学院に行こうと思うよ」
「…そうか」
広場での解散後、五十嵐と再び話す。
そして、水野瀬も会話に交じってくる。
「五十嵐君、僕と一緒に魔術学院に入学しませんか?」
懇願するように言ってくる水野瀬、水野瀬の気持ちもわからんこともない。ジョブが「雷」で本来使えていたはずの、魔術を使いたがる気持ちもわかる、しかしここはぐっとこらえて…
「水野瀬、魔術学院は確か入学試験があるんだったよな?大丈夫か?」
「ああ!俺、体力には自信があるから!」
そう言って水野瀬は親指を立てる。
いやいや、気合で乗り切れるところじゃねえだろ、入学試験は。それに、その体力を自慢するなら剣術学院のほうが向いてそうな気もするが…
「そ、そうか…なら頑張れよ」
「えー佐藤君はどうなんだよー」
俺か…俺は正直、どちらでもいけるのである意味迷っている。
魔術でも剣術でも俺のジョブの
「そうだな…まあ考えとくよ」
そう言って俺は部屋に戻る、そして、ステラが出てくる。
【おかえりなさいませ、主様。謁見はいかがでしたでしょうか】
「ああ、それなんだが…学校へ行けと言われた。魔術学院か、剣術学院か選べるらしい」
いつもと違い、眼鏡をかけているステラは読んでいた魔導書をぱたりと閉じて、静かに言う。
【私は王都魔術学院出身です】
「!?そうか」
まあ、ある程度は予想していた。王都魔術学院は優秀な魔術師を数多く輩出している場所だ。ステラもその中の一人に含まれるだろう、しかし…ではステラは…
「決めた…俺、魔術学院へ入学する」
【ほんとうに…いいんですか?】
そして、ステラは少し圧をかけて言ってくる。
もちろん、俺はそんなことを言われようと、どんな覚悟もできている。
「ああ。俺はステラのように魔術を究めようと思うよ」
【そうですか…】
魔術を究める…それもあるが俺が本当に知りたいことは二つ。まずこの制度の矛盾点。攻めてくる魔王を倒すために召喚された俺たち、そして、眼前には魔王軍がもう攻めてきている。なぜ、いますぐにでも討伐させようとしない?
二つは単純にステラの過去や正体が知りたい。ある意味、これが本当の目的だ。
【それでは、入学試験の対策を立てないとですね…】
「ああ、ステラが知っているできる限りのことを教えてくれ」
【わかりました】
そしてステラは魔導書に触れながら詠唱する。
【神よ、異空間を傍聴し、我々の存在を二つに分けよ…
そう言うと、ステラや俺がいつも何か取り出すときにしか現れない異空間が現れ、それはだんだん大きくなり、俺たちをのみこむ。
【さあ、始めましょうか。
俺は生唾を飲み込む。
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