第6話 夜の王城にて
王城につく頃にはすでにあたりは暗くなっていた。
俺たちはなんとか暗くなる前に王城に到着することができた。
【おかえりなさいませ、佐藤様、工藤様。夕食のご準備ができております】
「わかった、じゃあ夕食から食べようかな」
「夕食から食べようかな、じゃないでしょ。どういうこと?」
これもまた伝えるのを忘れていたが、俺たちはいつでも王城にいていいことになっている。ただし、期間は決まっていて、ジョブを与えられてから一か月以内が限度だ。これは俺が魔術師に訊いてから教えてもらったので、知らないグループも多いだろう!
「なんだー二人とも遅いよー」
「は?」
食堂を開けると、そこにはクラスメイトのほとんどの姿が見えた。そして、おいしそうにステーキを食べている。そこには、陽キャもオタクも女子もいた。みんな知ってたのかよ…
「みんな先に食べてたのね、私も手を洗ってからたーべよっと」
「あ、あぁ。俺もおなかがすいたから食べるよ」
そうして、委員長はまるで席が用意されていたかのような場所に座り、俺は長机のはじっこで、オタクたちの横に座る。
それからというもの晩餐を楽しみ、シャワーも浴び、おまけに個人個人の寝室まで用意してもらっている様子だ。鍵は…かけられる。セキュリティーもばっちりだ。
【佐藤様、就寝の準備が整いました】
「ありがとー、ところで、これって毎日やってくれるの?」
すると魔術師は!?の顔をして言う。
【勿論でございます。そして、佐藤様にもう一つ、重大な報告が…】
「何?」
【寝る前なので子守歌くらいは…】
「じゃかましいわ!」
メイド…ではなく魔術師だろこの人…適性検査のときからお世話になってるけど…でもひとつ俺は訊いてみたいことがあった。なにか、なにか引っかかるものを感じた。
「なあ、魔術師よ。ジョブって一人に一つなんだよな」
【左様でございます】
「じゃあ…」
その次の日、喉の渇きで目を覚ました俺は、部屋の水道水をコップに注いで飲む。
(まだ5時…起きるには少し早すぎたか…)
そう思い、俺はまたベッドに戻る。しかし、
【佐藤様、何かありましたか?】
「っくりした!もう今ので完全に起きちゃったじゃん」
【それは大変失礼いたしました…では】
「ちょっと待って、魔術師さん」
俺は部屋の椅子に座り、魔術師のほうを向く。
【どうかなされましたか…?】
「あなたって多分、他の魔術師とは違い人間、ですよね?」
すると魔術師はフードを深くかぶりなおす。
決まりだ。
【気づかれましたね。私はほかの魔術師たちとは違い人間です。でもなぜ】
「昨日の寝る前の会話だよ、あれは明らかに俺に有利な情報。そして、そんな情報を普通の魔術師が言うことは禁じられている。だろ」
【はい…】
「でも、人間が魔術師になればその制約を無効化することができる」
【お見事です、佐藤様】
魔術師はフードを脱ぐ。そこから見えてくるのは、まだ薄明るい月光に照らされる青色の瞳と夜空の美しい青のような、でもどこかはかなげのある髪色。
【私の名前はステラです。ずっと、ずっと、お待ちしておりました】
「?まさか、あなたのジョブって…」
ーーーー《《》》
「ステラ、でいいか?」
【はい、これからも俺の魔術師を演じ続けろですよね】
「!?ステラ、もしかして未来が…」
【それでは、日も昇ってきたことですし、そろそろ私はお暇させていただきます】
そうして、ステラはいつものように消えた。
ステラ…なんとなくとは思っていたが、同じ人間だとは…
「佐藤ー飯食いにいくぞー」
「わかったーちょっと待ってろー五十嵐」
五十嵐 颯(いがらしかえで)
陽キャグループの一人なのだが、なぜかいつも俺に親しく接してくる。
ちなみに斎藤とは親友で、幼馴染だ。
「俺の魔術師めちゃかわいいわ、だって俺のこと必死で起こしてくれるんだよ」
「へーそんくらい自分で起きろよ五十嵐」
「佐藤こそどうなんだよ?もしかして、巨乳のお姉さんみた…って」
「いい加減夢から覚めろ、水野瀬も今みたいに油断してたら背後から襲われたんだぞ」
「へい、いてて」
そうして、食堂へ向かうともうすでに朝食を何人かは取り始めていた。
その中に委員長の姿も見える。
「おはよう、委員長」
「おはよう、佐藤…くん」
決まりだ。
五十嵐を隣に呼び、例の作戦について話し始めた。
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