第5話 ギルマス(仮)の店で…

 「ここに書いてあることをこなしていけば、報酬は俺から直接支払うぜ」

 「んー、コスパがいいのはスライム狩りくらいだな。他は、もう少しを上げないと無理そうだな…」


 言い忘れていたが、この世界にはレベルというものが存在する。

 レベルはモンスターを倒して経験値を入手したり、経験値液を飲んだして高めることができる。


 レベルが上昇すれば基礎的な身体能力の向上はもちろん、ジョブごとに持つ「固有魔法」の強さも上がっていく。俺たちの今のレベルが1。スライム推奨レベルも1。そのほかは高ランクにならないと厳しそうなモンスターばっかりだ。


 ちなみに、言語事情は勝手に翻訳され、この世界の基本的な仕組みは俺にジョブを授けた魔術師が教えてくれた。そして、この世界にも人間はいること。しかし、この世界の人間にはジョブを授けることができないこと。だから俺たちを召喚したというわけだ。

 

 「スライム狩りが一番安泰そうだ。委員長、どう思う?」

 「ええ、私もそれに賛成よ。ところで何か武器はない?ギルマスさん」

 「ギルマスってなんだよギルマスって、まあいいや。えっと、武器だったけか、ここに短刀が二本あるけど」

 「「じゃあそれにします」」


 こうして俺たちはギルマス(正式)から短刀を譲り受け、町をでて草原へと向かった。


 「見て…あれ…」


 草原の奥のほうを見ていると、なにやら怪しいオーラ、いわば魔王のようなオーラがただよっている。もうあそこまで来ているのか…


 そして近くに目線を移すとスライムが三匹ほどいる、または金貨三枚か…


 「ところで委員長、ジョブは何?」

 「ひみつー、でも、そんな大したジョブじゃない」

 

 ジョブを言いたくない気持ちはよくわかる。なにより二人っきりだし。俺が略奪者プランダーかもしれないって恐れているのだろう。


 「じゃあ、俺のジョブは魔術師です。見ててください」


 俺は頭の中で、スライムに魔力槍が刺さる想像をする。すると…

 虚空から魔力槍が生成され、目の前のスライムたちをまとめて貫く。


 「どう?これで俺が略奪者プランダーではないってこと分かった?」

 「…すごい、魔術師ってこんなすごいジョブなの!」

 「ああ。俺のジョブが分かったからには、委員長のジョブも見せて」


 すると委員長は、短刀を持ち出すと、それに手をかざす。

 すると短刀は雷属性をまとったのだ…


 「委員長…それってもしかして…」

 「!?あ、勘違いしないでね、私のジョブは水野瀬くんと同じ「雷」よ」

 

 委員長は短刀を上に掲げると、草原に一つ生えてあった大木に落雷が降り注ぐ。

 かっけぇ…


 「これが水野瀬くんの使えなかった「雷」のジョブ。私は奪われないようにしないと…」

 「そうだな…俺も奪われないように気をつけないと」


 そうして、スライムの破片を拾ってからギルマスのもとに向かう。


ーーーー


 「おう、三匹か…まあまあだな」

 「ギルマス、金貨あと二枚は…?」


 テーブルの上に出されているのはたったの一枚のみ、おかしいな…


 「あと二枚は二人の短刀代さ、世の中そんな甘くないんだよって、いてて!姉ちゃん!」

 

 委員長がギルマスの耳を引っ張る。


 「あと二枚はって訊いてんだよこっちはよっ!おらぁ!」

 「「ひぃ!」」


 委員長の意外な一面に俺も思わず声を上げる。委員長…あんた怖いですって…


 「金貨あと二枚はこの通りです…次もまたお願いします…」


 とうとうギルマスはポケットから金貨を二枚テーブルの上に出す。

 さすがに今のは俺も怖かった。


 「分かったならいいんだよ、次もまたよろしく頼むな」

 「ぜひよろしくお願いしますぅぅ」


 そうして、ギルマスの店を出たころにはもうとっくに夕日が見えていた。

 まずい、今夜はもう宿をとらないと…


 「さすがにこのスラムじみた町で夜の活動は危険すぎる。暗くなる前に宿を探そう」

 「佐藤くん、なにかいい場所は知っているの?」


 すると俺はキメ顔でこう答える。


 「DA


 そうして俺たちは王城の方向へと足を運ばせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る