第3話 略奪者(プランダー)

 「すまない…何者かにジョブを奪われた…」

 「何のジョブだったんだ、落ち着いて話してくれ」


 水野瀬 碧(みずのせあおい)、クラスのオタク男子のうちの一人。

 水野瀬は自分の金髪をなびかせながらことの経緯を語りだす。

 ジョブを獲得してからは、俺たちは王宮の広場に集合することになっていた。そして、ジョブを獲得した水野瀬は部屋から広場へ向かおうとしている最中、何者かに後ろから肩に切り傷を入れられ、とっさに持っていたジョブの「雷」で対応するも、逃げられてしまう。


 そしてしばらく経つと、水野瀬の「雷」は急激に小さくなっていき、最終的にはなくなったのだという。


 「犯人の顔は!?」

 「なぜか覚えていないんだ…すまない…」

 「これもその犯人の仕業ね…」


 この場にいるものは、クラスメイトの女子一人と、水野瀬、先生に俺だ。

 俺と先生は白、水野瀬も白。だとするなら、この女子かまだ来てない何人かのクラスメイト。


 「とりあえず、全員来るまで待ってみよう」

 「それは駄目だ、生徒を危険な目にあわすことは絶対にできない」


 先生が首を横に振りながら言う、しかし、どうしろと…


 「水野瀬、肩の傷は大丈夫なのか?」

 「ああ、しかし、なぜ俺の肩に傷をつける必要が…」

 「が欲しかったんだろう。ジョブと血はおそらく密接にかかわっている。適性検査のときも、血を検査された。だから、鍵となるのは血だ」


 俺はそう言い放つ、もし仮に血だとしたら、血が略奪者プランダーに何らかの形で吸収されたら、俺のこのジョブも奪われてしまう…


 「水野瀬!大丈夫かよお前!」

 「水野瀬さん、怪我してるんですよね…私が治療してみます!」

 「水野瀬くん!怪我したって本当!?」


 陽キャの斎藤。女子の深山、委員長(遥子)と続々と集まってくる、どうやら隙を見て女子が知らせに行ったらしい。

 女子の一人は水野瀬の傷を治療している、しかし、この行為は…


 「深山、あまりジョブをさらけ出すな。水野瀬はジョブを奪われた」

 

 先生が治療をしている女子、深山にそう告げる。

 

 「分かりました、しかし、この場にいる人たちにはもう私のジョブはばれてしまったってことになりますよね…」

 「ああ、しかし、この場にいる者は略奪者プランダーの可能性が低い」

 「そうとは言い切れません、先生。今すぐ、全員に集合をかけるべきです」


 そうして、委員長のその一言でクラス全員に集合がかけられ、先生と水野瀬でことの経緯を説明する。


 「と、いうことだ。今から行動する場合、単独行動は控えるように、二人でも相手のジョブが分かっていない場合は大変危険だ。十分注意しろ」

 

 そして、水野瀬についていた魔術師がやってくる。タイミングがよかった、また水野瀬にジョブを…


 「すいません魔術師さん、ジョブを奪われてしまったみたいで…」

 【申し訳ありません水野瀬様、ジョブは基本一人に一つまで、複数授けることは禁止されているんです、それでは失礼します】

 「そん…な…」


 水野瀬は膝から崩れ落ち、魔術師はまた瞬間移動で消える。

 

 「水野瀬、あとで先生のところに来い。そして各々、魔王倒しに励むように!」


 先生のその一言を皮切りにみんなが解散するかと思ったが、ジョブを確認できていないうちは誰が略奪者プランダーなのかわからない、そして、いつ背後を刺されるかわからない、というわけで、前々解散しなかった。


 「みんな!自分が一番信用できる人たちと三人組を作って!」

 「分かったぜ委員長!」


 陽キャのその一言で、クラスメイトはグループを作り出す。うちのクラスは三十人だから、七グループできて…二人余る。余ったのは…


 「佐藤くん、一緒だね」

 「なんで委員長なんですかぁー」

  

 そして委員長と俺で二人っきり。しかし、二人っきりということは、委員長にいつ襲われてもおかしくないということ。これからは気をつけて行動しないと。


 「委員長、二人っきりだけどいいんですか?」

 「大丈夫、咲良(さくら)さん。佐藤君が略奪者プランダーな訳ないわ」

 「ならいいんですけど…」


 委員長が俺と二人っきりで心配したのか、女子の咲良が声をかける。しかし、委員長は誘い(?)を断ってまで俺と二人っきりになりたがる。


 「行かなくていいんですか、委員長」

 「佐藤くん、私じゃ不満?それとも後ろめたいことでもあるの?」

 「ないですけど…」


 はいーラブコメが始まりそうですね異世界ものの小説なのにラブコメが始まりそうですね。しかも顔近い顔近い。ラベンダーみたいないい匂いもするし…って、まじでラブコメが始まりそうだからここへんで止めとくか。


 「とりあえず、町に出てみましょうか…」

 「そうですね…賛成です」


 そうして俺は行動を委員長とともにすることになった。

 

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