第2話 中二病すぎるジョブ

 【それでは、佐藤様、こちらへ…】

 「ああ」


 もちろん俺のもとにも一人の魔術師がやってきた、黒いフードを被っているが、声は女性で魔術師かはわからないが、さっきの召喚士たちと同じ服装をしている、最も、色は違うが。


 案内された場所は、西洋風につくられた部屋。

 しかし、一つだけおかしいところがあるとするなら、魔術師が注射器を取り出したこと。


 【血液から適性を判断させていただきます】

 「その血液でなにか悪いことをする気じゃないだろうな?」

 【いいえ、適性判断以外で使用することはないと、誓いましょう】

 「わかった、いいだろう」


 ちくっとした痛みが一瞬だけやってくる。その血液から、魔術師は判断する。


 【興味深いですね…すべての適性が基準値が大幅に超えています…これは…超越者オーバーテイカーですかね!?】


 魔術師は驚いた様子で言う。超越者オーバーテイカー?なんだそれ?


 【素晴らしい適性です。佐藤様は超越者オーバーテイカーの素質があります。オーバーテイカーとはこのようなジョブです…】


 超越者オーバーテイカー、この世界で最強とされているジョブ。

 剣術・魔術・体術を極限まで扱い、毒や、封じも効かない。

 略奪者プランダーによる固有魔法の【略奪】は効いてしまう。

 あらゆるものが超越しすぎて、この名前が付けられた。


 「そんなに最強のジョブを俺がもらってもいいのか…」

 【はい。それが佐藤様の適正ですので。そして、注意してほしいのが、人間様にはこのようなジョブが存在します。略奪者プランダー破壊者デストロイヤーなどの場合によっては凶悪となるジョブです】

 「そのジョブを持っている名前は誰だ」

 【申し訳ありません、それは私たちのほうからでは…】


 いろいろとこの魔術師たちも制約があるのだろう。


 「わかった、ジョブはいつから使える?」

 【今から力を授けます】


 そして魔術師は両手を俺の胸の前に持ってきてこういう。


 【神よ、この者に相応しい能力の 超越者オーバーテイカーを授けたまえよ。我々の祈りに応えてください】


 すると魔術師の両手からは黄金のオーラ帯び始め…たかと思ったが、その黄金のオーラーはやがて暗い暗い漆黒のオーラへと変わる、失敗か…?


 【失敗してしまったようですけど、そのまま流し込みます…】

 「は?って、いてええええええええええ」


 魔術師の両手が俺に触れた瞬間、その両手にあった漆黒のオーラは俺の体のほうへ流れていき、激しい痛みが俺を襲う。


 【検査します…無事にジョブを獲得できたようですね…】

 「ああ、ひどい痛みだったけどおかげさまで獲得できた。感謝する」

 【いえいえ、佐藤様はご立派です。それでは、またどこかで会えたら…】


 そう言うと魔術師は消え、俺は部屋にたった一人取り残された。


 (略奪者プランダー破壊者デストロイヤーのジョブを持っているやつは誰だ…委員長なんかが持ってくれていればいいんだが)


 「ガチャ」と、扉を開ける音が聞こえる。

 命を狙われる可能性もあるので、身構える。


 「大丈夫か、佐藤?今、さっきお前の叫び声が聞こえた気がしたんだが…」


 なんだ先生か…しかし、状況としてはまずい。先生が何らかの凶悪なジョブを持っていた場合、ここで戦闘が始まってもおかしくない。


 「大丈夫です、それより先生は何かジョブとかもらいました…?」

 「あーなんか魔術師だった。魔術師はたくさんいるんだって、ちなみに佐藤は?」

 「俺は剣士です。ところでこれからどうなるんでしょうね…この世界で」

 

 「剣士」ととっさの嘘で場面を切り抜け、これからの話に持ち掛ける。当たり前だが先生が「魔術師」だと確証はされていない。


 「分からない…しかし、私たちのような弱いジョブでも、魔王を倒すために奮闘しなければならない」

 「それはそうです、さて、みんなのところに戻りましょうか」


 そうして、先生と一緒にみんなのもと、つまりは王宮の広場。に戻る…しかし、事件はすでに起きていた…


 「キャー!誰か!水野瀬くんが!」


 女子の叫び声、それを聞いた俺たちは先生と一緒に駆け付けるも、水野瀬は血を肩から流している。


 「すまない…何者かにジョブを奪われた…」

 

 くそっ、やはり動き始めたか…これは面倒くさいことになりそうだ。

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