第2話

次の日、教室はいつも以上にざわめいていた。今日は転校生が来るということで、みんながその話題で持ちきりだった。私は、自分の席に静かに腰を下ろし、いつも通りの日常が始まるのを待っていた。




「みなさん、注目!」


扉が開き、ルーカス先生が現れる。続いて、後ろに黒髪のウェーブと青い瞳を持つ色白な少年が入ってきた。彼の姿は一見普通に見えるが、どこか不思議な雰囲気を漂わせている。教室全体が静けになって、彼に注目している。




「今日は新しい仲間が加わります。彼はカイル・ノルティア。本日付でこの学園に転校してきました。みなさん、温かく迎えてください。」


ルーカス先生がそう紹介すると、教室は再びざわつき始めた。クラスメイトたちが次々に「よろしく!」と声をかけるが、カイルは軽く頷くだけで、特に喜びや困惑といった感情を表に出すことはなかった。




「よろしくお願いします。」


カイルの静かな声が響いたその瞬間、私は驚いた。カイルには、魔力のオーラが全く見えなかった。普通、魔法使いには魔力のオーラがあり、その色や濃さ、色のグラデーションは得意とする魔法によって異なる。例えば、水魔法なら青系、風魔法なら緑系、火魔法なら赤系といった具合だ。ここにいる生徒たちはみんな、何らかのオーラを持っている。それが当たり前だと思っていた。




教室内でも、すぐにその異変に気づいた生徒たちがざわめき始めた。


「ねえ、あの転校生…オーラが全然見えないんだけど。」


「そうだよね。普通、魔力のオーラって見えるはずだよ。なんで?」


「まさか魔法が使えないってことはないよな…?」




不安げな声や疑問の声が次々と上がる。魔力のオーラが見えないというのは、普通ではあり得ないことだ。たとえ魔力量が少なくても、何らかのオーラは必ず感じられるはず。それがまったくないというのは、異常なことだった。この国では魔力を持たない者はいない。魔力量は訓練や血筋や生まれ持った才能などさまざまな因子によって変化するようだが(魔力量については長年研究が行われている、不可解な分野である。今は一時的にであればかなりの魔力を魔法石や杖によって補うことができる)、まったくオーラや魔力のないものがいるという報告がされたことはなかった。万が一魔力がほとんどなく生まれたとしても、日常生活の魔力程度であれば訓練や魔法石で補うことができる。




私は、自分のオーラを確認する。私の場合、王家のオーラは代々銀色だが、今はザインの指導で水色に変えている。銀色のオーラでは目立ちすぎるからだ。しかし、カイルには何もない。どんなに力を抑えていても、魔法を持つ者なら何かしらのオーラは見えるはずだ。まして、この国ではすべての者が少なからず魔法を扱える。オーラが見えないなど、ありえない。




「どういうこと…?」


隣の生徒が小声でつぶやいた。私も同じ疑問を抱いていた。教室内は次第に緊張感が漂い始めた。カイルの存在が、これまでの常識を揺るがすかのように感じられた。




カイルは、周囲のざわめきに気づいているようだったが、まったく動じる様子はなかった。彼は無表情のまま席に向かい、静かに座る。




「一体、何者なの…?」


クラスメイトたちが疑問を抱く中、私はただ黙って彼の背中を見つめていた。

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