第十六話 教官と勝負?

窓から差し込んだ光で目をさます。

ベッドから起き上がる。

太陽の位置的に昼頃だろう。

季節はすっかり秋だ。

息を吐くと白くなるくらい。

クリーズ王国は一年を通して気温が低い。

と言ってもここは辺境なので比較的温暖で四季がはっきりしている。

俺は膝にかかってる毛布をどかして。

訓練場に行く準備をする。

多分遅刻だろう。


剣術訓練から一ヶ月ほど経った。


剣術訓練は週に3回。

午前中で終わりだ。

俺は個別訓練なので午後から訓練をする。

ちなみに俺の場合

訓練内容はめちゃくちゃきつい。

腕立て伏せに、反復横跳び、腹筋、背筋そして走り込み。

このセットを倒れるまでひたすら繰り返す。

教官曰く、「基礎体力がなければ戦闘中に倒れて死ぬぞ!!」だそうだ。

倒れるまで鍛えたら体に毒だろと最初の頃は思ったが、目を覚ますとすこぶる体調がいいのだ。

きっとこの鍛え方には何か特別な効果があると思っている。


訓練場についた。

教官が訓練場中央で仁王立ちで立っている。


「すみません遅れました。」

「遅いぞアルシ。一時間も俺を待たせるとはいい度胸だな。」


そう言って教官はニヤリと笑う。

何か企んでいる時の顔だ。

嫌な予感しかしない。


「遅刻したから今日は訓練中の水分補給なしだな。」

「脱水症状で普通に死にますよ!?」

「いつも倒れるまで訓練してるんだから変わらないだろ。ハッハッハ!!」


いやいやいや、水分があるのとないのじゃ大きな違いだ。

倒れるまで訓練しても倒れた時に意識はある。

体の限界で倒れるからだ。

でももし、水分がもらえなくて倒れたとなればそれは、脱水症状による気絶だろう。

なんとかしないと。

この筋肉バカは本気だ。


「教官これ見てください。」


そう言って俺はポケットからあるものを取り出した。


「なんだそれは?そんなもので俺を釣ろうたって甘い甘い。時間を守ることは大切なことだ。それをもので解決しようとは・・・」

「教官よ〜く見てください。これがなんだかわかるでしょ。」

「・・・そ、それは。王都で今貴族の間で流行っていると噂の、」

「そうです。です。」

「お前、それを一体どこで手に入れたんだ?」

「もちろん秘密です。このチョコレートを上げるので水分補給の許可をください。」

「ぐぬぬぬぬ・・・」


いいぞ悩め!!

そして水分補給の許可をくれ!!

ちなみにチョコレートは司祭の部屋にあったものをこっそり貰ってきた。

神にお仕えする司祭様ならチョコレートの一つや二つ許してくれるだろう。


「アルシ、チョコレートで手を打とう。」


よーしやったぞ!!


「約束ですよ。これが約束のチョコレートです。」


そう言って教官にチョコレートを手渡した。


「アルシ、お前のことだ、まだチョコレートを隠し持っているのはわかってるぞ。さあ、出してもらおうか。」

「チョコレートの数の指定なんてしてませんよ。」

「そういえば水分補給の回数を指定してなかったな〜」


くそ、意外に鋭いな。

だがこれも水分補給と延命のためだ。


「これで最後です。チョコレートって貴重なんですからね。」

「わかってるって。」


そう言って教官はチョコレートを口に頬張った。


「うめぇ〜〜〜!!!」


くそ!!美味しそうに食べやがって。

だがこの勝負俺の勝ちだ。

俺が持ってるチョコレートは全部で三つだ。

数が減ってしまったのは残念だが一つ残すことに成功したし、水分補給の交渉も成功だ。

訓練が終わったらゆっくり食べよう。


______


読んでいただきありがとうございました。

更新時間を守れなくてすみません。

言い訳:テストで忙しかった。


フォローやハート、コメント、星をつけていただけると活動の励みになります!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る