第十三話 五歳になりまして

俺は今日五歳になった。

孤児院では誕生日に好きなものをくれる。

いわゆる誕生日プレゼントだ。

貰ったものは魔石だ。

魔物の核だ。

魔物を倒すときには核を壊せば倒すことができるが、核を取り出すためには壊すことはできない。

そのため低ランクの魔物の魔石でもそこそこ値が張るのだ。

今回買ってもらえたことは非常ありがたい。

将来冒険者になりたいことを口実にして買ってもらえた。

魔石の使い道としては、テシアに魔道具を作るときの足しにしてもらう予定だ。

魔石は魔法を止めるために使う。

テシアの魔道具開発は進んでいるものの、三個ほどしか作れていない。

「まだ全然足りないわ」とか言ってたけど無理のしすぎも良くないと思うんだよなー。

これも俺が魔法を発動できれば心配しなくてもいいと思うんだけど、未だに治っていない。

昔はもしかしたらすぐに治るんじゃね?って思っていたけど、少しも手がかりが掴めないままなのでもう諦めてる。


最近はここを出た後のことも考え始めている。

ここから脱出することも大事だが、その後の計画がなくてのたれ死んだら元も子もない。

どこの国に逃げるべきかを考え中である。

俺が今いるところが『クリーズ王国』王様が収めている国だ。

魔力検査機を作った国は今では『魔法国家アルシオン』と名乗っている。

帝国を名乗ると滅ぼされる事件が過去にあったそうだ。

それから帝国を名乗る国は無くなったらしい。

つまり、国王より上の存在がこの世界にはないということだ。

クリーズ王国の西側には『神聖国ルート』がある。

ルート神を信仰する国家だ。

南側には『小国家群』が広がっており、東側には大陸を超えて『桜花国』がある。

そして北側には『ザウハイ』という冒険者の国がありそこには未開拓領域が広がっていて、冒険者が名声を求めて攻略に日々励んでいるらしい。

その他にも多岐にわたる国々があるが、近隣国家だとこんな感じだ。

俺は未開拓領域に逃げるのが最適だと思っている。

北側の地に行くには途中『ルクス山脈』があり、痕跡を辿るのが難しくなる。

そしてザウハイは、来る者拒まず、出る者拒まずだ。

未開拓領域で取れたものは交易を通じて各国に流れるのでどの国とも良好的な関係を築いているらしい。

冒険者には色々な者がいるらしいから、正体を隠すのに最適だろう。


そんなこんなで考え事をしていたら、図書館についてしまった。

テシアとは週に一度のペースであっている。

今日がその日だ。

テシアからもらった鍵を本にかざす。

黒の魔力を持たない俺のために作ってくれた鍵だ。


「誕生日おめでと〜!!」


中に入るとテシアが飛び出してきた。

ありがとうと返すとテシアがニコニコしながら喋り出す。


「ここから出るまでもう時間がなくて内心少しは焦っているそこのあなたに朗報よ!!延期になっていた剣術訓練が来週から始まるそうよ。パチパチパチパチ!!」

「ついに始まるんだな!!訓練自体ないかと思ってたけど、ちゃんとあるみたいでよかったー。」

「前に私があげた剣術指南書の通り毎日しっかり素振りしてるでしょうね?」

「ああ、もちろんだ。毎日千本振るようにしてるぞ。」

「よろしい。初めて振るのと慣れているのでは重みが違うもの。やってもらわないと困るわ。あなたが剣術を習えるのは半年だけ、半年経ったらここを出るから今のうちから準備しておいてね。」

「おお、急に言うな。びっくりしたぞ。」

「前からいつごろにするかはなんとなく決まってたでしょ。魔道具も今は四個ほどあるし、今回あなたが手に入れた魔石を使えば五個になるわ。投げて使用するタイプにしたから持ち運びも便利なはずよ。」

「わかった。あとは頑張って剣術を磨かないとな。」

「なるべく目立たないように最初は力を抜くのよ。」

「任せとけ!!」———、


本格的に計画が動き出すことに期待を胸いっぱいに膨らませた。


______


読んでいただきありがとうございました。

ついにあるしも五歳になりました。

次回から剣術訓練編になる予定です。

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