第九話 sideテシア1

何度繰り返せばいいの?

私達姉妹は、何度もやり直し、孤児院からの解放を図った。


魔法を研究した。

孤児院についてできるだけ情報も集めた。

全員の名前だって覚えた。

性格も行動パターンも。

でも上手くいかなかった。


巻き戻るタイミングが悪かった。

お姉ちゃんが孤児院を離れる前日に必ず巻き戻る。

巻き戻りは、私かお姉ちゃんどちらかが死んだタイミングで起こった。

何回目だったかもう覚えてない。

お姉ちゃんが壊れた。

その時のお姉ちゃんは髪が黒から白になっていた。

前から髪の色が薄くなっている気がしたが、ストレスによるものだと思っていた。

しかし、変化は突然訪れた。

髪の色の変化もあったが、目の色も黄色に変化していた。

目の奥には時計が刻まれている様だった。

ブツブツと独り言を言い出したと思ったら何度も何度もお姉ちゃんは頭を壁に打ち続ける。

頭を打ちつけるのを止めようとすると今度は窓から飛び降りた。

何度も何度も。

死と巻き戻りを繰り返す。

人が壊れていく様を見るのはこんなに怖いのかと思った。

マイナスの感情が私にも流れてくるのを感じた。


少し頭が冷えたんだと思う。

しばらくしてお姉ちゃんは投げ捨てるように言葉を放った。


「私はあいつの玩具でもなければ、性奴隷でもない!!幼女趣味のおじさんなんて気

持ち悪い。何度も何度も繰り返す人生なんてもう、うんざりだ!!死ぬまで死んでやる!!」


そう言ってお姉ちゃんはまた死んだ。

今まで私はずっと孤児院にいた。

お姉ちゃんは外の世界にいた。

外の世界に憧れを持ったことは何度もある。

外の世界でどんな困難にぶつかっても、素敵な出会いが待っているし、孤児院で何をされるか怯えるよりは、ましだろうと思っていた。

お姉ちゃんのあんな姿を見てようやく、一度も外の世界のことを私に話してくれなかった理由がわかった気がした。


次に巻き戻った時には、お姉ちゃんの姿は綺麗さっぱり無くなっていた。

誰に聞いても知らないの一言。

お姉ちゃんの存在自体が消えた。

それが寿命であるのか、それともまたがあってお姉ちゃんが消えたのかはわからない。

この世に無料なものなんて存在しない。

この時初めて気がついた。

巻き戻るのにも対価が必要だということを。

そして私はお姉ちゃんがいるということに安心していたことを。

当たり前に思っていた。

頼れる存在はもういない。

だからといって死のうとは思わないし、脱出をせずにここで生きていこうなんて嫌だ。

私は絶対に生きてここから出てやる。

そして自由を手に入れるんだと決めた。


それから何度も何度も時を遡った。

髪の全てが真っ白になったら脱出しようと考えていた。

下手に脱出をしても良くない。

数内あたるなんて思わないことにした。

我慢すればするほど力は蓄えられていく。

準備に徹した。


その過程であることに気がついた。

私達孤児には、探知魔法がかかっているということ。

探知魔法は中級闇魔法。

効果はこの孤児院の敷地内から出た者のいる方角がわかるというもの。

魔法の効果を切らない限り永続的に居場所が知らされる。

過去の脱出で失敗したのもこの魔法があったからだと思う。

この魔法さえ無くなれば逃げることができる。

脱出の糸口がつかめたのが嬉しくて誰かにこの想いを伝えたかった。

でもそんな誰かなんていない。

私は強くなくてはならない。

周りになめられてはいけない。

私は口調も変えることにした。

図書館の本の中から見つけた女騎士の主人公のように。

憧れだった。

敵を倒して弱きものを救う彼女の姿が。

私も外の世界に出たら世界中を旅して私みたいに困ってる人を助けたいと思っていた。

だから口調を真似するのはすぐになれた。

最初こそ少し恥ずかしくなることもあったけど、前を向くということを心に刻みたいと思ったから。


______


準備が整った。

計画もバッチリ。

五歳になった時に決行する。

自由時間になったら孤児院の外に出る。

無属性中級魔法の身体強化と初級風魔法を使って孤児院からできるだけ離れる。

孤児院とは反対の街の外れにある遺跡についたら探知魔法を切る。

遺跡の奥深くには、ランダム転移の魔法陣があると本に書いてあった。

怪しそうな本だったので本当かどうかはわからない。

でも試してみる価値はあると思った。


決行日、ことは順調に進んだ。

魔法で速く走れたし屋根の上を通ることで止まることもなかった。

遺跡の魔物も強くはなかったからすぐに最深部まで辿り着くことができた。

遺跡の最後の部屋には転移の魔法陣らしきものがあった。

転移魔法陣はロストテクノロジー。

今の人類では再現することは不可能だ。

長命種のエルフなら知ってるかもしれない。

でもエルフは多種族との交流を阻む閉鎖的な種族らしい。

教えてもらうのは不可能に近い。

だからこの魔法陣が転移魔法か見分けるなんてできない。

でも私は巻き戻りができる。

あと少ししかできないと思う。

でも、最悪巻き戻るからいいと思い魔法陣に足を踏み入れた。

死ぬのはもう怖くはない。


______


読んでくださってありがとうございました。

休日なので投稿してみました。

時間があったら明日も投稿するかも(多分投稿しない)

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