第八話 想い
隠し部屋を奥に進む。
そこは研究室であり会議室でもある様な空間だった。
壁にはいくつもの資料であろうものが貼ってある。
「驚いたでしょ。」
部屋を見渡していた俺にテシアが自慢げに言ってきた。
確かにすごい。
それに一つ、俺が目を惹かれるものがあった。
「テシア、これ、孤児院の地図か?」
「そうよ。」
「これを、いったいどこで手に入れたんだ!、お前は何者だ!三歳児のできる範疇を
とうに超えている!」
俺が最も手に入れたかった物。
孤児院を脱出するためになくてはならない孤児院の内部情報。
それが目の前にある。
だからだろうか、俺は今まで感じていた疑問を全て投げ捨てるように言葉を放った。
「あなただってそうでしょ。」
テシアの言葉が心に刺さる。
そうだ俺も人のことを言えない。
俺は転生者だ、そうだと思う。
それじゃあテシアは?
前から思っていた。
テシアも転生者じゃないのだろうか?
「一つ、これだけは言えるわ。私はあなたと同じ境遇じゃないということ。」
俺はテシアが俺と同じ転生者だと思っていた。
でも違う?
それじゃあ一体?
「お前は、」
「あなたが自分のことをはっきり言わないように、私も私のことをこれ以上言うつも
りはない。まだ、お互いのことそこまで信用していないでしょ。」
そうだ、俺はテシアのことをまだ信用してない。
テシアは謎が多すぎる。
全てを打ち明けるには信用を築き上げ手からじゃないとな。
「それに、ここにあなたを連れてきたのは、あなたと私の目的が同じだと思ったか
ら。私はこの孤児院を出る。あなたもそうでしょ。」
テシアの言葉を聞いて心にくるものがあった。
今までずっと一人で溜め込んできた。
今まで誰にも打ち明けることができず、同級生を見捨てる覚悟を決めてまで必死に行動してきた。
「俺もここから出たい。この場所は危険だ、と思う。」
今まで言えなかった言葉を、声に出したかった言葉を放った。
テシアは俺の言葉を聞いて涙を流した。
「おい、どしたんだよ。大丈夫か。」
「大丈夫よ。緊張の糸が途切れたっていうか、嬉しかったっていうか、なんかよく言
葉にできないわね。」
きっと彼女は気を張ってたのではないだろうか。
壁の資料や、入手困難であろう孤児院の間取り。
全て一人で頑張ってきたのだ。
俺の何倍もの努力と時間をかけてきたのだ。
これからは一人じゃない。
二人で頑張ろう。
そう思った。
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読んでくださりありがとうございました。
今回は少し短めになりました。
ちょうど区切りが良かったので。
誤字などがありましたら指摘していただけると嬉しいです。
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