第七話 ひみつの部屋

「んー、なんだあ。またアルシがなんかやったのか?」


テシアの声でマルクの目が覚めた。

咄嗟にマルクに向かって言い訳をする。


「ごめーん、ちょっとトイレに行こうとして転んじゃって。次から気をつけるね。」

「これで何回目だよ。まあいつものことだしもういいけど。気を付けろよな。」


そう言ってマルクは再び寝始めた。

正直焦った。

これ以上ことを大ごとにしたくない。

問題はテシアだ。

なぜここにいる?

俺はマルクから再びテシアに意識を向けた。


「あのー、ここにはどう言った事情で来たのでしょうか?」

「質問するより先にドアをぶつけたことを謝るのが先じゃないかしら。」


驚きすぎて謝るのを忘れていた。

失態である。


「す、すみません。大丈夫ですか?」

「別に、大したことじゃないわ。(ちょっと痛かったけど)」


テシアがボソッと最後に何か言ったが聞かないふりをする。


「無事なら良かったです。それで、ここにはどんなご用件で。」

「あなたに用があってきたの。」


テシアは自信満々な笑みで答えた。


「へっ」


俺は変な声を出した。


「ここで話す様なことじゃないし、ちょっとついてきて。見せたいものもあるし。」


そう言ってテシアは歩き出した。

状況を理解できない俺は立ち尽くしたままだ。


「ちょっと、突っ立てないで早く来なさいよ。」


テシアに言われて急いで跡を追った。


_____


俺は今テシアと廊下をこそこそと歩いている。

最初は無口でお淑やかなイメージだったテシアだが、今ではそんなイメージは全て消え去ったと言ってもいいだろう。

彼女は活発な女の子だ。

魔力検査の時と全然違うから人前で猫を被るタイプではないだろうか。


そういえばどこに向かってるんだ?


「なあ、僕たちどこに向かってるんですか?」

「図書館よ。っていうかその気持ち悪い敬語やめなさいよ。」


呆れ気味で言葉を放った。

気持ち悪いと思われていたとは・・・

人と話すことなんて滅多にないから粗相のないようにしようと心がけていたことが裏目に出るなんて、ショックである。


「悪かった、」

「わかればいいのよ。」


彼女は嬉しそうに答えた。

機嫌が治って何よりである。


「ここからは極力言葉を発しない様にして。」


子供達の部屋のある棟をちょうど抜けた所で言った。


「なんで?」

「はあ、警備員に見つかる可能性があるからよ。見つかったら大変でしょ。」

「えっ、警備員なんているのか?全員寝てるはずだろ。」

「ほら、あそこを見てみなさい。」


そう言ってテシアは窓の外を指した。

ひっそりと俺は窓の外を確認する。

そこには生活魔法ライトを使って巡回する警備員らしき人物がいた。


「本当だ」

「ね、言った通りでしょ。だから気をつけてついてきてね。」


今まで何度も夜中に孤児院内を動き回ってきたが警備員なんて見たこともなかった。

ものすごい幸運だったということだろう。

今後出歩くときは気をつけて行動する様にしよう。


______


あれから警備員に出会うことなく図書館までつくことができた。


「図書館に来て何をするつもりだ?ここの本なら俺でも読んだことのある本が結構あ

るぞ。」

「それくらい知ってるわよ。あなたがここに来ていた時、私もここにいることがあっ

たもの。あなたは私がいることに気づいてなかったみたいだけど。」


完全に警戒を怠っていた。

こんな夜中にここに来るのは俺だけだと思っていたのに。

テシアの存在なんて今まで認識しとことなかったぞ。

俺が本に夢中になりすぎてたか、テシアの隠密能力が高いかのどちらかであろう。

俺としては後者だと信じたいい。

いや、後者だということにしておこう。


「ここに来た目的はそんな話をするためじゃないわ。さっきも言ったけど見せたいも

のがあるの」


そう言ってテシアは歩き出した。


とある本棚の前で止まった。


「こんな部屋の隅に何があるんだ?」

「いいから見てなさい。」


テシアが黒い本に手を触れる。

すると本棚が動き出した。

隠し部屋の登場である。

今までここに何度も来ていたのに気づかないとは・・・


「さあ、行きましょ。」


落ち込んでいた俺を置いて、テシアは歩き出す。


「ちょっと、待ってくれよ。」


_______


読んでくださりありがとうございました。

これから最後に少し書こうかなと思います。

誤字などがありましたら指摘していただけると嬉しいです。


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