第六話 白髪の美少女 

元いた席に戻った。

何人かの子供達が検査を受けたが未だ魔力持ちが現れない。

そもそも魔力持ちが千人に一人と言われているんだから何人もほいほい出たら世界の常識が覆るだろう。


「次、ロメイ君」

「はいっ」


とおどおどしながら答える。

茶髪君の名前はロメイというらしい。

ロメイ君は司祭のもとへ向かって行った。

そのまま魔力検査機に手をかざす。

すると鮮やかに青く光った。

俺はその時司祭が笑みを浮かべたのを見てしまった。

背筋が張り詰めた気がした。

魔力持ちは高く売れるということだろうか?


ロメイ君には申しわけないが今ので確証に近づいた。

『魔力持ちは洗脳を受けない。』

洗脳がどこまで強力で、どの程度融通が聞くのかわからない。

安心するのはまだ早いだろう。

白髪美少女の結果を見てからでも遅くはないと判断した。


______


「次、テシア君」

「・・・はい」


少し沈黙があったが今度は返事をした。

流石に返事をした方がいいと思ったのだろうか。

それと白髪美少女の名前はテシアというらしい。

覚えておくことにしよう。

他意はない。

テシアは司祭の方へまっすぐ向かっていった。

ツインテールの髪をたなびかせながら堂々と歩いていく様は周囲の目を釘付けにする。

司祭の前に止まったところで作業をするかのように魔力検査機に手をかざした。

魔力検査機には透き通った白が見えた。

最終的に、だ。

透き通る様に美しい白の灯火。

だが俺は微かにだが魔力検査機に黒色が灯ったことを見逃さなかった。

司祭の位置からは見えていないだろう。

他の方角からもだ。

唯一見えるとしたら俺の方からだけ。

小さな黒点がこちらを伺うようにみてくる気がした。

俺の魔力量は結構上の方だと思っていたが黒の魔力を持ったテシアには及ばないだろう。

いや、もしかしたら魔力の量だけでは勝てるかもしれない。

魔力検査機はあくまで魔力の性質を図るものであって、量を図るものではない。

今、テシアが行った様に魔力を乱して供給することで違った結果を生み出すことができる。

元に俺もそれを利用して緑色にすることができた。

正直賭けだった。

魔力自体の量は増やすことが可能でも、魔力の性質を変化することはできない。

俺が魔力の精密さを保てるのは所持魔力量があくまで少量の時だけ。

常時の魔力量では多すぎてコントロールが難しい。

出す量を変えるなんて不可能だ。

先ほども言ったように少量の時ならば出しすぎても魔力を放出する上限が高くはない。

身体が危険を感知し出す魔力の量を減らすのだ。

だが、テシアの魔力制御は異常だ。

何年鍛錬を積めばあんな技量を身につけられるのか見当もつかない。


「気に止むことはありません。魔力が少ない子もいます。他の職業に適性があるのか

もしれませんよ。」


司祭が言葉を投げかけるがテシアはうんともすんとも言わずに後ろに振り返った。

その時、驚きのあまり固まっていた俺と目が合う。

テシアがクスリと笑う気がした。

俺は彼女が席につくまで目が離せなかった。


______


全員の魔力検査が終わったところで神父が司祭に声をかける。

俺をここに連れてきた神父だった。

俺の生命を繋いでくれたことには感謝しているが、拾われるなら別の人が良かったと思う。

文句言ってもしょうがないけどね。


司祭と神父が話し合っているが全く声が拾えない。

コソコソ話しやがって。

小時間話し合ったところで神父がこちらに目を向ける。


「戦闘力検査ですが延期になりました。皆さんの成長を見てから、いつにするか決め

ていきたいと思います。皆さん、今日はなれないことをして疲れたと思いますから、ゆっくりと休んでくださいね。それでは解散してください。」


司祭がそんなことを言い出した。

それと同時に子供たちに生力が戻った気がした。

もう怖いから考えたくもない。

後、休みもなしに行うかと思っていたらまさかの延期だ。

流石に三歳児に訓練は無理だと判断したということだろうか。


正直今回の延期だが結構嬉しい。

今日だけで情報量が多すぎるので一度整理したいと思っていたところだ。

それに共同部屋に戻って早く寝たい。

昨日から徹夜だ。

疲れがあって動けそうにもない。

夜になったら孤児院についてさらに調べてみよう。


_______


みんなが寝静まった頃に俺は起きた。

計画通りである。

周りに音を立てない様に起き上がり。

ベッドから降りた。

ちなみに俺の部屋は五人の相部屋だ。

皆同い年だ。

部屋から出る時に気をつけなくてはならないのがドアだ。

結構古いのか開ける時にミキミキと音が鳴る。

少しずつ開けるよりも一気に開けた方が音が小さく済むのでおすすめだ。

みんなが寝たことも確認したし行きますか。


俺は勢いよくドアを開けた。

ゴツンとしてはいけない音がした。

身体中が一瞬痺れる様な感覚に陥った。


「痛っ、ちょっと何するのよ」


女の声が聞こえる。

恐る恐る扉を開ける。

そこには尻餅をついたままこちらを睨むテシアの姿があった。












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