第五話 魔力検査

現在お昼時である。

眠い。

頭が回らない。

魔力の回復を極力防ぐために徹夜したのだ。

魔力は睡眠時が一番回復する。

そのため、寝てしまうと昨日の成果が全部水の泡である。

三歳児に徹夜は地獄だ。

峠を乗り越えたと思ったら、またすぐ眠気が襲ってくる。

徹夜するのは今後やめようと思う。

検査が終わったらたくさん寝よう。


______


小さな椅子がたくさん並べられた部屋に子供達が集められた。

大人たちの指示を聞きながら子供達が座っていく。

孤児院の子供達はみんな聞き分けが良いい。

それはとてもいいことだと思うけど、逆に言えば自己主張が少ない。

三歳で聞き分けがいいって一体・・・

それにしても子供の数が多い。

ざっと六十人近くいるだろう。

孤児院に同年代の子供が六十人もいるのは他の孤児院を知らない俺から見ても不自然だ。

今まで他人と関わらないようにしてきていたから孤児院全体でどのくらいの人数がいるか分からないが、一度調べて見た方が良さそうだ。


そんなことを考えていたら神父的な司祭的な人物が話し出した。

抽象的なのは、宗教に詳しくないので神父、司祭、シスターくらいしか名前がわからないからしょうがない。


「今から適応検査をしたいと思います。魔力検査、戦闘力検査の順番でしていきま

す。皆さんの将来の職業に向いているものを探していきましょう。」

「「「はーい」」」


子供達が口を揃えて答えた。


俺はさらに不信感を覚えた。

驚きを通り越して怖いまである。

六十人が声を揃えて今まで練習してきたかのように合わせて返事をしたのだ。

絶対音感なんて持ち合わせていないが声のトーンも多分一緒だ。

『洗脳』という言葉が頭に浮かんだ。

反射的に自分の体に異常がないか確認する。

いつも通りだし、特に異常はなさそうだ。


俺の他にこの歪さを感じた子供がいないか確認する。

ひっそりと周りを見た。

俺を含めて三人、周りと違う行動をしている子供を見つけた。

一人は茶髪のおとなしそうな男の子だ。

周りについていけずに少し慌てている様子だ。

二人目は白色の髪と空色の眼が特徴の女の子だ。

めちゃくちゃ可愛い。

例えるとするならば物語から出てきたお人形さんのような子だ。

この歪な状況を静観している。


この状況を集団洗脳と仮定するならば、俺達三人は他と違う何かがあるはずだ。

いつ自分が洗脳にかかるかわからないから原因と今洗脳にかかっていないのはなぜかを早いとこ究明したいところだ。

聞き流していた説明から重要そうな単語を耳が拾ったので考え事からそちらに意識を向ける。


「今から大聖堂に移動して魔力検査を行います。みなさん列を守って静かに移動しま 

しょう。」

「「「はーい」」」


と周りの子供達が返事をしたので俺も返事をしといた。

これで怪しまれることはないといいんだが。

茶髪君も一緒に返事をしたようである。

白髪美少女は黙ったままだった。


______


大聖堂に来た。

語彙力がないのでとても立派だとしか言えない。

語彙力の無さに落ち込みつつ周りを確認する。

最近周りを見て状況を確かめようとする癖がついている気がするが、自分を守るためには必要だと思うのでいいことだと思う。

人と目が合いそうになるし、キョロキョロしていると怪しまれるので注意である。

前の立派そうなところに司祭が座っている。

そして台?教壇?らしきものの上に魔力測定器が載っていた。

丸い水晶玉のような見た目だ。

本に書いてあった通りなのでひとまず安心である。


「今から魔力検査を始めます名前を呼ばれたら前に出てきてください。」


司祭からの説明があった。

前の人のを見て様子をじっくり伺いたいところだ。


「それじゃあ、まずアルシ君から」


おいおいマジかよ。

冗談じゃない。

洗脳されていると思われる子供達の行動を見てから自分も同じように行動すればいいと考えていたのに台無しである。

さっき子供達は元気な声で「はい!!」と返事をしていた。

気は乗らないが真似してやってみるか。


「はい!!」


と大きな声で返事をする。

司祭からいい返事ですねと言われたが深い意味はなかったと考えることにした。

怖いからネ。


水晶玉の前に立った。

司祭から説明が入る。


「水晶玉に手をかざしてね」


俺の手は緊張で手汗がヤバい。

孤児院のヤバさが今日さらに分かったし、洗脳怖すぎるとかでもうお腹いっぱい。

眠気は吹っ飛んだけど精神的に辛いわー。

白か緑出せばセーフ。

さあ手をかざすぞ。


俺が手を魔力検査機に近づけると今までにない感覚に見舞われた。

身体から何かが抜ける感じがして気持ち悪い。

まるで体の内から何かに見られてるようである。

意外と早くに気持ち悪い感覚が治った。

恐る恐る魔力検査機に目をやる。

緑色だ。

俺は見事に目標を成し遂げたのだ。

今ここでガッツポーズを取りたくなったが我慢である。

ポーカーフェイスも忘れない。

少し残念そうな表情も瞬時に作る。


「残念がることはありません。魔力持ちはなかなかいませんし、他に向いてる職業が

あるかもしれません。気持ちを切り替えていきましょう!!」


なんかいい言葉なのかよくない言葉なのかわからないことを司祭が述べたが、全く心に響かなかった。


ひとまずこれで山場は乗り切ったのだ。

あとはゆっくり他の人の結果を見て待つとしよう。
























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