第11章: 悲しみを乗り越えて
1. 空席の教室
浩介の葬儀から一週間が経ち、新学期が始まった。秋の澄んだ空気が漂う中、千紗は重い足取りで学校に向かっていた。
校門をくぐると、いつもと変わらない日常の風景が広がっていた。しかし、千紗の目には全てが色あせて見えた。
教室に入ると、クラスメイトたちの視線が一斉に千紗に向けられた。誰もが気遣うような、同情するような目で彼女を見ている。千紗はそれらの視線から逃れるように、自分の席に向かった。
そして、隣の席を見た瞬間、千紗の胸に鋭い痛みが走った。浩介の席が、空いたままだったのだ。
(こーちゃん…)
千紗は震える手で机に触れた。まるで浩介の温もりが残っているかのように。
「千紗ちゃん…」
佳奈の優しい声に、千紗は我に返った。
「大丈夫?」佳奈が心配そうに尋ねる。
千紗は小さく頷いた。「うん…ありがとう」
その時、村上先生が教室に入ってきた。先生の表情も、いつもより厳しさが消えて見えた。
「みなさん、おはようございます」先生の声には、いつもの力強さがなかった。「今日から新学期が始まりますが…」
先生は一瞬言葉を詰まらせた。
「浩介くんのことは、みんな忘れないでください。でも、彼も望んでいたはずです。みんなが前を向いて進んでいくことを」
教室に重苦しい空気が流れる。千紗は机に伏せそうになる衝動を必死に押さえ込んだ。
授業が始まったが、千紗の頭には何も入ってこなかった。ただ、隣の空席が、異様なほど大きく感じられた。
休み時間、将人が千紗の元にやってきた。
「千紗さん、大丈夫?」
千紗は顔を上げた。将人の目には、心配と何か決意のようなものが宿っていた。
「将人くん…あのね、私…」
千紗は言葉を探していた。シミュレーション技術のこと、浩介を救いたいという思い。しかし、まだ口に出す勇気が出なかった。
「わかってる」将人が静かに言った。「僕も…考えてるんだ。浩介くんのことを」
千紗の目に、かすかな希望の光が宿った。
「本当?」
将人は頷いた。「うん。でも、まだ時間がかかりそうだ。もう少し待ってくれ」
千紗は小さく頷いた。胸の中に、小さな希望の種が芽生えたのを感じた。
教室の窓から、秋の澄んだ空が見えた。千紗は空を見上げながら、心の中で浩介に語りかけた。
(こーちゃん、待っていて。私たち、きっと…)
新学期の始まりと共に、千紗の新たな挑戦も、静かに幕を開けようとしていた。
2. 寄り添う友
10月中旬、秋が深まりつつある頃。千紗の日常は、浩介を失った喪失感で満ちていた。学校に通い始めてはいたものの、その目は虚ろで、クラスメイトたちとの会話も最小限に留めていた。
そんな千紗を心配して、佳奈は毎日のように千紗の家に通っていた。
「千紗ちゃん、今日も一緒に帰ろう」
放課後、佳奈は千紗の机に近づいた。千紗は小さく頷くだけだった。
二人で歩く帰り道。かつては4人で賑やかに歩いていた道が、今は静けさに包まれていた。
千紗の家に着くと、美佐江が出迎えた。
「あら、佳奈ちゃん。今日もありがとう」
美佐江の笑顔に、佳奈は違和感を覚えた。その笑顔があまりにも完璧で、悲しみの影が全くないように見えたからだ。しかし、佳奈はその違和感を押し殺して応えた。
「いいえ、当たり前です」
千紗の部屋に入ると、二人は黙ったまま宿題を始めた。しばらくして、佳奈が静かに話し始めた。
「ねえ、千紗ちゃん。覚えてる? 浩介くんが初めてバスケの試合に出た日のこと」
千紗の手が止まった。
「うん…」かすかな声で千紗が答えた。
「あの日、浩介くんが決勝シュートを決めた瞬間、千紗ちゃんが一番大きな声で喜んでたよね」
千紗の目に涙が溢れ始めた。
「私…こーちゃんのこと…」
佳奈は千紗を優しく抱きしめた。「わかってる。私も、浩介くんのこと好きだった。でも、千紗ちゃんの方が…ずっと浩介くんのそばにいたんだよ」
二人は抱き合ったまま、静かに泣いた。
その夜、佳奈が帰ろうとすると、千紗が初めて自分から話しかけてきた。
「佳奈ちゃん…ありがとう。明日も…来てくれる?」
佳奈は笑顔で頷いた。「うん、毎日来るよ。約束する」
それからの日々、佳奈は本当に毎日千紗の家に通い続けた。二人で宿題をしたり、思い出話をしたり、時には黙ったまま過ごしたりした。
少しずつではあるが、千紗の表情に生気が戻り始めていた。そして、ある日のこと。
「佳奈ちゃん、私ね…」千紗が真剣な顔で佳奈を見つめた。「こーちゃんを取り戻したいの」
佳奈は驚いた表情を浮かべたが、すぐに千紗の手を握った。
「千紗ちゃん…どういうこと?」
「まだ、はっきりとはわからないの。でも…」千紗の目に決意の色が宿っていた。「将人くんが教えてくれた量子コンピューティングのこと。あれを使えば、もしかしたら…」
佳奈は戸惑いを隠せなかったが、千紗の強い意志を感じ取った。
「わかった。私、千紗ちゃんの力になるよ。何があっても」
二人は固く手を握り合った。窓の外では、紅葉した木々が秋風に揺れていた。
3. 新たな希望
10月下旬のある日、千紗のスマートフォンが久しぶりに鳴った。画面を見ると、将人からのメッセージだった。
「千紗さん、話があります。明日、放課後に図書館で会えませんか?」
千紗は少し戸惑いながらも、返信を送った。「わかりました。行きます」
翌日、放課後の図書館。千紗が到着すると、将人はすでに待っていた。彼の前には、複数の専門書と、最新型のタブレットが置かれていた。
「千紗さん、来てくれてありがとう」将人が静かな声で言った。
「将人くん…何の話?」千紗は少し緊張した様子で尋ねた。
将人は深呼吸をして、話し始めた。「実は…僕、新しいプロジェクトに参加することになったんだ。量子コンピューティングを使った、現実世界のシミュレーションプロジェクトだよ」
千紗の目が大きく見開いた。「現実世界の…シミュレーション?」
「そう」将人は頷いた。「理論上は、過去の出来事をシミュレーションし、その結果を現実世界に反映させることも可能かもしれない」
千紗の心臓が大きく跳ねた。(もしかして…こーちゃんを…)
将人は千紗の表情の変化に気づいたようだった。「千紗さん、わかっているよ。君が何を考えているか」
「将人くん…」千紗の声が震えた。「それって、本当に…」
「可能性はあるよ」将人は慎重に言葉を選んだ。「でも、まだ実験段階で、成功の保証はない。それに…倫理的な問題もある」
千紗は必死に将人の目を見つめた。「お願い、将人くん。私にも参加させて」
将人は少し躊躇したが、やがて静かに頷いた。「わかった。でも、約束してほしい。これは秘密プロジェクトだ。誰にも言わないで」
「うん、約束する」千紗は強く頷いた。
将人はタブレットを操作し、複雑な図表を千紗に見せた。「これが、現在のプロジェクトの概要だ。ここから始めよう」
その日から、千紗と将人は放課後に図書館で密かに会うようになった。量子力学の理論、シミュレーションの仕組み、倫理的な問題点…二人は熱心に議論を重ねた。
ある日、佳奈が二人の様子に気づいた。
「千紗ちゃん、最近将人くんとよく一緒にいるね」
千紗は少し慌てた様子で答えた。「う、うん…ちょっと勉強を教えてもらってて…」
佳奈は心配そうな顔をした。「そう…千紗ちゃん、無理しないでね」
千紗は申し訳なさそうに微笑んだ。(ごめんね、佳奈ちゃん。今は言えないの…)
その夜、千紗は自室で将人から借りた資料を読み返していた。そこに、美佐江が入ってきた。
「千紗、遅くまで起きているのね」
「お母さん…」千紗は慌てて資料を隠そうとした。
美佐江は千紗の様子を見て、静かに言った。「千紗、あなたが何をしようとしているのか、私にはわからない。でも、あなたの幸せを願っているわ」
「ありがとう、お母さん」
4. 思い出巡り
11月初旬、紅葉が深まる頃。千紗は佳奈からの誘いを受けて、浩介の思い出の場所を巡ることにした。
「千紗ちゃん、今日は私たちの思い出の場所を巡ろう」佳奈が優しく微笑みかけた。
千紗は少し躊躇したが、頷いた。「うん…そうだね」
二人は最初に、彼らが通っていた中学校に向かった。校門の前に立つと、懐かしい思い出が蘇ってきた。
「ねえ、覚えてる?」佳奈が言った。「ここで初めて4人で出会ったんだよね」
千紗はその日のことを思い出した。浩介と将人が喧嘩しそうになっていたところを、佳奈が仲裁した場面が鮮明によみがえってきた。
「うん…こーちゃんったら、すぐにケンカしようとして…」千紗の目に涙が浮かんだ。
次に、二人は浩介がよく練習していた公園のバスケットコートに向かった。
「ここで、こーちゃんがバスケの特訓してたんだよね」千紗がポツリと言った。
佳奈は頷いた。「そう。私たち、よくここでお弁当を食べながら応援してたよね」
千紗はコートに立ち、ボールを持つ浩介の姿を思い浮かべた。汗を流しながら懸命に練習する彼の姿が、まるで目の前に見えるかのようだった。
「こーちゃん…」千紗の声が震えた。
佳奈は千紗の肩に手を置いた。「千紗ちゃん、大丈夫?」
千紗は涙を拭いながら頷いた。「うん…ありがとう、佳奈ちゃん」
最後に、二人は桜並木の通学路に向かった。今は紅葉した木々が、かつての桜の美しさを思い起こさせた。
「ここで…」千紗が小さな声で言った。
「うん、ここで浩介くんが千紗ちゃんに告白しようとしてたんだよね」佳奈が静かに言った。
千紗は驚いて佳奈を見た。「え?どうして…」
佳奈は優しく微笑んだ。「浩介くん、私に相談してたの。『ちーにどう気持ちを伝えればいいか』って」
千紗の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。「そうだったんだ…私…私…」
佳奈は千紗を優しく抱きしめた。「わかってるよ。千紗ちゃんも浩介くんのこと、好きだったんだよね」
二人は長い間、抱き合ったまま泣いていた。
帰り道、千紗は佳奈に向かって言った。「佳奈ちゃん、今日はありがとう。私…もう一度こーちゃんに会いたい」
佳奈は少し驚いた様子で千紗を見た。「千紗ちゃん…?」
千紗の目には、悲しみの中にも強い決意の色が宿っていた。「私、きっとこーちゃんに会える方法を見つけるの」
佳奈は千紗の言葉の意味が分からず戸惑ったが、友人の強い意志を感じ取った。「わかった。私も、千紗ちゃんを応援するよ」
二人は手を取り合って歩き続けた。紅葉した木々の下、千紗の心には新たな決意が芽生えていた。将人との秘密のプロジェクト、そして浩介を取り戻すという希望。それが、彼女を前に進ませる力となっていた。
夕暮れ時の空が赤く染まる中、千紗は心の中で浩介に語りかけた。
(こーちゃん、待っていて。私、きっとあなたに会いに行くから)
5. 前を向く勇気
11月中旬、木々の葉が色づき始めた頃。千紗は少しずつ前を向き始めていた。
放課後、図書館で将人と向かい合って座っていた千紗は、真剣な眼差しで量子コンピューティングの資料を読み込んでいた。
「千紗さん、この部分がプロジェクトの核心なんだ」将人が静かに説明を始めた。「量子もつれを利用して、過去の事象を再現し、そしてそれを現実に反映させる…」
千紗は熱心に聞き入っていた。「つまり、理論上は過去を変えることができるってこと?」
将人は慎重に言葉を選んだ。「可能性はあるね。でも、倫理的な問題も大きいし、成功の保証もない。それでも…」
「私、やってみたい」千紗の目に強い決意の色が宿った。「こーちゃんを…浩介を救いたい」
将人は千紗の決意に圧倒されながらも、静かに頷いた。「わかった。一緒に頑張ろう」
その時、図書館のドアが開く音がした。振り返ると、そこには佳奈が立っていた。
「千紗ちゃん、将人くん…」佳奈の表情に戸惑いの色が浮かんだ。
千紗は慌てて立ち上がった。「佳奈ちゃん、これは…」
佳奈は悲しそうな顔で千紗を見つめた。「私…邪魔しちゃったみたいね」
「違うの!」千紗は必死に言葉を探した。「私たち、ただ…」
将人が静かに口を開いた。「佳奈さん、僕たちは浩介くんのために…」
佳奈の目に涙が浮かんだ。「わかったわ。二人とも、浩介くんのことを忘れられないのね」
千紗は佳奈に駆け寄り、その手を取った。「佳奈ちゃん、聞いて。私たち、浩介を取り戻す方法を探っているの」
佳奈は驚いた表情を浮かべた。「え…?」
将人が説明を加えた。「量子コンピューティングを使って、過去を変える可能性を研究しているんだ」
佳奈は困惑した様子で二人を見比べた。「でも、それって…」
千紗は真剣な眼差しで佳奈を見つめた。「信じられないかもしれない。でも、私たちには可能性があるの。佳奈ちゃん、一緒に…」
佳奈は一瞬迷ったように見えたが、やがて決意の表情を浮かべた。「わかったわ。私も協力する」
三人は互いを見つめ、静かに頷き合った。
その夜、千紗は自室で日記を書いていた。
「今日、やっと佳奈ちゃんに本当のことを話せた。これからは三人で力を合わせて、こーちゃんを取り戻す方法を探っていく。まだ道のりは長いかもしれない。でも、私には希望がある。こーちゃん、きっと会えるよ」
窓の外では、紅葉した木々が夜風に揺れていた。千紗の心には、悲しみを乗り越え、前を向く勇気が芽生えていた。
6. 永遠の花
11月下旬、木々の葉が色づき始めた頃。千紗は浩介の家を訪れていた。手には小さな箱を持っている。
玄関のチャイムを鳴らすと、浩介の母・春香が出迎えてくれた。
「千紗ちゃん、来てくれたのね」春香の目は少し赤く、疲れた様子だった。
「はい…」千紗は小さく頷いた。「こーちゃんに…会いに来ました」
春香は優しく微笑み、千紗を家の中へ招き入れた。二人は静かに居間へと向かう。そこには浩介の遺影が飾られ、小さな仏壇が設けられていた。
千紗は仏壇の前に座り、線香をあげた。そして、持ってきた箱を開けた。中には美しいプリザーブドフラワーが入っていた。
「これ…浩介くんにプレゼントしようと思って」千紗の声が少し震えた。「文化祭の日に…渡そうと思っていたんです」
春香は驚いた様子で千紗を見つめた。「まあ…」
千紗は静かにプリザーブドフラワーを仏壇に飾った。青い薔薇の花が、まるで浩介の笑顔のように輝いていた。
「プリザーブドフラワーは、永遠に色あせないんです」千紗は小さな声で説明した。「私の…こーちゃ…浩介くんへの気持ちも、このお花のように永遠に変わらないって伝えたかったんです」
春香の目に涙が浮かんだ。「千紗ちゃん…ありがとう」
二人は静かに仏壇の前で手を合わせた。
しばらくして、春香がお茶を入れてくれた。千紗はそのお茶を受け取りながら、浩介との思い出を語り始めた。幼稚園での出会い、中学時代のバスケの試合、そして高校での日々…。
「浩介も、きっと千紗ちゃんのことを大切に思っていたわ」春香が優しく言った。
千紗は小さく頷いた。そして、ふと決意したように春香を見つめた。
「春香さん、私…こーちゃんを諦めたくないんです」
春香は驚いた表情を浮かべた。「どういうこと…?」
千紗は深呼吸をして、静かに話し始めた。「まだ、はっきりとは言えないんです。でも…浩介くんを取り戻せる可能性があるかもしれないんです」
春香は困惑した様子で千紗を見つめた。「千紗ちゃん…」
「信じてください」千紗は真剣な眼差しで言った。「私、絶対にこーちゃんに会いに行きます」
春香は千紗の決意に圧倒されながらも、静かに頷いた。「わかったわ。千紗ちゃんを信じるわ」
帰り際、千紗は再び仏壇の前に立ち、プリザーブドフラワーを見つめた。
(こーちゃん、待っていて。私、必ず会いに行くから)
家を出た千紗は、秋の夕暮れに包まれた街を歩き始めた。胸の中には、悲しみと希望が交錯していた。しかし、その瞳には強い決意の光が宿っていた。
プリザーブドフラワーのように色褪せない想いを胸に、千紗は新たな一歩を踏み出そうとしていた。
7. 現実を変える方法
12月初旬、冬の訪れを感じさせる寒い日。千紗、佳奈、将人の3人は放課後、図書館の奥まった静かな一角に集まっていた。
「今日は、プロジェクトの詳細を説明するよ」将人が静かに切り出した。
千紗と佳奈は身を乗り出すようにして、将人の言葉に耳を傾けた。
将人はタブレットを操作し、複雑な図表を表示させた。「これが、現実世界のシミュレーションプロジェクトの概要だ」
「すごい…」佳奈が目を丸くして画面を見つめた。
「このプロジェクトは、量子コンピューティングを使って現実世界の出来事をシミュレーションし、その結果を実際の世界に反映させることを目指しているんだ」将人は慎重に言葉を選びながら説明を続けた。
千紗の目が輝いた。「つまり、過去を変えることができるってこと?」
将人は少し躊躇したが、頷いた。「理論上は…そうだね。でも、まだ実験段階で、成功の保証はない。それに、倫理的な問題も大きい」
佳奈が不安そうな表情で尋ねた。「でも、それって危険じゃないの?」
「その通りだ」将人は真剣な表情で答えた。「だからこそ、慎重に進める必要がある」
千紗は決意に満ちた表情で言った。「でも、これが浩介を救う唯一の方法かもしれない。私たち、やるべきだと思う」
将人はタブレットをスクロールし、別の図を表示させた。「ここが重要なポイントなんだ。量子もつれを利用して、過去の事象と現在をリンクさせる。そして、その状態を操作することで…」
「過去を変える…」千紗が小さく呟いた。
佳奈は困惑した様子で首を振った。「ごめん、難しすぎて全然わからない…」
「大丈夫」将人が優しく微笑んだ。「少しずつ理解していけばいい。僕たちには時間がある」
千紗は真剣な眼差しで将人を見つめた。「私たち、どうすればいいの?」
「まずは、基礎から学んでいこう」将人は3人分の資料を取り出した。「量子力学の基本、そしてシミュレーション技術について」
3人は頷き、資料に目を通し始めた。図書館の静寂の中、ページをめくる音だけが響いていた。
しばらくして、千紗が顔を上げた。「ねえ、将人くん。これって…成功する可能性はどのくらいあるの?」
将人は真剣な表情で答えた。「正直、わからない。でも、可能性がゼロじゃないことは確かだ」
佳奈が不安そうに尋ねた。「もし…失敗したら?」
「最悪の場合、現実世界に予期せぬ影響を与える可能性もある」将人は慎重に言葉を選んだ。「だからこそ、慎重に、そして確実に進めていく必要があるんだ」
千紗は決意を新たにしたように言った。「わかった。私たち、絶対に成功させる」
3人は互いを見つめ、静かに頷き合った。
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