私の詩

 またあの夢を見た。お父さんを殺す夢。

何度と見た、頭の片隅にこびりついた私の望み。

けどその夢は現実にはできないのかもしれない。

私はあの人に殺される夢も同じくらい何度も見た。


 お母さんがいなくなってから、私とあの人の関係は歪になった。

私とお父さんは互いに憎み合っている。

それでも私はお父さんから離れられない。

私はお父さんのことを憎んでいるはずなのに、どこかでまだ愛情を求めてしまっているから。


 だけど、そんな親子の関係なんて、とっくに無理だと気づいていた。

お母さんがいなくなったのも私のせい。お父さんに殴られるのも私のせい。

お父さんにとって私は、生まれてこなければ良かった忌み子だった。



 あの子は、煙草の火を皮膚に押しつけられたことがあるのだろうか?

あの子は人生の中で、何度「ごめんなさい」とお父さんに謝ったことがあるのだろうか?

純朴そうなあの子は、きっとそんな世界があることなんて知りもしないだろう。


 だから、私はあの子に煙草の火を押しつけてみたい。

あの子に私と同じ気持ちを共有してほしい。


 そしたらもっと、あの子と私は仲良くなれる。

あの子のことをもっと滅茶苦茶にしてあげたい。

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